vamps

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「相手次第ではタイの関係もそんなに悪くないって、あの頃の私に教えてあげたいくらい」
　俺はモルガンの言葉に同意できなくて、ただ黙っていた。
　モルガンとタイの相手の関係を否定したいわけじゃない。
　だけど俺は誰かに命令されるなんて御免だった。

「アレンもいつか出会うと思うよ。私を変えた彼みたいな人に。それをきっと人は運命と呼ぶんじゃないかしら」
　優しく笑って語るモルガンの前で俺は俯いた。
　好きな相手から命令されるような、そんな運命なら願い下げだと腹の中で思いながら。

「もしかしてヒューイからの連絡？　アレンの機嫌が良いのはそのせいかしら」
　モルガンと仲良くなるきっかけを思い出していた俺は、その言葉で現実に引き戻された。

「別に機嫌よくなんかない」
　ムッとしながら答える。
「嘘、嘘。口の端が上がっていたのを私はちゃんと見たわよ」
　モルガンが自分の口角に軽く触れる。

「ヒューイと突然タイになったって聞いた時は驚いたけど、上手くやってるみたいじゃない」
　俺はノートパソコンをリュックにしまいながら、小さく息を吐いた。
「上手くなんてやってないよ。まあ、それも当然だけどさ。俺達はモルガンとこみたいに恋人ってわけでもない。タイになったのだって、なんていうか人助けみたいなものだし」
　俺は肩を竦めた。
　今の言葉は嘘ではないし、俺はちゃんとそのことを理解しているつもりだ。
　だが一方でモルガンに指摘されたように、ヒューイからのメールを喜んでしまう感情も抑えられない。
　ヴァンプの本能はなんて厄介なんだ。
　黙って俯く俺の背中にそっとモルガンが触れる。

「アレン。軽い気持ちであなた達の関係に口をだしたりしてごめんなさい。タイのことで悩んでいるならいつでも相談にのるわ」
　俺は慌てて首を振った。
「いや、大丈夫だよ。俺、ヒューイと約束があるから行くね」
　立ち上がった俺を心配気に見つめるモルガンを安心させるように微笑んだ。