楽園の在処

まめ太郎

文字の大きさ
上 下
145 / 161

145

しおりを挟む
 ふうと藤崎がため息をつく音が聞こえる。
「お前がこれからどうするのが正解かは、俺にも分からない。謝罪したって結局そんなもんは自己満足にすぎねえかもしれないし、改心して一生懸命働いたところで、そんなもん何の償いにもならねえと、被害者は思うかもしれないしな」
 怒鳴り返したいのか、泣きだして藤崎に縋りつきたいのか。様々な感情が自分の中でせめぎ合う。

「だったら、もうあとは好きにやるしかねえだろ」

 藤崎はきっぱりそう言い切った。
 思いもよらない言葉に唖然とする。

「俺だって、知っての通り正しいことばかりしてきたわけじゃない。後悔していることなんざ、それこそ山のようにある。ただどんな時でも、自分で判断を下してきた。誰のせいにもできないようにな」
「俺はあんたのように強くない」
「弱い奴でも誰かのために強くなれることもあるだろ」
 俺は目を閉じ、ぐっと奥歯を噛みしめた。

「お前は本当に今のままでいいのか?住む場所が変わっただけで、また鳥かごの中に閉じ込められて…。少なくとも、硝は嫌だと抵抗してる。お前と共に生きたいとな」
 熱い雫が頬を伝う。嗚咽が漏れないよう、掌で口を塞いだ。
「お前の判断で好きに生きてみたらどうだ?どんな結果でも自分で背負いこむしかないってことは、今のお前なら痛いくらい理解しているだろ。もし、お前がまた悪い方にいったら、俺が引き取ってやってもいいぜ。今度は手放さねえが」
 ふいに声を低くして藤崎が呟く。
「今度何てあるか」
 俺は鼻をズッと啜ると言い返した。
「いい覚悟だ」
 藤崎は優しい声でそう言うと電話を唐突に切った。
 スマホを持ってきたスーツの男が、またそれを俺から取り上げ、出て行く。

 立ちあがり、腕を組んだ。
 部屋から出るのは簡単だ。
 しかしこの期に及んでまだ俺は硝に会うべきか悩んでいた。
 海外の仕事も決まり、硝自身、モデルの仕事は楽しいと言っていた。
 俺の傍にずっといるというのは、そういう機会を潰す可能性があるということだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義兄に寝取られました

天災
BL
 義兄に寝取られるとは…

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

処理中です...