vamps

4

　カレッジに着き、教室を目指す。
　1限目は人数の多い授業だから、広い教室だった。
　後方の席に座り、教科書を取りだす。
　この世界のヴァンプの総人口は人間の約10分の1と言われている。
　過去にはもっといたそうだが、人間に兵隊として戦場に駆りだされたり、奴隷として無茶な命令を聞いたりしているうちに、ここまで減ってしまった。
　このカレッジはヴァンプも人間も金持ちも貧乏も差別しないという校風で、俺はそれが気に入り、入学を決めた。
　偏差値が高く、試験はかなりの難関だったが、確かにヴァンプの人数も他のカレッジより多いし、差別的な扱いも今のところそこまで感じない。
　ティアもジャックと一緒にこのカレッジを目指しているらしいが、彼女の成績ではそうとう勉強しないと合格は難しいだろう。

　大教室の席が徐々に埋まり始める。
「前の方の席、全滅だね」
　鈴を鳴らすような声に俺は顔を上げた。
　小さな卵型の顔、真っ白な肌に黒曜石のような瞳と濡れた緑の黒髪。人間だが、そこらのヴァンプより彼女はよほど美しかった。
　1つ上の学年の百瀬シュリ(モモセ)だと認識し、俺は顔を赤らめた。
　彼女は俺のカレッジでも有名な美人で性格も良く、俺みたいなヴァンプも差別したりしない。

「隣の席、いいかな？　」
　俺はシュリの問いかけに、壊れた人形みたいにがくがくと頷いた。
「いいって。良かったね、ヒューイ」
　シュリに目を奪われていた俺は、彼女の隣の男の存在に今気付いた。
　シュリに話しかけられた男、塚越ヒューイ(ツカコシ)が小さくこちらに会釈する。
　人間なのに特徴的な銀色の瞳を持つ彼は、こちらを射貫くような鋭い目をしていた。
　シュリと同じ1つ年上のヒューイも目立つ存在だから知ってはいた。
　黒髪短髪、銀色の瞳で、モデルみたいな容姿のヒューイはシュリを守るナイトのように影のように、彼女にいつも付き従っていた。