白い息吹とココロの葉

カモノハシ

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 私は慌ててうつむいた。涙でにじんで、彼の笑顔がぼやけたからだ。
 優しいのは、ラーシュの方だ。こんな時でも、私の心配をしてくれる。私は、自分のことばかり考えていたのに。
 それに、彼と一緒にいて、よくわかった。
 私は、ずるくて臆病だった。苦手なのだと言い訳をして、誤解されても、それを解く努力をしてこなかった。ただ諦めて、口をつぐんだ。心を閉ざして、他の人と距離を置いた。
 ラーシュに対しても、そうだ。誤解されたり、嫌われたりする前に離れようとした。何も告げずに、一方的に。
 でもそれは、無理だったのだ。今度ばかりは、諦めたくない。
「……ねえ、ラーシュ。明日からも、ここに来ていいかな? もう、心の声は聞かないし、聞こえないと思うけど……」
 心が読めなくなったって、英語で会話できなくたって、きっと心は望んでしまう。
 どんな形であれ、彼と気持ちを通じ合わせたいと願ってしまう。
「もちろん。だから、言葉がある。そうだろ?」
 そっと顔を上げると、ラーシュは変わらぬ微笑みで頷いてくれた。
 この願いが彼への想いだとしたら、もう種は芽吹いてしまった。これからは、どんなに抑えようとしても、心を栄養分にして育っていくだろう。やがて、葉が出て開いたら、どうか見てほしい、気づいてほしいと、蔓を伸ばしてしまうだろう。
 たとえ、言葉が足りずに誤解を生むとわかっていても。
 それでまた、傷つくかもしれないとおびえながら。
 それでもなお、諦めずに言葉を尽くせば、きっと、今までとは違う関係も築けるから。
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