絵を描くキカイ

和スレ 亜依

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第8話

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「反響はどうですか?」
「なかなかだね。君は演劇の才能があるかもしれないな」
「あはは、ありがとうございます」
 動画の流出から一週間後、小花は特区内の研究所で竹内と話をしていた。
「でも、あと一押しかな」
「何かあるんですか?」
 竹内はコーヒーを飲みながら悩ましげに答えた。
「この後に及んで、映像はフェイクだと言っている連中がいてね。アンドロイドがここまで感情を持っていることを信じられない者もいるみたいだ」
「そう、ですか」
「でもまぁ、今作ってるこの動画ができあがれば、その一押しもできるだろうけどね」
「頑張ってくださいね」
「他人事みたいだね。でも、動画を公開する時には君にもまた活躍してもらうから」
「竹内さん、その笑顔怖いんですけど」
「いやぁ、先日の動画で君は人気が出てるみたいだからね」
「はぁ……?」
 小花は世間の反応を直接見聞きしていないので曖昧な反応を見せるが、実際、動画内で大活躍した彼女は熱狂的なファンが生まれるくらいには人気が出ていた。
「でも、これで有名になってしまったから夜道には気をつけた方がいいかもしれないね」
「一応、気をつけます……」
 竹内は割と本気で忠告をしたのだが、最後まで判然としない様子の小花だった。



 卒業式の二週間前。人間の学校だったら、大学受験関連で家庭学習日となっている時期に小花たちはいつものように登校していた。アンドロイドの特性上、受験勉強というのが必要ないからである。しかし、それは半分の理由で、もう半分はしばらくしたら廃棄されることが決まっているためである。
(いよいよ、だね)
 小花は授業中だというのに気が気でならなかった。それもそのはず、今日は学校が終わったあと、大事な任務があるのだ。
 だから、それに気づくのに一瞬遅れた。
『……くん……片井君……』
 小花は最初、教室内の誰かが呼んでいるのかと思った。だが、誰も自分の方を見ていない。
『片井君!』
 そして気づく。脳に直接響いてくるようなこの声は。
(内部通話モード起動)
 小花は滅多に使わない機能を起動した。
『竹内さん?』
『ああ、良かった!』
『どうかしたんですか?』
『まずいことになってしまった』
『まずいこと?』
『ああ、つい今し方研究所が武装したアンドロイドに取り囲まれた』
『えっ』
『おそらく、人権不要派の連中が強硬手段に出たんだろうが……』
『大丈夫なんですか!?』
『大丈夫ではないね。奴ら銃を所持していて奥の手を使おうにも近づけない。今は、警備のアンドロイドが応戦していて、私たちは臨時の執務室に隠れているが、突破されるのも時間の問題だろう』
『分かりました、すぐ行きます!』
『いや、それではおそらく間に合わない』
『じゃあ、どうすれば……!』
『君は予定の場所へ行ってくれ』
『そんなことしてる暇は―』
『今日やらなければ、君たちの廃棄までに間に合わないんだ!』
『……どういう、ことですか?』
『高校生のアンドロイドは卒業式終了と同時に機能を停止、研究データの抽出を行うプログラムが組まれている』
『そんな……!』
『黙っていて申し訳ない。でも、作戦が成功すると信じて、君に余計な負担がかからないようにしたかったんだ。作戦が成功すれば議決でプログラムもすぐに解除されるだろう。だから、今君がやるべきことは研究所の奪還じゃない……行ってくれ!』
『分かり、ました…………死なないでくださいね……まだ教えてほしいこと、たくさんあるから』
『ああ、君も気をつけて』
 通信が切れると同時に、小花は席を立った。
「片井さん?」
 不審がる教師に小花は言った。
「すみません、みんなを救うために早退します」


