117 / 161
117
しおりを挟む
「お前らを助けるのはこれが最後だ。硝に渡した電話番号はもう二度と俺にはつながらない」
藤崎はそれだけ言うと、車のドアを開け、外に出た。
「海。どうする?これ以上痛い目を見るのが辛いというなら、あそこに俺と戻りたいというなら、また飼ってやろうか?ただし、硝は連れて行かない。お前だけだ」
俺に向かって手を差し伸ばす藤崎を睨みつける。
硝を振り返ると、下唇をぎゅっと噛み、目を潤ませていた。その表情を見て、俺の気持ちはかたまった。
俺は藤崎を見上げた。
「行かない。俺には責任があるから」
それだけで藤崎は言いたいことが分かったようだった。
「そうか」
サングラスをかけ、ドアを閉めると、一度も振り返らずに道の反対に止まっていた車に乗り込み、去って行く。
俺達の乗っていた車もようやく動き始めた。
「どうやって藤崎さんと連絡をとったんだ?」
「出て行く時に、本当にやばいことになったら連絡しろって、電話番号のメモ渡された。でも、もう使えないね」
硝はぽつりとそう言った。
俺は自分の全身をゆっくり摩った。
骨はどこも異常がなさそうだった。
この感触からいくと、二週間もすれば痛みもとれるだろう。
俺は息を吐くと、シートに背中を預けた。
「なあ。もし俺がさっき藤崎さんの手をとって、お前を捨てていたらどうした?」
前を見たまま聞いた。
「そうだね。藤崎さんにつきまとって、もう一度俺も飼ってもらえるよう頼みこむかな」
こいつは俺が自分を選ばない可能性も十分にあると分かっている。それでも俺を責めたりはしない。
「俺と海が離れるなんて」
そこまで言うと、硝はシートに投げ出されていた、俺の指先を握り、鼻を鳴らした。
「ありえないよ」
俺は目を閉じ、寒いくらい空調の効いた車内で、唯一のぬくもりである硝の指を軽く握り返した。
藤崎はそれだけ言うと、車のドアを開け、外に出た。
「海。どうする?これ以上痛い目を見るのが辛いというなら、あそこに俺と戻りたいというなら、また飼ってやろうか?ただし、硝は連れて行かない。お前だけだ」
俺に向かって手を差し伸ばす藤崎を睨みつける。
硝を振り返ると、下唇をぎゅっと噛み、目を潤ませていた。その表情を見て、俺の気持ちはかたまった。
俺は藤崎を見上げた。
「行かない。俺には責任があるから」
それだけで藤崎は言いたいことが分かったようだった。
「そうか」
サングラスをかけ、ドアを閉めると、一度も振り返らずに道の反対に止まっていた車に乗り込み、去って行く。
俺達の乗っていた車もようやく動き始めた。
「どうやって藤崎さんと連絡をとったんだ?」
「出て行く時に、本当にやばいことになったら連絡しろって、電話番号のメモ渡された。でも、もう使えないね」
硝はぽつりとそう言った。
俺は自分の全身をゆっくり摩った。
骨はどこも異常がなさそうだった。
この感触からいくと、二週間もすれば痛みもとれるだろう。
俺は息を吐くと、シートに背中を預けた。
「なあ。もし俺がさっき藤崎さんの手をとって、お前を捨てていたらどうした?」
前を見たまま聞いた。
「そうだね。藤崎さんにつきまとって、もう一度俺も飼ってもらえるよう頼みこむかな」
こいつは俺が自分を選ばない可能性も十分にあると分かっている。それでも俺を責めたりはしない。
「俺と海が離れるなんて」
そこまで言うと、硝はシートに投げ出されていた、俺の指先を握り、鼻を鳴らした。
「ありえないよ」
俺は目を閉じ、寒いくらい空調の効いた車内で、唯一のぬくもりである硝の指を軽く握り返した。
0
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
昭和から平成の性的イジメ
ポコたん
BL
バブル期に出てきたチーマーを舞台にしたイジメをテーマにした創作小説です。
内容は実際にあったとされる内容を小説にする為に色付けしています。私自身がチーマーだったり被害者だったわけではないので目撃者などに聞いた事を取り上げています。
実際に被害に遭われた方や目撃者の方がいましたら感想をお願いします。
全2話
チーマーとは
茶髪にしたりピアスをしたりしてゲームセンターやコンビニにグループ(チーム)でたむろしている不良少年。 [補説] 昭和末期から平成初期にかけて目立ち、通行人に因縁をつけて金銭を脅し取ることなどもあった。 東京渋谷センター街が発祥の地という。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる