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思いついたものを、フェリスは布地に施した。

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「えっ」

「おふたりは、オマエを気に入っているようだ。なんとか、してみちゃくれねぇか」

 たのむ、と膝をつかれて頭を下げられ、フェリスは戸惑う。

(でも、アレスティにリューイの気持ちを伝えたい)

 優しい気持ちが届かないことが、悲しかった。

「できるかどうかは、わかりませんが」

 控えめに請け負う事を承諾したフェリスに、タレンティが下げていた頭を上げる。

(こんなに、思ってくれている人たちがいることを、アレスティは気付いているのかしら)

 気付いていないのであれば、教えたい。

(でも、どうやって)

 考えながら、タレンティを送り出す。一人になり、しばらくしてノックがされてメイドが刺繍の道具を運んできた。ありがとうと受け取り、さっそく何を描こうかと考えて、思いつく。

(そうだわ。そうしましょう)

 思いついたものを、フェリスは布地に施した。



 庭の、噴水の前に布を敷き、きらめく光を受ける水しぶきにフェリスは目を細めていた。そこに、二つの足音が近づいてくる。

「フェリス」

 呼びかけられ、にこりとして手招けば、リューイはぎこちなく、アレスティは気まずそうに彼女を挟んで座った。

「庭での昼食の約束を、私がだめにしてしまったから」

 フェリスの前には、サンドイッチと筒に入ったお茶が用意をされていた。

「来てくれて、よかったわ」

 誘いに、二人は乗ってくれないのではないかと心配をしていたが、こうして現れてくれた。それだけでも良かったと、フェリスは胸をなでおろす。

「ずっと、強い雨が降っていたからね」

 庭は、やっと降り終えた雨で強まった土と草の香りに包まれていた。リューイはフェリスに笑いかけ、アレスティは憮然としたまま二人から視線を外している。

(大丈夫……。きっと、大丈夫)

 気まずい空気に、自分を勇気づける。

 来てくれたのだから、きっと大丈夫。

 そう思いながらも話し出すきっかけを見つけられないままに、無言の食事が始まった。
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