 小花は走った。人間とは比べものにならない速度で。それでも、街中ということもあり、人とぶつかりそうになったり、角を曲がったりする度に減速してしまう。
(急がなきゃ……!)
 焦る心を抑えてひた走る。
 そんな彼女の前にさらに試練は訪れる。
「うそ、でしょ……?」
 小花は急ブレーキをかけた。目の前にいたのは。
「武装……アンドロイド」
 銃器を手に持って立ち塞がる能面のようなアンドロイドたち。
 小花はふと思う。
(この人たちには本当に感情はないのかな……)
 そんな湧いた疑問を吹き飛ばすように、彼女は頭を振った。
「邪魔……しないで!」
 小花は両足に持てる限りの全力を注ぎ込んだ。
 ドン。
 地面が震動した。直後に、彼女の体は宙を舞った。
(くっ……!)
 限界ぎりぎりまで力を出した跳躍は体に大きな負担を強いた。足の駆動システムがいくつかダメージを受けたようだ。
 ビルを跳び越えて、着地する小花。再び走り出そうと足を持ち上げた時。
 カン。
 乾いた音が響いた。それと同時に体が傾いでいく。傾く視界の中で、小花は自分の右足に穴が空いているのを見た。
 バタン。
 地面に倒れる体。
(そうか、撃たれたんだ)
 足に力が入らない。
(でも、行かなきゃ)
 立ち上がろうと踏ん張る。
(そん、な……)
 その間に武装アンドロイドに取り囲まれていた。
「捕まえた」
 声が聞こえた。その主を探そうと、視線を動かす。
「……検査員さん?」
 それは、研究所で目覚めた時にいた、白衣を着た検査員の女性だった。
「さすがはアンドロイド。すごい力ですね」
 心のまるでこもっていない淡々とした口調で喋る彼女に、小花は聞いた。
「どうして…………」
「あなたがいると邪魔なんですよ」
「……邪魔?」
「ええ。例の動画であなたは一躍大スターです。あなたが人権問題の中心と言っても過言ではない」
「人権不要派……」
「はい。いかにも」
「どうして……一番近くで私たちを見てくれてたんじゃ……」
「だから、ですよ。アンドロイドは意思を持った。文字通り力のあるアンドロイドが自らの意思で破壊行為を行ったらどうなると思います? そう考えたら怖くて夜も眠れません」
 事実、彼女の目には大きな隈ができていた。
(この人が言うことも分かるけど……そんなの、人間だって同じはずだよ……)
 だから、今はこう言うしかない。
「私たちはそんなこと、しません!」
 女はぼやくように言う。
「そんな保証などないくせに……」
「でも、私を捕まえても、意味ありません。今の世代には間に合わないかもしれないけど、次の世代はきっと人として生きることができます」
「そうですね、今のままではそうです。でも、」
 女はそこで一呼吸置いて言った。
「あなたが暴走したらどうでしょう?」
 小花はハッとした。
「まさか、私のプログラムを書き換えるのっ!?」
「正解です。ただの道具にしては優秀ですね。ヒロインが暴走したら、世間は再び人権不要派に鞍替えするでしょう。そうしたら、私たちはアンドロイドの暴挙に怯えなくいていい世界を取り戻すことができるのです」
「そうしたら、みんなはどうなるの……?」
「そうですね、当然実験は中止、この街のアンドロイド全てが廃棄されるでしょう。……まぁ、そこは元々同じだったんですが」
「そんなの、だめだよ……」
「残念でしたね、アンドロイドに人権はありません。廃棄されること自体は何の罪にもなりませんよ」
 女はそのまま、武装アンドロイドに指示を出す。
「とりあえず、動けないようにもう片方の足もいっておきましょうか」
 あくまで淡々としたその指示で、再び銃弾が発射された。
 カン。
「おや」
(ぐ……!)
 小花は咄嗟に這って銃弾が足に当たるのをを避けた。が、避け方が悪く、左腕に当たってしまった。
「何でそんなに痛そうな顔をするんですか? アンドロイドに痛覚はないでしょうに……」
 不思議そうな顔をする女。
(違う、体が痛いんじゃない)
 小花は苦々しい表情を浮かべる。
(私は、本当の意味で覚悟ができていなかった。やらなければいけないことに、心が痛むんだ。覚悟が足りなかったことが…………悔しいんだ)
 彼女は俯く。
「まぁいいでしょう。彼女を捕まえなさい。ただし、顔はなるべく傷つけないでくださいね。誰だか分からなくなったら利用価値がないですから」
 武装アンドロイドたちは慎重に距離を詰める。迫ってくる彼らに小花が動く様子はない。
「諦めていただけましたか?」
(諦めてなんか、ない)
「…………なんだ」
 小花が小さい声で呟く。
「ん? どうかしましたか? お話ならあとで聞きますよ。その時にまだ喋れたらですけど」
(ごめんね)
 そして、武装アンドロイドが小花の目と鼻の先に迫った時。
「それでも! 私が! アンドロイドの私が! 今、やらなきゃいけないんだあああああああ!!」
 彼女は叫んだ。
 その絶叫と同時に人間には知覚不能な領域の音波が発せられる。
 バタバタバタバタ。
 小花を捕縛しようとしていた武装アンドロイドたちが、一斉に地面に倒れた。
 それを見ていた女は目を見開いた。
「強制停止プログラム……? なぜあなたがそんなものを……」
 小花は、立ち上がる。足を引きずりながら、前へと進む。
 すれ違いざまに、女は聞いた。
「あなたは、なぜそこまでして動くんですか?」
「……あなたのおかげで気づいたんです。私が今、やらなくちゃいけないんだって。そうしないと、今いるみんなの命は助けられないから」
 女はため息をついた。
(もう、負けは確定していたみたいですね。一足遅かったです)
 この大きなうねりは、もう誰にも止められない、そう確信したのだ。
(まぁ、別にいいんですけど。そこまでこだわりなんてないですし。負けばかりの私の人生に、また一個負けが追加されただけだから)


