vamps

まめ太郎

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「いるわけない。俺、ヴァンプだよ? 」
「ヴァンプかどうかは関係なんじゃない? ファルの姉ちゃんだってヴァンプの恋人がいたって言ってたし」
 確かにティアにも恋人がいた。
 俺は自分がヴァンプであることがコンプレックスだし、生涯恋人はできないだろうと予想していた。
 だからついそんな返事になってしまったのだ。
 黙った俺の顔をヒューイが覗きこむ。

「まあ、とにかく付き合ってる奴はいないわけだ」
 俺が頷くと、ヒューイが満足そうに口の端を上げた。
「俺も、今は特定の奴はいない。だから吸血した後、手っ取り早く抜き合おうぜ」
 ヒューイは自分の右手を筒状にし、上下に動かした。
 俺はそのあからさま動作に真っ赤になった。

「でも、いいの?ヒューイにはシュリが」
 ヒューイが突然ドアを殴りつけ、車体が揺れる。
「あいつと俺はそんなんじゃない。余計な勘繰りはよせ」
 急に低くなったヒューイの声音で俺は自分の失言に気付いた。
 青ざめる俺と目も合わせずに、ヒューイが淡々とシャツを脱いでいく。
 ヒューイの裸の上半身が露わになる。その体は俺とは全く違っていた。
 逞しい胸板、割れた腹筋。二の腕など、俺の倍は太そうだ。
 そんな俺達の体にも同じ所が一つだけあった。

 ヒューイの胸に咲く青い薔薇を、俺はじっと見つめた。
 俺の胸の薔薇と全く同じ色と形。
 それは俺達を繋ぐ唯一のモノだ。

「おい、血を吸うのは首からでいいのか? 」
 ヒューイの問いかけにぼんやりしていた俺は一瞬返事が遅れた。
「吸血する場所は特にどこでもいいよ。痛みもないし、痕も残らない」
「ふうん」
 ふいにヒューイが俺の顔に手を伸ばす。

「あっ、本当に歯の形が変わるんだな」
 ヒューイが俺の尖った八重歯をそっと撫でる。
 血が飲めると分かった瞬間、俺達の歯は自然と尖る。
 そんな体の変化に、ヒューイは嫌悪感を抱いてはいないようだった。
 唇ごとふにふにと八重歯を押され、俺の顔が赤くなる。
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