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ひねったらしい足が、熱を帯びて痛んだ。
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思い切ってガラス戸を開けると、遠い世界の音のように響いていた雨音が、迫るように耳に響く。滝のような雨に怖気づくが、これほどに土砂降りであれば逃げるのには適していると思えた。
(よし!)
唇を引き結び、庭に飛び出す。数歩もいかぬうちに、フェリスはずぶぬれになった。水気を含んだドレスが、彼女を引き止めるように重みを増す。それでも足を止めずに、目に入ろうとする雨を拭いながらフェリスは走った。
――この庭は、フェリスの部屋と俺たちの部屋に面しているんだ。城の裏側にあたる庭でね、時々、あの噴水の傍でパーティーを開いたりするんだよ。
リューイの言葉を思い出しながら、ひたすら走る。城の裏側ならば、衛兵などに見つかる確率が少ないのではないかと、フェリスは考えた。これだけ広い庭なのだから、庭師の入る別の道があるはず。そこを見つけて抜け出せば。
雨は容赦なく降り注ぎ、フェリスの体温を奪って落ちる。うっすらと水のたまった草地は、フェリスの足を滑らせた。
「あっ――」
ばしゃん、と勢いよく倒れたフェリスの背中を雨が叩く。
そのまま、この場に縫い止めてしまうように強く。
起き上がり、走れとフェリスを急かすように、強く。
「っ――!」
下唇を噛み、起き上がる。昨日、リューイが髪に挿してくれた花が雨に打たれて落ち、泥にまみれているのが見えた。雨にけぶる視界が、噴水の姿を捕らえる。その先を、目指さなくては!
「ッ、ぁ」
一歩踏み出し、足首に痛みを覚えてしゃがみこむ。ひねったらしい足が、熱を帯びて痛んだ。
(この雨が、冷やしてくれるわ)
痛みをかばい、堪えながら進んでいく。先ほどよりもずっと進みが遅くなったが、この雨ならば、そうそう見つかることも無いだろう。
(大丈夫、大丈夫)
自分に言い聞かせ、進む。噴水の縁に腰かけ、昨日の記憶を呼び起こす。ここから、アレスティの部屋へ行った。その逆方向に行けば、城から遠ざかるはずだ。
立ち上がり、進み始める。噴水を背に、まっすぐ庭の奥へと向かって。
ぬぐってもぬぐっても、雨が視界の邪魔をする。体は冷えているのに、痛めた足首は熱い。
(よし!)
唇を引き結び、庭に飛び出す。数歩もいかぬうちに、フェリスはずぶぬれになった。水気を含んだドレスが、彼女を引き止めるように重みを増す。それでも足を止めずに、目に入ろうとする雨を拭いながらフェリスは走った。
――この庭は、フェリスの部屋と俺たちの部屋に面しているんだ。城の裏側にあたる庭でね、時々、あの噴水の傍でパーティーを開いたりするんだよ。
リューイの言葉を思い出しながら、ひたすら走る。城の裏側ならば、衛兵などに見つかる確率が少ないのではないかと、フェリスは考えた。これだけ広い庭なのだから、庭師の入る別の道があるはず。そこを見つけて抜け出せば。
雨は容赦なく降り注ぎ、フェリスの体温を奪って落ちる。うっすらと水のたまった草地は、フェリスの足を滑らせた。
「あっ――」
ばしゃん、と勢いよく倒れたフェリスの背中を雨が叩く。
そのまま、この場に縫い止めてしまうように強く。
起き上がり、走れとフェリスを急かすように、強く。
「っ――!」
下唇を噛み、起き上がる。昨日、リューイが髪に挿してくれた花が雨に打たれて落ち、泥にまみれているのが見えた。雨にけぶる視界が、噴水の姿を捕らえる。その先を、目指さなくては!
「ッ、ぁ」
一歩踏み出し、足首に痛みを覚えてしゃがみこむ。ひねったらしい足が、熱を帯びて痛んだ。
(この雨が、冷やしてくれるわ)
痛みをかばい、堪えながら進んでいく。先ほどよりもずっと進みが遅くなったが、この雨ならば、そうそう見つかることも無いだろう。
(大丈夫、大丈夫)
自分に言い聞かせ、進む。噴水の縁に腰かけ、昨日の記憶を呼び起こす。ここから、アレスティの部屋へ行った。その逆方向に行けば、城から遠ざかるはずだ。
立ち上がり、進み始める。噴水を背に、まっすぐ庭の奥へと向かって。
ぬぐってもぬぐっても、雨が視界の邪魔をする。体は冷えているのに、痛めた足首は熱い。
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