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フェリスは熱く渇いているのどを潤した。

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 ガラス戸に目を向ける。雨はまだまだやみそうになく、分厚い雲すら雨の煙に隠されて見ることが出来ない。

 ガラス戸に映る自分の背後に、タレンティの姿が見えた。振り向けば手招かれ、おそるおそる近づく。

「アレスティ様を、叩いたらしいな」

「あっ、それは……」

 目を逸らすフェリスに、怒っているわけでも咎めようとしているわけでもないと、タレンティはフェリスをソファに座るように促す。ローテーブルには、リューイが届けてくれたティーセットが残されたままで、冷めきったお茶に手を伸ばし、フェリスは熱く渇いているのどを潤した。

「隣、いいか」

「あ、はい」

 ソファの端に寄ると、タレンティが腰かける。手を伸ばし、焼き菓子を口に含んで

「甘ぇな」

 呟いた。

「甘いものは、お嫌いですか?」

「嫌いじゃねぇが、好きでもねぇ。リューイ様は、好まれていらっしゃるがな」

「あの……、二人は」

「部屋に、帰っていただいた。残っていても、気まずいだろう」

 頷く。

「何があったか、話しちゃくんねぇか。アンタが、何を思ってアレスティ様を叩いたのかも、な」

 いたずらに誘うような雰囲気のタレンティに、気持ちが和んだ。

「アレスティが、私を妻にしたいと言ってくれたんです。その後にノックが聞こえて誰かに見つかったら困るからと、アレスティはドレスルームに隠れて……。ノックをしたのはリューイで、アレスティの出自の話をしてくれて、彼を許してほしいと言われて。そうしたら、アレスティが怒りながら出てきて……。二人のやりとりを聞いていたら、悲しくなって、すごく苛立って。それで、アレスティを叩いたんです」

「内容を、聞いてもいいか」

「アレスティは、リューイはわかっていないんだって――自分を憐れんでいるんじゃないかって、そんなことを言っていました」

「それで、リューイ様はなんと?」

「否定をしていました。アレスティの言う事を。でも、アレスティは信じなくて……。私、リューイはすごくアレスティのことが好きなんだって、思ったんです。それがアレスティに届いていないことが、くやしくて」
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