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恭平の声を噛みしめるように、譲は目を閉じる。
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「っ、はぁ、はぁ」
家の前へと辿りつき、膝に両手をついて荒い息を整える。目の前にある恭平の家は真っ暗で、玄関灯だけが冬の夜に暖かそうな光を灯していた。
ふうっと胸を大きく膨らませ息を吐き出した譲は、スマホを持ち上げ恭平の番号を呼び出す。気合を入れて通話ボタンを押し、コール音のかわりに設定されている、彼の好きなアーティストの歌に耳を傾けた。
恭平は、もう眠ってしまっているだろうか。眠ってしまっているだろう。恭平のバイト先の就業時間は、自分の働いている居酒屋よりもずっと早いのだから。
「譲?」
音楽が途切れて、恭平の声がした。譲の全身がこわばる。沈黙を返した譲に、恭平がもう一度呼びかけた。
「譲」
恭平の声を噛みしめるように、譲は目を閉じる。
「うん」
「どうして。――ああ、そうか。俺が、会いたいってメールをしたから」
「うん」
恭平の声が聞こえるだけで心地よく、胸がふさがるほどのぬくもりを感じられる。どうしようもないほど好きなんだと自覚をしながら、譲は目を開け恭平の部屋の窓に目を向けた。電気は、点いていない。
「家に、いないの?」
「いや。なんで」
「電気、点いてないから」
呟けば、見上げる窓に明かりが灯り、カーテンが引かれ窓が開き、恭平が顔を出した。譲が片手を上げて振れば、すぐに恭平が引っ込む。スマホから恭平の急ぐ足音が届き、鍵を開ける音がして
「譲っ!」
寝巻のままの恭平が、玄関から飛び出した。
「会いに来た」
笑いかければ、恭平に体当たりをされた。そのまま抱きしめられて、抱きしめ返す。
「話したいことがあるんだ。譲に、言わなきゃいけねぇ事がある」
譲の肩に顔をうずめた恭平の髪に頬をすり寄せ、譲はうっとりと目を細めた。
「俺も」
体を離し微笑みあえば、恭平がくしゃみをする。
「ちょっと待ってろ。すぐ着替えてくる」
「うん」
家の中に戻りかけた恭平が足を止め、振り向いた。
家の前へと辿りつき、膝に両手をついて荒い息を整える。目の前にある恭平の家は真っ暗で、玄関灯だけが冬の夜に暖かそうな光を灯していた。
ふうっと胸を大きく膨らませ息を吐き出した譲は、スマホを持ち上げ恭平の番号を呼び出す。気合を入れて通話ボタンを押し、コール音のかわりに設定されている、彼の好きなアーティストの歌に耳を傾けた。
恭平は、もう眠ってしまっているだろうか。眠ってしまっているだろう。恭平のバイト先の就業時間は、自分の働いている居酒屋よりもずっと早いのだから。
「譲?」
音楽が途切れて、恭平の声がした。譲の全身がこわばる。沈黙を返した譲に、恭平がもう一度呼びかけた。
「譲」
恭平の声を噛みしめるように、譲は目を閉じる。
「うん」
「どうして。――ああ、そうか。俺が、会いたいってメールをしたから」
「うん」
恭平の声が聞こえるだけで心地よく、胸がふさがるほどのぬくもりを感じられる。どうしようもないほど好きなんだと自覚をしながら、譲は目を開け恭平の部屋の窓に目を向けた。電気は、点いていない。
「家に、いないの?」
「いや。なんで」
「電気、点いてないから」
呟けば、見上げる窓に明かりが灯り、カーテンが引かれ窓が開き、恭平が顔を出した。譲が片手を上げて振れば、すぐに恭平が引っ込む。スマホから恭平の急ぐ足音が届き、鍵を開ける音がして
「譲っ!」
寝巻のままの恭平が、玄関から飛び出した。
「会いに来た」
笑いかければ、恭平に体当たりをされた。そのまま抱きしめられて、抱きしめ返す。
「話したいことがあるんだ。譲に、言わなきゃいけねぇ事がある」
譲の肩に顔をうずめた恭平の髪に頬をすり寄せ、譲はうっとりと目を細めた。
「俺も」
体を離し微笑みあえば、恭平がくしゃみをする。
「ちょっと待ってろ。すぐ着替えてくる」
「うん」
家の中に戻りかけた恭平が足を止め、振り向いた。
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