楽園の在処

まめ太郎

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 気が付くとカーテンを引いていない窓から、日の光が降り注いでいた。
 目を覚ました硝は何度も謝ったが、俺は断固無視してやった。
 最後には硝も謝り疲れたのか「可愛い過ぎる海がいけないんだろ?」と意味の分からない逆切れをしてきた。
 朝食に蜆の味噌汁と、アジの開き、炊き立ての米を出され、俺達二人は完食した。
「二日酔いにならなくて良かったわ」
 先生が笑ってそう言う。
 俺達は言い合いながらも、いつも通り結局一緒に家路についた。
 
 それから一週間後、絵が完成した。
 ほどなくして先生から個展の案内の絵葉書が俺と硝宛てに届いた。
「楽しみだなあ」
 個展会場に向かう電車の中で硝が呟く。
「楽しみったって、お前はもう完成品見たんだろ?」
 俺の質問に硝が首を振る。
「先生は描き途中の作品を見られるのが嫌いなんだって。だから俺も、今日初めて見るんだ」
 そんな会話をしていると、目的の駅に着いた。

 会場に近い出口を抜け、ビルの間を少し歩くと、行列が見えた。初日ということもあってか、先生の個展には少なくとも、20人強が並んでいた。
 俺達も列の最後尾につく。

 硝の容姿が注目されるのはいつものことだが、今日はすこし様子が異なっていた。
 会場から出てきた人間は皆、硝に気付くとまずぎょっとした顔をし、そのうちひそひそと連れと話し始める。
 何名かは、パンフレットにサインしてくれだの、写メを撮らせろだの言ってきたが、硝が全て自ら断っていた。

 こりゃ、中に入ったら余計に大変だろうな。
 隣で涼しい顔をしている硝に俺は同情の目を向けた。

 一時間ほど並び、ようやく受付に通される。
 受付の女性も、硝の顔を呆けた様に見つめ、隣の男性に注意され、ようやくパンフレットを俺達に手渡す。
「ごゆっくりご覧ください」
 女性の言葉に頷き、俺達は端から、ゆっくりと絵を見始めた。
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