楽園の在処

まめ太郎

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 誰も触れたことのない個所を長大な熱で抉られ、目がチカチカし、まともに息を吸うことができない。
「嘘つき。ここキスマークついてる」
 そう言って、硝が俺の鎖骨辺りに触れた。
 俺が言い返す前に、硝は俺の両手首を掴み、激しく腰をグラインドさせ始めた。抜けるぎりぎりまで腰を引くと、一気に突っ込む。
 何度もそれをくり返し、俺は酷く揺さぶられた。
「今の海を外に出すの心配。だってこんな乱暴にしても気持ちよくなっちゃうでしょ?」
 そう言われて、初めて俺は自分が達していることに気付いた。

「海は誰が相手だっていいんだよね?こうやって、突っこんでくれればさ」
「てめぇ…あっ、やめ」
 パンパンと激しい出し入れに、悲鳴を上げてしまう。こんなにされてもまだ勃っている、自分の体が憎らしい。
 硝がようやく奥に熱を解き放ち、動きを止めた。
 俺に覆いかぶさり荒い息を吐く硝の頭に触れようとした瞬間、硝がキスマークの上から噛みついた。
「痛っ」
 俺は反射的に、硝の頭を叩いた。しかし硝はピクリとも動かない。

「おい…」
 叩かれても文句も言わずじっとしている硝が心配になり、俺は声をかけた。
「海、誰でもいいなら俺にしてよ。俺、誰よりも海のこと愛してる。海が俺のこと好きじゃなくても、お爺さんになっても、ずっと愛し続ける自信ある」
「なんでお前…そこまで俺のこと」
 硝の気持ちは嬉しいというより、俺には重すぎて、若干恐怖さえ覚えた。
「母さんは父さんに見返りを求めたけど、俺はそんなことしない。ただ海が傍にいることを許してくれたらそれでいい」
「だからなんで俺なんだよ」
「分からない。でも俺は海が良いって思っちゃったから」
 そう言って顔を上げた硝は泣きだす前の子供みたいな表情だった。
 不思議とそんな硝の顔を見ると、ないはずの俺の良心が痛んだ。理沙と寝たことを申し訳ないとさえ思う。
 絶対硝には言わないが。

「馬鹿だな、お前」 
 俺は呟きながら、硝と唇を重ねた。
 ゆっくり何度も唇を付けては離す。硝が大きな掌で俺のわき腹を摩り、Тシャツを脱がそうとする。
 その時、着信音が鳴り響いた。
 硝はスマホをとると、少しだけ話し、電話を切った。
「いいのかよ?」
 再び俺に覆いかぶさってきた硝に尋ねる。
「うん。お客さんだったけど、今好きな人との大事な時間だからって言って切った」
 俺は慌てて上半身を起こした。
「大丈夫なのか?」
「うん。だって本当のことだし」
 そう言って硝は俺にもう一度キスをした。
「ね?そうだよね?」
「…ああ」
 俺は頷くと、硝の背中に両手を回し、自ら唇を重ねた。
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