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漂っていた意識がはっと覚める。
心臓がバクバクと嫌な音をたて、小さな置き時計を見ると、4時30分を少し過ぎたところだった。
右手に持ったままだったスマホを確認したが、着信もメールもない。
閉ざされた玄関の扉をじっと見つめると、俺は立ちあがり、うろうろと室内を歩き回った。
三枝は有名な事務所の取締役だというから、新聞に載るような馬鹿な真似はしないだろう。
しかしモデルになれると町で女を引っ掛け、アダルトビデオに無理やり出演させるという仕事を昔の仲間がやっていたことを思い出してしまい、俺はぶるりと体を震わせた。
大丈夫だ。
あいつはいくら顔がいいといったって男だ。
変な目にあうはずがない。
そう思いながらも、俺の頭の中ではどんどん最悪な妄想が繰り広げられていく。
このままでは埒が明かない。
画家の先生に電話をして、三枝の連絡先を聞き出して…。
そんなことを考えていると、外に車の止まる気配がした。
車が去って行く音が聞こえ、人の重みをうけ、ボロアパートの階段がみしみしときしむ。
扉が開き、硝が俯いてため息をつくと顔を上げ、俺と目が合う。
硝がこれ以上ないくらい、目を見開いた。
「海、なんでもう起きてるの?仕事まで、まだ時間あるよね」
壁のスイッチに硝が手を伸ばす。
ふいに部屋が白明るくなり、俺は眩しさから目を細めた。
「てめえを待ってたんだよ。一晩中、連絡もよこさないでどういうつもりだ。何度もお前のスマホに電話したんだぞっ」
俺が怒鳴ると、硝がびくりと肩を震わせた。
「ごっ、ごめん。なんか三枝さんが、勝手に盛り上がっちゃって。試し撮りさせろって、わざわざカメラマンの人まで呼び出して…。俺、ずっと撮られてたから、スマホ見る暇なくて、海からの着信に気付いたのもさっきなんだ。こんな時間に折り返したら、寝てる海、起こしちゃうかなって」
俺の剣幕にびびったのか、珍しく早口で硝が言う。
心臓がバクバクと嫌な音をたて、小さな置き時計を見ると、4時30分を少し過ぎたところだった。
右手に持ったままだったスマホを確認したが、着信もメールもない。
閉ざされた玄関の扉をじっと見つめると、俺は立ちあがり、うろうろと室内を歩き回った。
三枝は有名な事務所の取締役だというから、新聞に載るような馬鹿な真似はしないだろう。
しかしモデルになれると町で女を引っ掛け、アダルトビデオに無理やり出演させるという仕事を昔の仲間がやっていたことを思い出してしまい、俺はぶるりと体を震わせた。
大丈夫だ。
あいつはいくら顔がいいといったって男だ。
変な目にあうはずがない。
そう思いながらも、俺の頭の中ではどんどん最悪な妄想が繰り広げられていく。
このままでは埒が明かない。
画家の先生に電話をして、三枝の連絡先を聞き出して…。
そんなことを考えていると、外に車の止まる気配がした。
車が去って行く音が聞こえ、人の重みをうけ、ボロアパートの階段がみしみしときしむ。
扉が開き、硝が俯いてため息をつくと顔を上げ、俺と目が合う。
硝がこれ以上ないくらい、目を見開いた。
「海、なんでもう起きてるの?仕事まで、まだ時間あるよね」
壁のスイッチに硝が手を伸ばす。
ふいに部屋が白明るくなり、俺は眩しさから目を細めた。
「てめえを待ってたんだよ。一晩中、連絡もよこさないでどういうつもりだ。何度もお前のスマホに電話したんだぞっ」
俺が怒鳴ると、硝がびくりと肩を震わせた。
「ごっ、ごめん。なんか三枝さんが、勝手に盛り上がっちゃって。試し撮りさせろって、わざわざカメラマンの人まで呼び出して…。俺、ずっと撮られてたから、スマホ見る暇なくて、海からの着信に気付いたのもさっきなんだ。こんな時間に折り返したら、寝てる海、起こしちゃうかなって」
俺の剣幕にびびったのか、珍しく早口で硝が言う。
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