 小花を見た人々が驚いた表情をする。火花を散らせながら足を引きずる姿は明らかに異常だ。
(ジャンプした時に、回路がおかしくなっちゃったかな……)
 目眩を抑えながら歩を進める。
「大丈夫ですか!?」
 若い女性が心配して声をかけてきた。
「……大丈夫では……ないですけど……」
「すぐに救急呼びます!」
 その女性を、小花は手で制する。
「ありがとう、ございます……でも、今、ちょっと忙しいので……あとにしてもらえると……助かります……」
 女性はその真意が分からず、呆然と小花を見送る。
(止まってなんか、いられない)
 指定された建物のエレベーターに辿り着くと、そこに乗り込む心花。エレベーターには既に子供連れの女性が地下階から乗ってきていた。女性は壁にもたれかかった小花の姿を見てギョッとし、子供は泣き始めた。
「……大丈夫……大丈夫だよ……みんな、私が守るから……」


「戻ってきたよ」
 最後の階段を上り終え、扉を開けると、髪がなびいた。
「今日は、風、あんまり強くないね」
 穏やかな風が小花の頬をなでる。
「声、張らなくていいのは助かるなぁ……」
 もう一度、彼女は言う。
「戻ってきたよ、山下さんが命を教えてくれた場所に」


 小花はやるべきことを終えると、再び歩き出した。
「まだ、終わってない……」
 既に満身創痍の体を引きずる。
「竹内さんたちを助けなきゃ……」
 彼女は最後の戦いに向かった。


 その日、全世界に向けてある動画が発信された。
 映像に映る少女はとある街のとある屋上で語った。

「私は、三年前、この街で生まれました。アンドロイドの感情導入実験。皆さんもご存知のことでしょう。私は、命を吹き込まれたのです。
 でも、私はその命に気づきませんでした。
 私たちは自らが人間であると教えられ、生活をしてきました。だけど、ある人がこの場所で、私にも命があることを教えてくれました。今から流れる映像は、この街で生まれ、この街で生きたアンドロイドたちの記録です」
 映像が切り替わり、ショートムービーが流れる。
 喜び、泣き、笑って日々を生きるアンドロイドたち。青い空や赤い夕焼けのみが映ることもあった。そのどれもがアンドロイドの目に映った光景だった。人を、自然を慈しむ記録が、彼らが生きていることを物語っていた。
 映像が終わると、再び少女が現れる。
「今、皆さんが見た映像を記録したアンドロイドたちは既にこの世界にはいません。何も知らずに、この世を去りました。私たちは、数年で廃棄されることが決まっているのです。
 人間である皆さんにお願いがあります。どうか、私たちが生きることを許してください。今も、これからも、この命が、皆さんと共にあることを許してください」
 一拍おいて、彼女は言う。
「最後に、一つだけ大切な人にメッセージを残させてください。

