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「コイツは、俺のものだ」

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(行為は、優しかったもの)

 初めて受けた愛欲だったが、辛いとは思わなかった。肌身に触れられるごとに、愛おしさが募った。

「フェリス」

 思考に意識を向けていたフェリスは、はっとして目の前の澄んだ瞳を見た。

「困ったことがあれば、何でも俺に相談をして。言いづらいことがあれば、手紙にしてメイドに預けて、届けてくれてもいい。ねぇ、フェリス。俺たちは夫婦になるんだから、隠し事は何も、無いままでいよう」

「リューイ」

 名をつぶやきながら、フェリスの心はアレスティを想っていた。

(私は、アレスティの妻になりたい。いいえ、彼の妻になるのよ。つい先ほど、深く強く誓い合ったのだもの)

 リューイの申し出は、断らなくては。

「ねぇ、リューイ。私は……」

 言いさしたところで、ドレスルームの扉が開いた。

「アレス」

 呆然と、リューイが呟き立ち上がる。苛立ったような顔のアレスティが、ずかずかと大股にソファに近づいた。フェリスの腕を掴み、無理やりに立ち上がらせて唇を乱暴に重ねる。

「ッ!」

「コイツは、俺のものだ」

 低く、唸るようにリューイを睨み付けたアレスティがフェリスを抱きしめる。

「アレス、どうしてここに」

「タレンティに、でっかいワゴンを用意させて、運ばせたんだよ」

「そんなことをしなくても、人目を忍べば来れるだろう」

 はっ、とアレスティは鼻で笑った。

「まだ、わかっていないんだな。両親ともに高貴な血のアンタには、わからないんだろうぜ」

「何が、わからないって?」

「心の底から、俺の言う事を忠実に守ろうとするメイドは、いねぇんだよ」

「そんなことは――」

「アンタに、俺の何がわかる。黙って聞いてりゃあ、俺を憐れんでんのか何か知らないが、よけいな事をコイツに吹き込んで。……何が、目的だ」
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