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7.王子様はいじわる?

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「モデル……?」

「昨日、モデルになるって言っていただろう。本物を知らないから、現実離れした胸を描くんだって。ちょうどいい。次の仕事は裸体なんだ。いまから、じっくり観察させてもらうよ」

 淫靡な悪寒に襲われて、頼子の心臓が硬くなる。さわやかな気配を消した弘毅は、別人に見えた。

(でも、これは弘毅さんだ)

 自分の知らない弘毅が目の前にいる。それをいまから体験するんだと、頼子は覚悟を決めてうなずいた。

「なんでも、弘毅さんの好きなようにしてください」

(そして私に反応して)

 現実の女にも興味を持ってもらえるチャンスだと、頼子は弘毅をまっすぐに見返した。

(昌代さんの恋愛運、わけてもらったんだから大丈夫)

 緊張のあまり息が荒くなった頼子の鼻が、弘毅の唇にそっと噛まれる。バクバクと激しく脈打つ心臓が、皮膚を破って飛び出してしまわないかと心配になる。頭の中まで動悸で埋め尽くされている。

 弘毅の唇に軽く鼻を吸われて、舐められる。唇はまぶたに移動し、頬に落ちて耳朶に触れた。耳の中に舌を入れられ、肌がゾクリと淡く震える。

「っふ」

 ちいさな息が口から漏れて、頼子は恥ずかしくなった。どうすればいいのかわからなくて、指を握った。形を確かめるように耳を唇で挟まれたり舌でなぞられたりすると、緩慢な刺激に肌が粟立った。

「は……っう」

 かすかな息がせり上がっては、頼子の唇から外に出る。弘毅の手が頬に触れて、親指で唇をくすぐられた。目を閉じた頼子の体が、小刻みに震えている。弘毅の指は頼子の唇をめくって歯に触れた。そのまま奥へと入り込み、舌の表面を撫でられる。

 唇を開かされた頼子は、わずかに顎を持ち上げた。弘毅の指が増えて、口の中をまさぐられる。唾液があふれて、反射的に飲んだ頼子は弘毅の指を吸ってしまった。

「っ、あ」

 女のものとはあきらかに違う、節くれだった長い指に、下腹部がわなないた。じんわりと熱くなった脚の間に、甘痒いうずきが生まれる。

(私、感じているんだ)

 たったこれだけの行為で、感じてしまっている。知らない自分を弘毅に引き出されている。

 ほんのすこし、怖くなった。

(でも、逃げられない)

 逃げたくない。相手が弘毅だから。与えてくれているのは弘毅だから。なにより、自分に興味を持ってもらえたことが、とてもうれしい。

「ふ……っ、ん、ぅ、はぁ」

 口の中を指で探検されて、飲みきれなかった唾液が口の端からこぼれた。それを弘毅の指が追い、首を滑って鎖骨に触れる。ブラジャーの上から乳房に手のひらを添えられて、ピクリと震えた頼子の反応を確かめているのか、弘毅の視線は頼子の顔に注がれていた。目を開ける勇気がなくて、頼子は目を閉じたまま弘毅の愛撫を受ける。

 手のひらで胸のおおきさを確かめているのか、弘毅の両手はブラジャーごしに乳房をさすっている。布越しの刺激はもどかしくて、頼子の胸の先が存在を主張しはじめた。ブラジャー越しならわかるはずもないけれど、とても恥ずかしい。

 頼子はわずかに身じろいだ。ブラジャーのストラップがずれて、片方が落ちる。弘毅の指がストラップにかかり、両方を落とされた。乳房を包んでいた手が背中にまわり、ホックに触れる。プッとちいさな感触があって、アンダーがふわりと浮く。そこに弘毅の指が入って、ブラジャーが持ち上げられた。カップが胸の上に置かれる。

(見られてる)

 弘毅に、胸を。

 鼓動がさらに激しくなって、脚の間のうずきが強まった。頼子はゴクリと喉を鳴らして、熱い息の塊を天井に放つ。

 弘毅の手は下から乳房を支えるように添えられて、やわらかなそれを崩さないよう、丁寧な手つきで包んだ。大きな手にすっぽりと包まれた頼子の胸は、熱い弘毅の手のひらにゼリーのように揺らされる。長い指の間に挟まれた乳頭が、揺れにあわせて擦れるのがたまらない。

「は、ぁ……あ」

 自分のものとは信じられない、甘やかで切ない呼気をこぼした頼子は、太ももをわななかせた。そこを開きたいのか閉じたいのかが、わからない。どちらも正解で、どちらも間違いであるような気がする。

