vamps

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「なんか、怖いですね」
　俺のぽつりと零した呟きに、ドクターが首を傾げた。

「そんな風にタイの相手に尽くして、体まで変化させて……そこまでしたって相手が同じ熱量で自分を望んでくれるかなんて分からないのに」
　俺は顔を上げた。

「ねえ、先生。タイの関係って歪だと思いませんか？　こんな人間だけに都合のいい関係、おかしいよ」
　俺を置いていったヒューイへの苛立ちをここでぶつけているような気もしたが、止められなかった。
俺の言葉に、ドクターは悲痛な表情を浮かべた。
「歪と言ってしまえばそうかもしれない。しかし私はタイの数だけ、その関係性は多様にあると思っている。私はちゃんと自分のタイの相手であるヴァンプを敬っているカップルをいくつも知ってるよ。そんなにタイの関係性を悲観することはないんじゃないかな」
　ドクターが俺に微笑みかける。
「きみのタイの相手ともこの前少し話したよ」
　意外な言葉に、俺は口を小さく開ける。

「きみと彼がタイになった経緯は、必ずしもお互いが望んだ結果ではないと分かっている。でもその上で、彼は自分の責任を投げだすような男には見えなかったがね」
　俺は乾いた笑みを浮かべた。
「どうでしょうか？　」
　俺をちっとも気にかけず、慌ててシュリを追いかけて行ったヒューイの姿を思いだすと、ドクターの言葉に素直に頷くことはできなかった。

「まずはタイとの間に信頼関係を築くんだ。そのためには相手とのコミュニケーションが大切だよ」
　俺はドクターのアドバイスに渋々頷いた。
　もう聞くべきことは聞いた。
　立ち上がって俺は頭を下げた。

「どう考えようとも、君には現在タイがいることは事実なんだ。タイやヴァンプの関係性について思い悩むより、どうしたらもっと相手と親密になれるか考えた方が建設的だよ」
　ドクターはそこまで話すと、にこりと笑った。

「今度はタイの相手と一緒に来なさい。君の体に変化について相手も知るべきだ」
　俺は頷いて、診察室をでた。

　ヒューイが俺と一緒にここに来てくれるなんてありえない。
　もしもヒューイがシュリを気に掛ける、10分の1でも俺のことを考えてくれたなら。
　そんな日は来るはずないと俺は大きなため息をつき、とぼとぼと会計にむけて歩き始めた。