7 / 66
7
しおりを挟む
「有希子ちゃんだっけ?人が用を足しているところを覗くのは犯罪だって分かってるよね?」
「ごめんなさい。でも私、天使様が体調が悪いんじゃないかって心配になって…」
「だからって普通男子トイレを覗いたりなんかしないだろっ」
立ち止まって、声を荒げると、彼女の肩がびくりと揺れた。
俺は伸びた前髪をかきあげ、ため息をついた。
「ごめん、急に大声出して。とにかくそういうことはもう二度とやめてくれ。あと、君のことを好きになることは永遠にないから。本当に迷惑だから、もう校門の前に立つのも手紙も止めて」
「ごめんなさい」
俯く有希子の目尻には涙が滲んでいた。
そんな姿を見ても優しくする気もおきなかった。
「じゃあ。もう会うこともないだろうけど」
彼女を残して俺は足早にその場から去った。
少しして振り返ると、彼女は微動だにせず、そこに立ちすくんだままだった。
中学生相手に言い過ぎたかとも思ったが、手紙の内容を思い出すと怒りと羞恥で身震いがおきた。踵を返し、俺は二度と振り返らなかった。
翌朝、校門の傍に立つ有希子の姿を見つけ、俺は何度も瞬きをした。しかしそんなことをしても彼女の姿は消えてはくれない。
こちらに気付くとずんずんと近寄って来て、手紙を差し出す。
俺が咄嗟にそれを受け取ると、彼女は一礼し、走って行った。いつものようにべたべたと話しかけてこない彼女に俺は目を丸くした。
もしかして最後に謝罪の手紙でも寄こしたのかな。
いつもより分厚く感じる手紙をじっと見つめながら、俺はそんなことを考えた。
授業が終わり、クラスメイトが続々と教室から出ていく中、俺は今朝有希子から貰った手紙をカバンから取り出した。
最後の手紙くらい読んでやるか。
封を切ると、中にはいつものレポート用紙と一緒に写真が2枚入っていた。
なんだ、これ?
写真に写っているのは赤黒い、ザクロのような…。
その物体を認識した瞬間、俺はザッと鳥肌をたてた。
写真をカバンに突っ込む。
「ごめんなさい。でも私、天使様が体調が悪いんじゃないかって心配になって…」
「だからって普通男子トイレを覗いたりなんかしないだろっ」
立ち止まって、声を荒げると、彼女の肩がびくりと揺れた。
俺は伸びた前髪をかきあげ、ため息をついた。
「ごめん、急に大声出して。とにかくそういうことはもう二度とやめてくれ。あと、君のことを好きになることは永遠にないから。本当に迷惑だから、もう校門の前に立つのも手紙も止めて」
「ごめんなさい」
俯く有希子の目尻には涙が滲んでいた。
そんな姿を見ても優しくする気もおきなかった。
「じゃあ。もう会うこともないだろうけど」
彼女を残して俺は足早にその場から去った。
少しして振り返ると、彼女は微動だにせず、そこに立ちすくんだままだった。
中学生相手に言い過ぎたかとも思ったが、手紙の内容を思い出すと怒りと羞恥で身震いがおきた。踵を返し、俺は二度と振り返らなかった。
翌朝、校門の傍に立つ有希子の姿を見つけ、俺は何度も瞬きをした。しかしそんなことをしても彼女の姿は消えてはくれない。
こちらに気付くとずんずんと近寄って来て、手紙を差し出す。
俺が咄嗟にそれを受け取ると、彼女は一礼し、走って行った。いつものようにべたべたと話しかけてこない彼女に俺は目を丸くした。
もしかして最後に謝罪の手紙でも寄こしたのかな。
いつもより分厚く感じる手紙をじっと見つめながら、俺はそんなことを考えた。
授業が終わり、クラスメイトが続々と教室から出ていく中、俺は今朝有希子から貰った手紙をカバンから取り出した。
最後の手紙くらい読んでやるか。
封を切ると、中にはいつものレポート用紙と一緒に写真が2枚入っていた。
なんだ、これ?
写真に写っているのは赤黒い、ザクロのような…。
その物体を認識した瞬間、俺はザッと鳥肌をたてた。
写真をカバンに突っ込む。
5
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
からっぽを満たせ
ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。
そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。
しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。
そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない
りつ
BL
恋人にもっとあからさまに求めてほしくて浮気を繰り返すクズ攻めと上手に想いを返せなかった受けの薄暗い小話です。「#別れ終わり最後最期バイバイさよならを使わずに別れを表現する」タグで書いたお話でした。少しだけ喘いでいるのでご注意ください。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる