139 / 336
113
しおりを挟む
病院に着くと、真司さんを先に降ろした。
「お金は払っておくから行って」
「すまない」
真司さんは走って病院の中に消えた。
俺は運転手に代金を支払うと、真司さんが忘れて行ったマフラーに気付き、それを持って車外にでた。
心臓の病は循環器内科が専門と受付で聞き、三階のフロアへ向かった。
ちょうど真司さんが白衣の男性と立ち話をしていて、男性が真司さんに一礼して、廊下の奥へと歩いていく。
近づくと、真司さんは力なく俺に微笑んだ。
「とりあえず大丈夫だけど、予断は許さないって」
「そう」
「川瀬さん、妹さん目を覚ましましたよ」
病室から出てきた看護婦さんが言う。
「はい」
真司さんは、「あとでタクシー代必ず払う」と俺に言い、病室に入って行った。
タクシー代は返さなくていいと伝えようと、俺は病室を覗きこんだ。
中にはベットの上でたくさんのチューブに繋がれた女の子が横になっていた。
真司さんはその子の手を握り、涙ぐんでいる。
女の子はすごく痩せていて、真司さんと繋いでいる手など、風が吹いただけでも折れそうに見えた。
俺は見てはいけないものを見たような気分になり、そのままふらふらと病院から出て、タクシーに乗ると将仁さんのマンションの住所を口にした。
車が動き始め、重い気分で息を吐くと、右手にしっかりと真司さんの青いマフラーが握られているのに気付いた。
ナースステーションにでも預けてくれば良かったと後悔した。
手に持ったマフラーをよく見るとタグもついていないし、編み目も不揃いだった。
どうやら手編みらしく、大切なものだとしたら勝手に処分するわけにもいかない。
俺は冷たい窓にこつりと頭をぶつけ、ため息をついた。
「お金は払っておくから行って」
「すまない」
真司さんは走って病院の中に消えた。
俺は運転手に代金を支払うと、真司さんが忘れて行ったマフラーに気付き、それを持って車外にでた。
心臓の病は循環器内科が専門と受付で聞き、三階のフロアへ向かった。
ちょうど真司さんが白衣の男性と立ち話をしていて、男性が真司さんに一礼して、廊下の奥へと歩いていく。
近づくと、真司さんは力なく俺に微笑んだ。
「とりあえず大丈夫だけど、予断は許さないって」
「そう」
「川瀬さん、妹さん目を覚ましましたよ」
病室から出てきた看護婦さんが言う。
「はい」
真司さんは、「あとでタクシー代必ず払う」と俺に言い、病室に入って行った。
タクシー代は返さなくていいと伝えようと、俺は病室を覗きこんだ。
中にはベットの上でたくさんのチューブに繋がれた女の子が横になっていた。
真司さんはその子の手を握り、涙ぐんでいる。
女の子はすごく痩せていて、真司さんと繋いでいる手など、風が吹いただけでも折れそうに見えた。
俺は見てはいけないものを見たような気分になり、そのままふらふらと病院から出て、タクシーに乗ると将仁さんのマンションの住所を口にした。
車が動き始め、重い気分で息を吐くと、右手にしっかりと真司さんの青いマフラーが握られているのに気付いた。
ナースステーションにでも預けてくれば良かったと後悔した。
手に持ったマフラーをよく見るとタグもついていないし、編み目も不揃いだった。
どうやら手編みらしく、大切なものだとしたら勝手に処分するわけにもいかない。
俺は冷たい窓にこつりと頭をぶつけ、ため息をついた。
0
お気に入りに追加
664
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる