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「どうせヤク使わなきゃ勃たないなら、掘られた方が楽じゃね?それなら勃たなくても関係ねえし」
俺の言葉に眉を顰めた硝が読んでいた文庫本を閉じた。
ぼんやりと、宙を見つめる。
ここで暮らし始めて一ケ月ほど経つが、硝は話しかけられた時、独特の間合いがあるということをようやく俺は理解してきた。最初は無視されているものだとばかり思って、硝を怒鳴りつけたこともあった。
しかしこうやって反応が遅いのも、薬物摂取の影響かと思うとぞっとする。
「…拾われてすぐ、藤崎さんにヤラれたこと、あった」
隣に座る硝の告白に俺はテレビを消し、そちらに顔を向けた。
「へえ、それで?不感症なお前が、可愛い猫ちゃんになって喘いだってとこか?」
俺が半笑いで聞くと、硝も口の端に嘲るような笑みを浮かべた。
「海じゃあるまいし、そんなわけない」
俺は硝の言葉にカチンときたが、話の続きが気になり、睨むだけにしておいた。
「入れられて…痛いってだけ言ってそれから何にも反応しなかったら、急に藤崎さん不機嫌になって…もうお前とはしねえって言われて…それっきり突っ込まれたことない」
俺は硝の言葉に腹を抱えて笑った。
「…お前、それ思いっきり相手の男としてのプライド、粉々にしてんじゃねえか」
俺の言葉に硝が意味が分からないという顔をする。
俺は笑いすぎて、目尻に浮かんだ涙を拭いながら、喉が渇いたとベッドから立ち上がった。
「それと、俺はヤク中じゃない」
背後から硝が言い、俺は振り返った。
「嘘つけ。お前、俺を掘った時、何かやばそうなの飲んでただろ」
俺はきつく硝を睨みつけ、言った。
「あれはEDの治療薬として、一般的に処方されているもの。すごく弱い薬。嘘だと思うなら、藤崎さんに聞いてみなよ」
きっぱりそう言われ、俺はふんと鼻を鳴らすと、キッチンに向かった。
冷蔵庫を開けると、そこには飲料系しか入っていない。ここに来た時から変わらぬ眺めだが、料理をしないにしても、せめてもう少し何か入れておく気はないのか。
俺はそこからコーラの缶を取り出すと、プルタブを開けた。
「あいつジャンキーじゃなかったんだ」
俺はコーラを一口飲むと呟いた。
完全に信じたわけではないが、確かに自分の母親の焦点の定まらない目や、いつも落ち着きのない様子を思い出すと、黙って文庫本を読む硝とは似ても似つかない。
俺はもう一口コーラを飲むと、硝のため、もう一缶取り出し、部屋に戻った。
その夜もいつも通り、藤崎の買ってきた弁当を五人でつつくという夕飯だった。
食べ飽きた幕の内を前に俺は言った。
「なあ、藤崎さん。俺買って欲しいもんあんだけど」
藤崎が俺の言葉に箸を止め、こちらを見た。
「なんだ?言ってみろ」
「とりあえず、包丁」
そう言った途端、俺の前で並んで食事をしていた星と月が同じタイミングで米粒を吹き出した。
俺の言葉に眉を顰めた硝が読んでいた文庫本を閉じた。
ぼんやりと、宙を見つめる。
ここで暮らし始めて一ケ月ほど経つが、硝は話しかけられた時、独特の間合いがあるということをようやく俺は理解してきた。最初は無視されているものだとばかり思って、硝を怒鳴りつけたこともあった。
しかしこうやって反応が遅いのも、薬物摂取の影響かと思うとぞっとする。
「…拾われてすぐ、藤崎さんにヤラれたこと、あった」
隣に座る硝の告白に俺はテレビを消し、そちらに顔を向けた。
「へえ、それで?不感症なお前が、可愛い猫ちゃんになって喘いだってとこか?」
俺が半笑いで聞くと、硝も口の端に嘲るような笑みを浮かべた。
「海じゃあるまいし、そんなわけない」
俺は硝の言葉にカチンときたが、話の続きが気になり、睨むだけにしておいた。
「入れられて…痛いってだけ言ってそれから何にも反応しなかったら、急に藤崎さん不機嫌になって…もうお前とはしねえって言われて…それっきり突っ込まれたことない」
俺は硝の言葉に腹を抱えて笑った。
「…お前、それ思いっきり相手の男としてのプライド、粉々にしてんじゃねえか」
俺の言葉に硝が意味が分からないという顔をする。
俺は笑いすぎて、目尻に浮かんだ涙を拭いながら、喉が渇いたとベッドから立ち上がった。
「それと、俺はヤク中じゃない」
背後から硝が言い、俺は振り返った。
「嘘つけ。お前、俺を掘った時、何かやばそうなの飲んでただろ」
俺はきつく硝を睨みつけ、言った。
「あれはEDの治療薬として、一般的に処方されているもの。すごく弱い薬。嘘だと思うなら、藤崎さんに聞いてみなよ」
きっぱりそう言われ、俺はふんと鼻を鳴らすと、キッチンに向かった。
冷蔵庫を開けると、そこには飲料系しか入っていない。ここに来た時から変わらぬ眺めだが、料理をしないにしても、せめてもう少し何か入れておく気はないのか。
俺はそこからコーラの缶を取り出すと、プルタブを開けた。
「あいつジャンキーじゃなかったんだ」
俺はコーラを一口飲むと呟いた。
完全に信じたわけではないが、確かに自分の母親の焦点の定まらない目や、いつも落ち着きのない様子を思い出すと、黙って文庫本を読む硝とは似ても似つかない。
俺はもう一口コーラを飲むと、硝のため、もう一缶取り出し、部屋に戻った。
その夜もいつも通り、藤崎の買ってきた弁当を五人でつつくという夕飯だった。
食べ飽きた幕の内を前に俺は言った。
「なあ、藤崎さん。俺買って欲しいもんあんだけど」
藤崎が俺の言葉に箸を止め、こちらを見た。
「なんだ?言ってみろ」
「とりあえず、包丁」
そう言った途端、俺の前で並んで食事をしていた星と月が同じタイミングで米粒を吹き出した。
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