「あ、ぅう」

 乳頭をつままれて、頼子はうめいた。指は小刻みに動いて、胸の色づきの外周をなぞったり、先端を押したり揺らしたりしている。淡々とした刺激は物足りなくて、弘毅の指を意識させられる。ゆるやかな愛撫は乳房や先端を通して、弘毅の手のひらの大きさや指の硬さ、長さを頼子に伝えてきた。下半身のむず痒さが増して、堪えるために脚に力を込めると、じんわりとショーツが濡れた。

「は、ぁ……っ、ふ、ぅう」

 体中から力が抜けていく。脚に力が入らなくなり、しっとりと濡れた下肢の狭間を意識した。

「んっ、ふ」

 乳房から離れた手が、脇腹をなぞってズボンに触れた。ジーンズのボタンを外され、ファスナーを下ろされる。

「腰、浮かせて」

 息交じりの弘毅の声に、ブルッと腹の奥が震えた。コックリと了承した頼子が腰を浮かせると、下着ごとズボンがずらされる。それほどかわいくないショーツだったから、見られなくてよかったなんて、場違いな感想が浮かんだ。

 それよりももっと重要な部分が、弘毅の目にさらされたというのに。

 スルスルとズボンも下着も脱がされて、胸の上に置かれたブラジャー以外に、頼子の肌を隠すものはなくなった。膝を折られて広げられ、恥丘を見つめられる。弘毅がどんな顔をしているのか、知りたいけど知るのが怖い。

(昨日は、あんなに大胆に弘毅さんのものを見ていられたのに)

 昨夜の弘毅も、こんな気持ちだったのだろうか。

「あっ」

 下生えをかき分けられて、秘裂に指を擦りつけられる。

「すこし、濡れているね」

「っ、ん……ぁあ」

 太ももの狭間にある秘密の場所に、弘毅が触れている。その事実にめまいがした。弘毅の指は肉の扉を下から上へと何度も撫で上げ、たまにつついて感触を確かめている。ほんのりと淡く、けれど間違いなく淫靡な刺激に頼子の胎内はとろけて、愛蜜をこぼした。ゆっくりとほとびていく部分を、弘毅はどんな気持ちで愛撫しているのだろう。

 羞恥よりも興味が勝って、頼子は薄目を開けた。

「ぁあ……っ」

 指が秘裂を開いて奥へと進む。薄目に映った弘毅の瞳は、淫らに濡れていた。薄く開いた唇から、熱っぽい息が漏れている。彼の肉欲がどうなっているのかは見えないが、まちがいなく弘毅は興奮している。

(私を見て、あんな顔をしてくれているんだ)

 うれしくて、気持ちのすべてが弘毅に流れる。羞恥もなにも消え失せて、魂ごと彼にゆだねた頼子の肌は過敏になった。

「ふぁっ」

 ヒダをかき分けて深く沈んだ指が、頼子の隘路を細やかに出入りする。いままで味わったことのない感覚は、気持ちがよくてもどかしい。たまらなくなった頼子の腰が無意識に揺れた。顔を上げた弘毅と目があう。

「あっ」

 獣じみた劣情が、弘毅の目の奥で燃えている。頼子は唇がさみしくなった。薄く開いて求めると、弘毅の顔が近づいてかぶさった。ついばみ合うと弘毅の顔は胸に落ちて、胸の先を口に含んだ。舌でチロチロとはじかれて、頼子はあえぐ。

「ぁ、はっ、はぁ、あっ、あ」

 隘路の指は速度を上げて、頼子の奥から愛液を引き出した。濡れそぼったそこは滑りがよくなり、受ける快感も肥大して、頼子は脚を大きく開くと弘毅の頭を抱きしめた。

「はっ、ぁあっ、あ……あっ、ああっ、あ」

 弘毅の親指が秘裂の前方に潜り込み、ちいさな突起を押しつぶす。

「ひっ、ぁあっ」

 目の奥に火花が散って、頼子はのけぞった。指が抜き差しされるのとおなじリズムで、過敏な花芽がはじかれる。

「ぁあっ、あ、はぁあ……っあ、ううっ」

 体中から力が抜けているはずなのに、腰が揺れる。自分が揺らしているのか、抜き差しされる指に動かされているのか、わからない。ただ気持ちがよくて、もっとしてほしくて、頼子はせり上がる嬌声を放ち続けた。

「ふあっ、あああっ、ああ……っは、ぁあ、あっ」

 胸にしゃぶりつく弘毅がいとおしくて、もっと強く吸ってほしくて、体をまるめて弘毅の頭を抱きかかえた。肌が汗でしっとりと濡れて、それ以上に下肢は愛液でトロトロになっていて――。

