36 / 110
「あ。このカップルランチ、ください」
しおりを挟む
「う」
赤くなった譲の手を取り、クスクス鼻を鳴らしながら、女装した恭平が腕を引く。
「行こう。ちょっと早いほうが混まないから」
「ああ、うん」
引かれるままに歩く譲は、女装した恭平のうきうきとした背中を見つめる。恭平と、本当に本当のデートをしているんだと噛みしめれば、心がふわりとくすぐったくなり、譲の頬がゆるんだ。
「ここ」
恭平に手を引かれるままに連れて行かれたのは、小洒落たカフェだった。ランチプレートがどうのと大きなメニュー黒板に書かれている。
「ここの、ランチが食べたいんだけど」
上目づかいに、甘えるように小首をかしげる恭平はかわいらしすぎて、譲は心臓が破裂してしまわないように気をつけながら、頷いた。
「ふふ。ありがと」
肩をすくめた恭平が、店員に二名だと告げる。案内をされるまま席に着いた譲は、こんな店に入るのは初めてで、物珍しげに店内を見回してしまう。恭平とデートをしているのだということも重なって、そわそわと尻の座りが落ち着かなかった。
「メニューがお決まりになりましたら、お呼びください」
「あ。このカップルランチ、ください」
さらりと注文した恭平の口から飛び出たカップルという言葉にぎょっとして、譲はあわててメニューを見る。ランチ限定メニューのところに、二名様分のパスタとサラダにスープ、パンの食べ放題と書かれた『カップルランチ』があった。
「パスタとサラダ、どれがいい?」
「え。あ、俺はよくわからないから、きょ……薫の好きなのでいいよ」
「ありがと。じゃあパスタは魚介とトマトので、サラダはシーザーで。食後のドリンクとデザートは、どれにする?」
「ん。それも、まかせる」
「もう。じゃあ、私は」
すっかり女言葉と態度を身につけ自然に振る舞っている恭平を、譲はぼんやりと見つめた。
手馴れているのは、幾度もこういう場所に彼女と来たことがあるからだろうな。
そう思った瞬間ズキリと走った嫉妬の痛みに、譲は片目を細めた。
「譲?」
「なんでもない」
水に手を伸ばした譲は、落ち着けと念じながら口をつける。嫉妬をする必要も資格も、自分には無いと言い聞かせて水を飲み干し、息をついた。
赤くなった譲の手を取り、クスクス鼻を鳴らしながら、女装した恭平が腕を引く。
「行こう。ちょっと早いほうが混まないから」
「ああ、うん」
引かれるままに歩く譲は、女装した恭平のうきうきとした背中を見つめる。恭平と、本当に本当のデートをしているんだと噛みしめれば、心がふわりとくすぐったくなり、譲の頬がゆるんだ。
「ここ」
恭平に手を引かれるままに連れて行かれたのは、小洒落たカフェだった。ランチプレートがどうのと大きなメニュー黒板に書かれている。
「ここの、ランチが食べたいんだけど」
上目づかいに、甘えるように小首をかしげる恭平はかわいらしすぎて、譲は心臓が破裂してしまわないように気をつけながら、頷いた。
「ふふ。ありがと」
肩をすくめた恭平が、店員に二名だと告げる。案内をされるまま席に着いた譲は、こんな店に入るのは初めてで、物珍しげに店内を見回してしまう。恭平とデートをしているのだということも重なって、そわそわと尻の座りが落ち着かなかった。
「メニューがお決まりになりましたら、お呼びください」
「あ。このカップルランチ、ください」
さらりと注文した恭平の口から飛び出たカップルという言葉にぎょっとして、譲はあわててメニューを見る。ランチ限定メニューのところに、二名様分のパスタとサラダにスープ、パンの食べ放題と書かれた『カップルランチ』があった。
「パスタとサラダ、どれがいい?」
「え。あ、俺はよくわからないから、きょ……薫の好きなのでいいよ」
「ありがと。じゃあパスタは魚介とトマトので、サラダはシーザーで。食後のドリンクとデザートは、どれにする?」
「ん。それも、まかせる」
「もう。じゃあ、私は」
すっかり女言葉と態度を身につけ自然に振る舞っている恭平を、譲はぼんやりと見つめた。
手馴れているのは、幾度もこういう場所に彼女と来たことがあるからだろうな。
そう思った瞬間ズキリと走った嫉妬の痛みに、譲は片目を細めた。
「譲?」
「なんでもない」
水に手を伸ばした譲は、落ち着けと念じながら口をつける。嫉妬をする必要も資格も、自分には無いと言い聞かせて水を飲み干し、息をついた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
すれ違い片想い
高嗣水清太
BL
「なぁ、獅郎。吹雪って好きなヤツいるか聞いてねェか?」
ずっと好きだった幼馴染は、無邪気に残酷な言葉を吐いた――。
※六~七年前に二次創作で書いた小説をリメイク、改稿したお話です。
他の短編はノベプラに移行しました。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
その日君は笑った
mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。
それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。
最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。
※完結いたしました。
閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。
拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願い致します。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる