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それが伝った頬を、アレスティは殴りつけた。
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「フェリス」
鋭い、悲鳴のようなフェリスの声にアレスティがたじろぎ、リューイが宥(なだ)めようと呼びかける。
「アレスは、そんなつもりじゃ……」
「わかってるわ。アレスティが私を憐れんでいるわけでも、自分の母親と同じ出自だからと同情し、慰めようとしてくれたわけでもないって、ちゃんと、伝わってるの。……だから、くやしいの。リューイの気持ちがアレスティに伝わらないことが、くやしいの」
両手で顔を覆い、うずくまって泣き出したフェリスの背中をリューイが撫でる。
「アレスティのことを愛しているから、くやしいの」
肩を震わせ泣き続けるフェリスを挟み、アレスティとリューイが顔を見合わせる。
「アレス……。俺は、一度も君を憐れんだことなんて、無いよ」
ぽつりと、リューイが言った。
「もし、そう見えていたのなら、それは負い目があるからだ。俺が、君の母親を奪ってしまったから――。だから」
リューイが、下唇を噛んだ。
「今でも、夢に見る時があるよ。だんだん冷たくなっていく、あの人の事を。……俺が、あんなところにいなければ、君はあの人を失う事なんて、無かったんだ」
ごめん、とつぶやくリューイの目から涙がこぼれる。それが伝った頬を、アレスティは殴りつけた。
「ぐっ」
倒れ込み、呻くリューイの声に驚き顔を上げたフェリスは口を押え、さらに彼を殴ろうとするアレスティを抑えようと、抱きついた。
「アレスティ!」
「リューイ……。まだ、引きずってんのかよ。もう気にしていないって、言っていただろうが」
「アレスティこそ! 母親はいつも、俺を守ることを最優先にと言っていたから、本望だっただろうって……。代わりに父親が誰かを知ることができたからいいんだって、気にするなって言っていたくせに、知ったことを後悔していたじゃないか!」
「違う。知ったことを後悔していたんじゃない。俺は、くだらない事を言ってくるやつらがムカついていただけだ。――俺が、母親が何と言われていたか、知らないだろう」
「知っていたさ! だからタレンティを教育係に付けてほしいと、お父様に言ったんだ。アレスティの話を、きちんと聞けて向き合える人が欲しいと思ったから」
え、と動きを止めたアレスティの頬に、リューイの拳が叩き込まれた。
鋭い、悲鳴のようなフェリスの声にアレスティがたじろぎ、リューイが宥(なだ)めようと呼びかける。
「アレスは、そんなつもりじゃ……」
「わかってるわ。アレスティが私を憐れんでいるわけでも、自分の母親と同じ出自だからと同情し、慰めようとしてくれたわけでもないって、ちゃんと、伝わってるの。……だから、くやしいの。リューイの気持ちがアレスティに伝わらないことが、くやしいの」
両手で顔を覆い、うずくまって泣き出したフェリスの背中をリューイが撫でる。
「アレスティのことを愛しているから、くやしいの」
肩を震わせ泣き続けるフェリスを挟み、アレスティとリューイが顔を見合わせる。
「アレス……。俺は、一度も君を憐れんだことなんて、無いよ」
ぽつりと、リューイが言った。
「もし、そう見えていたのなら、それは負い目があるからだ。俺が、君の母親を奪ってしまったから――。だから」
リューイが、下唇を噛んだ。
「今でも、夢に見る時があるよ。だんだん冷たくなっていく、あの人の事を。……俺が、あんなところにいなければ、君はあの人を失う事なんて、無かったんだ」
ごめん、とつぶやくリューイの目から涙がこぼれる。それが伝った頬を、アレスティは殴りつけた。
「ぐっ」
倒れ込み、呻くリューイの声に驚き顔を上げたフェリスは口を押え、さらに彼を殴ろうとするアレスティを抑えようと、抱きついた。
「アレスティ!」
「リューイ……。まだ、引きずってんのかよ。もう気にしていないって、言っていただろうが」
「アレスティこそ! 母親はいつも、俺を守ることを最優先にと言っていたから、本望だっただろうって……。代わりに父親が誰かを知ることができたからいいんだって、気にするなって言っていたくせに、知ったことを後悔していたじゃないか!」
「違う。知ったことを後悔していたんじゃない。俺は、くだらない事を言ってくるやつらがムカついていただけだ。――俺が、母親が何と言われていたか、知らないだろう」
「知っていたさ! だからタレンティを教育係に付けてほしいと、お父様に言ったんだ。アレスティの話を、きちんと聞けて向き合える人が欲しいと思ったから」
え、と動きを止めたアレスティの頬に、リューイの拳が叩き込まれた。
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