「ああっ、ダメ」

 得体の知れない波が頼子に迫った。

「っ、くる……ああ、なにか……っ、わからないのが……ぁあっ」

 快楽と恐怖に襲われた頼子は、いやいやと首を振った。すると弘毅はスッと頼子から離れた。

「――え」

「もう、こんなことはしないほうがいい」

 冷静な声に、淫欲にあぶられていた頼子の肌はとまどった。顔を伏せた弘毅に背中を向けられ、頼子は呆然とする。

(なんで)

 ここまで来て、どうして最後までしないのだろう。あっけなく止めてしまえるほど、自分には魅力がないのだろうか。やはり二次元の美少女がいいのか。

 ムラムラと怒りと悲しみ、くやしさが湧き上がる。気だるい体に力を入れて、弘毅の背中に体当たりした。

「わっ」

 前に手を伸ばして、弘毅の股間を握れば硬くなっていた。

(こんなになっているのに)

 それなのに、途中で止めるなんて。

「モデルになれって言ったのに、観察するだけでデッサンもしないんですか」

「ちょ、頼子ちゃん」

「モデルになってもらうって言ったじゃないですか。じっくり観察するって。私、弘毅さんの好きにしてくださいって言いましたよね。仕事のモデルにちょうどいいって、言いましたよね? だったら、ちゃんとしてください」

 なにを“ちゃんとして”なのか、把握するより先に言葉が出ていた。手の中の弘毅はとても硬い。こんなに大きくしているのに、どうして離れたのか。弘毅の気持ちが知りたくて必死だった。

「弘毅さん」

「……わかった」

 吐息交じりの了承とともに、腕を掴まれる。

「離してくれないと、なにもできない」

 逃げられるのではと疑いながら、頼子はソロソロと弘毅を離した。弘毅はデスクの棚からスケッチブックを取り出して、部屋の隅を顎で指した。

「そこに座って壁にもたれて」

 鉛筆を持った弘毅に命じられ、頼子はぺたりと座った。

「膝を立てて、脚を開いて」

 命じられるままにポーズを取ると、弘毅が鉛筆を走らせる。まっすぐに見つめられる頼子の肌は、羞恥の熱にあぶられた。

(さっきは平気だったのに)

 淫らなことをするのと、モデルになるのは違うのだと肌で知った。

 紙の上を鉛筆が走る音がする。シュッシュッという音の数だけ淫蕩の余韻は薄れ、羞恥がふくらむ。ざっと描き上げたらしい弘毅がページをめくり、次のポーズを注文した。

「寝転んで。腕は顔の横。肘も膝も天井に向けて折り曲げて。脚はすこし開いて。そう、そのまま」

 ふたたび鉛筆を動かす弘毅を、頼子は見つめる。ヒクリと脚の間が動いて、それを見られているのだと意識した。すると、沈下していた快感がゆっくりと戻ってくる。トロリと下肢に淫らな液がにじむ。それも弘毅に見られている。落ち着きかけていた肌の火照りが舞い戻り、うっすらと桃色に染まっていく。胸の先がまたうずいて、触れてほしくなった。

「……は」

 熱っぽい息が、じんわりと膨らんで喉を通った。弘毅は真剣な顔をして鉛筆を動かしている。紙をめくって立ち位置を変え、頼子の姿を描写している。

「んっ」

 またトロリと愛蜜があふれた。触れられていないのに濡れるなんてと、頼子は震える。羞恥の奥にひそんでいた淫靡な興奮が、じわじわと頼子を苛む。足指を握りしめ、手指をまるめて口を閉じ、息を詰めると全身に力を込めた。

「頼子ちゃん」

 静かな声に、ドクドクと心臓が激しく動く。弘毅の気配が近づいて、頬に手が触れた。呼気が唇に触れて、キスをされる。舌でつつかれ口を開くと、ぬらりと舌が口腔に入ってきた。

「んっ、ん」

 そのまま深く口づけられて、口内をあやされた頼子の体から力が抜ける。胸に手を乗せられて、乳房の外側から内側に向けてもまれると先端が切なく痺れた。そこをつまんでもらいたい。けれど弘毅の指は色づきの外周に触れるばかりで、その中心にはあたらない。もどかしくてたまらないけれど、自分でねだれるほど大胆にはなれない頼子は弘毅の肩を掴んだ。

「ふっ、んぅっ、んぅうっ」

 舌を吸われて、鼻にかかった鋭い嬌声が漏れた。舌の根元から下肢へと淫らな電流が走り、ジワッと漏れた愛液が尻に垂れる。はしたなく濡れそぼっている自分を、弘毅はどう思っているのだろう。

