vamps

まめ太郎

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 言い返そうとしたヒューイが大きなため息をついて頭を振る。
「そもそもお前何で今日来たんだよ。まさか俺達とキャンプがしたかったわけじゃないだろ」
 本当の理由は話せなくて、黙って俯いた。

「もしかして俺が吸血のスケジュールを忘れると思った? 」
 顔を上げると、どこか痛みを堪えるような表情のヒューイと目が合う。
「お前を飢えさせたりしないって誓っただろう。俺のことが信じられなかったのかよ」
 傷ついた表情のヒューイを見ていると、胸が痛んだ。

「ごめん」
 それ以上何も言えなかった。
 ヒューイのため息が頭上から降ってくる。
「お前に『俺のことを信用しろ』って命令するのは簡単だ。でもそういうことじゃないだろ? 」
 ヒューイの言う通りだった。
 問題はヒューイに好意を抱いているくせに、ヒューイのことを信用しきれない俺自身にあった。
 信用していない相手を好きだなんて、滑稽な話だと思う。

 鼻の奥がツンと痛み、下唇を噛んだ。
 ヒューイが一歩こちらに近づく。
 びくりと肩を震わせた俺の目尻に浮かぶ涙を、ヒューイがそっと拭う。
 その優しい仕草に余計に泣きたくなった。
 ヒューイが俺に手を差し出した。

「戻ろう」
 俺はおずおずとその手をとった。
 ヒューイの手は温かく、その温もりを感じただけで、俺の胸の鼓動は高鳴る。
 俺の手を引くヒューイの背中に何か言いたいのに、言葉が見つからなくて、黙って足を動かすことしかできなかった。

 コテージの近くに戻るとシュリが両手を腰にあて、仁王立ちしていた。
「2人ともどこに行っていたのよ。ラフティングの予約時間もうすぐよ」
「ごめん、シュリ」
「すみません」
 シュリは肩を竦めると、ヒューイに腕を絡め、自分の方に引き寄せた。
 俺とヒューイの繋いでいた手が解かれる。
 俺はじっと温もりを失った自分の手を見つめた。
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