 命を教えてくれて、ありがとう」

 彼女の姿が消えると、動画の最後に雨に打たれる少女の絵が映し出された。



 二週間後。
「体はもう大丈夫なの?」
「松葉杖ついてる人に言われたくないかな?」
 胸にコサージュをつけた二人。人間とアンドロイドの少女。
「いや、私はほらしばらく寝たきりだったし」
「私は、大丈夫だよ。何ていうか逆に調子がいいくらい?」
「調子がいい?」
「うん、今までと何か違うような……修理中に竹内さんにイタズラでもされちゃったのかな?」
「…………ちょっと待ってて、区長潰しに行くから」
「や、やめてよ! 竹内さんがいなかったら今私はここにいなかったかもしれないんだよ!?」
「冗談よ」
「顔が笑ってないんだけど」
「私が表情に乏しいのはいつものことでしょ」
「もーまたそんなこと言って~」
 プンスカと怒ったフリをするアンドロイドの少女に、思わず人間の少女が吹き出す。
「片井さんは相変わらずだな……それより、これからどうするの?」
「私はやっぱり絵を描きたいかな。山下さんは?」
「私も小説書くよ」
「絵、描いてあげようか?」
「悩みどころだけど、遠慮しとく。全部、自分の力でやりたいんだ」
 アンドロイドの少女は笑う。
「山下さんらしいな」
「片井さんの方こそ母さんに頼んであげようか?」
「あーそれなんだけど、亜子さんにはもう頼んだんだよ。でも、佐々木さん? っていう人にお願いするって言ってた」
「あーあの人か。確かに母さんは片井さんと一緒で感覚派だから佐々木さんの方がいいかもね」
「知ってるの?」
「うん、ちょっとね。あの二人さっさと結婚すればいいのに」
「え、そういう仲なの!?」
「まぁ、そんなところかな」
「ふーん……」
 チラッと窺うような視線を向けるアンドロイドの少女。
「ねぇ山下さん」
「何?」
「私たちも結婚しちゃおっか」
「失礼だな、私はこんな性格でも女だ」
 ジト目になる人間の少女に、アンドロイドの少女は最近学んだ知識を得意気に言う。
「同姓のパートナーは一世紀も前に認められていまーす」
 人間の少女は呆れた顔をする。
「アンドロイドに人権が認められたらな」
「むーまたそういうこと言う~」
 二人が話していると、もう一人の少女が近づいてくる。
「イチャついてるところ申し訳ないんだけど」
「あ、斉藤さん。どうしたの?」
「また、取材が来てるわよ」
「うげー何も卒業式終わった直後に来なくても……」
「自分でまいた種だから、自分でけじめをつけるのね。頑張って、『アンドロイドの姫君』」
 トボトボと取材陣の元へ向かうアンドロイドの少女を見送って、斉藤と呼ばれた少女が人間の少女に話しかける。
「正直、あなたが人間で、私たちがアンドロイドだっていうの、まだよく分からない」
「だろうね」
「でも、知ってしまったから言えることかもしれないけど、何も知らなければ、私たちは何も知らずに今日廃棄されていた。それはたぶん悲しいことなんだろうなって、そう思う。だから…………ありがとう」
「うん」
 二人で取材中の少女を見守っていると、彼女が手を振る。
「おーい、山下さんも取材したいってー!」
 斉藤理恵は笑う。
「お姫様が呼んでるよ、行ってあげて」
「うん」
 人間の少女、山下加奈はフッと微笑んでアンドロイドの少女の元へ向かう。
 きっと、これからアンドロイドの少女はたくさんの試練にぶつかるだろう。それでも、彼女は泣いて、笑って乗り越えていくだろう。
 でも、それは世界で初めて自ら心を主張したアンドロイドの宿命だ。だから、アンドロイドにとっては短い時間だけれど、しばらくは見守っていこう。
(ま、私も頑張らないとだけど)



「そういう訳だから、娘のことお願いね」
 亜子は電話口にそう念押しする。
『分かったよ。だけど、その娘ってどっちのだい?』
「両方……と言いたいところだけど。今回は私に似てる方」
(頑張るのよ、小花ちゃん)
 亜子は、自身のパーソナルデータを元に作られたアンドロイドの少女に、心の中でエールを送った。
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