「んぅっ、うう……ふぅっ、う、うう」

 弘毅の興奮が知りたくて、頼子は手を伸ばした。触れようとした手が掴まれて、顔が離れる。

「あっ」

「モデルは、動かないものだよ」

 かすれた弘毅の息は熱っぽく、瞳は艶やかに濡れている。それだけで、弘毅の興奮が伝わった。昨日の味を思い出し、あんなふうになっているのか確かめたくなる。

「弘毅さん」

 手が離される。弘毅は後ろを向いて、服を脱いだ。裸身の弘毅を、頼子はぼんやりとながめる。ほどよい筋肉でおおわれたバランスのいい肉体に、恍惚の吐息がこぼれた。キュッとしまったお尻から、すらりと伸びた足の筋肉を見つめていると、弘毅が振り向いた。腰のものが隆々とそびえている。

(あんなに、大きく)

 心臓が痛いほどに高鳴って、頼子は胸の前で指を組んだ。弘毅の手がそれを外し、乳房を掴む。彼の唇が右胸に落ちて、存在を主張している部分に触れた。

「はっ、ぁ、あ」

 求めていた刺激を与えられて、頼子は首をのけぞらせた。左の乳頭を親指ではじかれて、プルンと乳房が揺れた。脚の間はますます濡れて、ヒクヒクとうごめいている。

(ああ、私……こんな、こんな……っ)

 自分がこんなに淫らだなんて、知らなかった。弘毅の愛撫はどこまでももどかしくて、肝心の場所には触れようとしない。

「は、ぁあ……っ、あ、ああ」

 あんなに大きくしているのに、服まで脱いだのに、弘毅は最後までする気はないのか。男の人は女性よりも性欲に素直だと、ファッション雑誌のコラムにあった。だとしたら、この状況はどういうことだろう。

(冷静さが残るくらい、私の魅力が足りてないってことなのかな)

 官能に身もだえながら、心を切なく震わせる。

「ふ……ぁ、弘毅さ……ぁん」

 彼の熱が欲しくて呼べば、弘毅の背中がふくらんだ。体をまるめた弘毅の下肢が、ツンッと軽く頼子の扉をつつく。それだけで、頼子は気を失いそうになった。

「ああっ」

 男の穂先で扉をなぞられ、頼子は小刻みに嬌声を放った。自然と腰が揺れて、彼の動きにあわせてしまう。理性が溶けていくのがわかる。淫蕩の波が頼子のすべてを包んで濡らす。

「は、ぁあ……ああっ、あ、弘毅さん……っ」

 ズ、と扉が開かれた。弘毅の熱はすこし進んでは抜けて、すこし進んでは抜けてと、ヒダを亀頭で探っている。入り口ばかりを擦られて、頼子の奥がうらやましいとうったえた。

「んっ、ぅ、う」

 もっと奥に欲しい。そう願うのに弘毅は入ってくれない。ヒダの間を動いていた穂先が角度を変えて、先端が女の花芽を押しつぶした。

「っ、はぁああ!」

 花芽が穂先の切れ目と擦り合わされると、頭の中で火花が散った。ぬるぬると秘裂に幹が擦りつけられて、先端に花芽を突かれる。頼子は尻を浮かせて腰をくねらせ、脳髄が痺れるほどの快楽を味わった。

「は、はぁあうっ、あ、んぁあっ、あ、ああ」

 濡れた音が耳に届く。激しく荒い弘毅の息が肌に触れている。うれしくなって、頼子は弘毅の肩を掴んだ。

(奥に……欲しい)

 入り口ばかりではなく、深い場所を弘毅で埋め尽くされたい。そう願うのに、弘毅の角度は変わらない。いくら体を揺らしても、深く刺さりそうな角度になると、弘毅はさらりとかわしてしまう。

(どうして)

 だけど、気持ちいい。

 そんな望みすら溶け切るほどの官能にみまわれた頼子は、強く花芽を押しつぶされて高い悲鳴を上げた。

「ひっ、あぁあああッ!」

 叫びと共に下肢が締まって、扉がわななく。それに刺激された弘毅がはじけて、ほとばしりが花芽に振りかけられた。

(ああ――弘毅さん)

 意識が白い空間に飛び上がり、広がった。浮遊感の後に気だるさがやってきて、頼子は胸を荒く上下させながら目を閉じる。艶やかな余韻が体を包んでいる。しっとりと汗ばんだ肌のつながりに、心がふっくらとあたたまった。

(私で、弘毅さんが)

 奥ではなかったけれど、それでも自分で絶頂を迎えてくれたのだと、しあわせな心地につつまれる。

 弘毅の体温が離れて、閉じていた目を開けると苦みの交じったやさしい笑顔がそこにあった。

「疲れただろう。そのまま、眠ってしまえばいい」

 トントンと緩慢なリズムで胸を叩かれて目を閉じた頼子は、湿り気のある重い幸福の余韻にうながされるまま眠りに落ちた。
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