vamps

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「そんなにあいつにカレッジの案内をしてやりたかったのか？　2人きりで？　」
　爪の先を軽く噛まれ、頬が熱くなる。

「そんなんじゃないけど……困っている新入生は放っておけないだろ」
　ヒューイが肩を竦めると、俺の腰を抱き、隣の席に降ろす。
「ほら、冷めないうちに食えよ」
　誰のせいで食べるのが遅くなったんだと思いながら、俺はポテトを口に放り込んだ。
　
　新入生がきたと思っていたら、あっという間にダンスパーティーの日になった。
　鏡の中でスーツ姿の自分がしかめっつらをしている。
　シュリの誕生日会に着たスーツは血に染まったため、新しいスーツをこの日のために購入した。

　スーツは安物のせいか変にてかてか光った生地で気にいらないが、金がないのだから仕方ない。
　ため息をつき、腕時計に目を落とした。
　そろそろヒューイが迎えに来る時間だった。
　ヒューイは一体どんな格好で来るつもりだろうか。
　シュリの誕生日パーティーでさえジーンズ姿だった男だ。
　今日もきっと同じような格好で会場では浮きまくるだろう。
　そう考えると、つい吹きだしそうになった。
　たとえ着飾っていなくたって、ヒューイとならば最高に楽しい一夜になる予感が俺にはあった。

　そんなことを考えていると、内線電話がかかってきた。
　母からヒューイが来ていると言われ、慌てて部屋を飛び出す。
　ヒューイはいつも直接部屋に来るのにと不思議に思いながら、扉を開けると、そこにはスーツ姿のヒューイが立っていた。

　ヒューイは紺色の光沢のある生地のスーツに、ネクタイは瞳と同じシルバーだった。
　言葉を失うほどに格好良い。

「迎えに来たぞ」
　笑顔でヒューイに告げられ、俺はようやく呼吸を思い出した。
「スーツ……」
「ああ、ファルに借りたから、ちょっときつくてな。おかしいか？　」
　俺がぶんぶんと首を振るとヒューイが苦笑する。