vamps

まめ太郎

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「俺? 」
 俺は目を見開き、首を振ると席に着いた。
「ゴージャスなんて、産まれてから一度も言われたことないよ。モルガン、どうかしちゃった? 」
 俺はモルガンのお世辞に苦笑しながら、パソコンの電源を点けた。

「アレン、本当に気付いていないの? 」
 今度はモルガンが目を見開く番だった。

「あなた髪もお肌もツヤッツヤじゃない。唇はリップでも塗ったみたいにプルンとしているし」
 モルガンがじっと俺の顔を見つめる。
「えっ、そうか? 別に何のケアもしてないけど」
「ヒューイに愛されているんでしょ」
 にんまりと笑いながらこちらを見るモルガンと目が合う。
 俺は頬が熱くなるのを感じながら、言葉を詰まらせた。

「あっ、愛なんて。俺達はそういうのじゃないから」
「そうなの? でも仲良くはやっているんでしょ? そうじゃなきゃあなたがこんなに綺麗になった説明がつかないもの」
「言っていることが、よく分からない」
 モルガンの言葉の真意がわからなくて、俺は首を傾げた。

「大好きなタイの為に綺麗になりたいと願うのは、ヴァンプの本能そのものよ。アレン、自覚はないかもしれないけれど、あなたは今、咲きほこる直前の大輪の花みたいに見える」
 モルガンの大袈裟な言葉が信じられなくて、俺は肩を竦めた。
 俺が大輪の花だなんて、ヒューイが聞いたらきっと腹を抱えて笑うだろう。

 教授がやっと到着し、授業が30分遅れで始まった。
 教授の実体験を絡めた話は面白くて、1時間があっという間に感じられる。
 授業が終わってメールを確認すると、『一緒に帰ろう』というメッセージがヒューイから届いていた。
 俺は「分かった。校門の近くで待っている」と返信してスマホをリュックにしまった。
 今日は本当にいい1日だ。
 そんなことを思いながら、校門まで足早に向かう。

「ちょっと、きみ」
 いきなり肩を掴まれ、俺は立ち止まった。
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