楽園の在処

まめ太郎

文字の大きさ
上 下
78 / 161

78

しおりを挟む
 目を逸らすと、何もない白い壁を見つめる。
 本当は耳も塞ぎたかった。
 硝の苦痛から漏れる声は最初は我慢していたため小さく、そのうち限界を迎えたらしく叫ぶようになり、最後はもう声もでないのかほとんど呻きだった。
 その頃になると藤崎はようやく硝を掴んでいた手を離し、自らの額に滲んだ汗を手の甲で拭った。
 藤崎はベッドのサイドテーブルから、プレイの時に使ったことのある手錠と足環を取り出した。
 手錠を嵌め、足環もつけられ、その手と足を後ろで固定された硝は芋虫のように床に転がった。

「お前は今日そこで、ただ見ていればいい。俺が海を抱くのをな」
 そう言うと、藤崎が俺に手を伸ばす。
 その手は硝の返り血で赤く染まっていた。
 俺は一旦視線を落としたが、すぐに上げ、ぎゅっとその手を握った。
 自分の手が血で汚れるのも気にせずに。

 藤崎のキスはいつもよりもずっと甘く、優しかった。
 しかし先ほど見た暴力のせいで、俺の体はガチガチに固まり、思うようにキスが返せない。
 藤崎は舌打ちすると、いきなり俺の股間の全く兆しを見せていないくたりとしたモノを口に含んだ。
「ちょ、やめ…」 
 ふいに噛みちぎられるかもしれないという恐怖が俺を襲う。
 そうと決めたら、この男はなんの躊躇もなくそれをやってみせるだろう。
 藤崎は顔を上げると、腰を引く俺を睨みつけた。
「海。どんな時でも俺を拒むな」
 そんなの無理だと叫びたい気分だった。
 俺は暴力に怯えるタイプではないが、人が痛めつけられるのを見て興奮するような性質はもちあわせちゃいない。
 俺より長く一緒に暮らしている硝にだって、あんなに酷いことができるんだ。俺だって選択を誤れば、何されるか分かったもんじゃねえ。
 藤崎に従わなければという脳内の指令を無視して、俺の体の震えは酷くなるばかりだった。
 藤崎が上半身を起こし、ため息をつく。
 殴られる。
 そう思った俺がぎゅっと目を閉じると、ふいに体が温かなものに包まれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

義兄に寝取られました

天災
BL
 義兄に寝取られるとは…

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

処理中です...