春はあけぼの

水戸けい

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身を強張らせた隆敏が平伏した。

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硬く短い声に、宗明が唇に薄い笑みを浮かべた。

「嘘が、付けないな」

「は――?」

「苦労をかける」

「いえ――」

よくわからないという風情の隆敏に、茶で唇を濡らしてから言う。

「養子に、出されたらしいな」

単なる噂話をしているような宗明に、身を強張らせた隆敏が平伏した。

「申し訳ありません」

「おまえの所為ではない。佳枝は、よほどに成明が欲しいらしい」

人の口に戸は立てられない。宗明の耳に、息子が養子に出されたという話が――それを決めたのが国主であり義父であった人物だということが、届いていた。

「子には、悪いことをした」

「宗明様の所為では、ございません」

「隆敏の所為でもない。気に病むな」

「いえ――」

生真面目な、自分を一番に思ってくれる男に心の底からの声をかける。

「おまえが残ってくれているだけで、十分だ」

思わず顔を上げた隆敏が宗明を凝視し、唇を噛んで再び頭を下げた。
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