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香澄の復活の件で天界は大きく揺れていた。
北は『本人が切望している』と言う理由で復活を強く後押ししていた。
『魔界の影響が大きい』と言う理由のみで反対を推し進めている東ではあるが、反対する理由にしてはちょっと弱い。形勢は北に有利な方向に進んでいた。
そんな中、騒ぎを聞きつけた西のマリタノーミと南のコウメが参戦して香澄の復活問題は一気に天界全体の問題として取り上げられる事になった。
「問題は トーテンブル様が間中香澄を利用しようとしている事ではありませんの?」
「利用?...これは意な事を仰る。部下の報告では間中香澄は修行最終者との事。然るべき対策を立てて無事に天界人にバックアップする事の何が『利用』と言う言葉になるのか...」
「解りかねると?」
今、論争をしているのは南のコウメと北のトーテンブル。
「では 間中香澄が天界人になった暁には彼女の身柄は南の管轄で宜しいんですね?」
「間中香澄は、北が天界の不安定な状況から助け出して 今は心健やかに毎日を過ごしているとの報告が上がっております。彼女の身柄は北が預かるのが筋でしょう?」
「彼女の存在に気が付いて 彼女の身を案じてタグ付けしたのは ウチのシャルラですが...それを考えると東で身柄を預かるのが本当では?」
東のエッセが口を挟む。
「その東を彼女は1番怖がっているのですよ?」
「それは東の本当の姿を知らないからではないですか?ある事ない事並べられて 嘘ばかりを吹き込まれれば そりゃ誰だって怖がりますよ」
「北が彼女に嘘を言っていると仰りたいのですかな...?」
トーテンブルが威嚇するかの様に 唸る様な声を出した。
「嘘と言うより脅しじゃございませんの?彼女はまだ人生経験も浅く、判断基準が浅く狭い。もっと色々な事を見せてから判断されるべきかと思います」
西のマリタノーミも参戦。
「皆様は、間中香澄の復活に反対だと仰りたいのでしょう?彼女は天界人になるべきなんじゃないですか?何と言っても本人が切望してるのですから」
「それは本当に本人が切望してるのでしょうか?」
「今度は私が嘘を言ってると言うんですか?...話にならないな」
トーテンブルが わざとらしくため息をついた。
「話にならないのはこちらのセリフですよ。間中香澄をこの場に呼ぶべきです!」
「その前に、トーテンブル様。私 黒羽族の生き残りが居たという話を小耳に挟みました」
「私もです。本当なんですの?」
「しかも2人は恋人同士とか...トーテンブル様。北は『天界の改革』を盛んに仰ってますが...もしかして『天界と魔界の融合』を考えてらっしゃるんじゃありませんの?」
コウメがトーテンブルに詰め寄る。
「『魔界と天界の融合』なんて絶対にあってはならない。そんな事をしたら魔界と天界と人間界のバランスが崩れて大変な事になってしまう!」
「何を時代遅れな事を仰ってるんですか...。魔界と天界を自由に行き来できる種族が居て、魔界の問題にも天界の問題にも大きな力で対処する事が出来る。いわば抑止力ですよ。今の天界には力が無い。その問題を解決する為の大きな希望じゃないですか」
「それは本当に天界と魔界の為ですの?私が聞いた話だと、何やらトーテンブル様が神に成り代わる為の足掛かりだと聞きましたわ」
「私が神に?とんでもない!!私を慕って、私の考えに賛同してくれる同士が沢山集まって居るだけですよ」
「その抑止力とやらの為に 間中香澄が犠牲になると言っているのです。彼女は天界人になるべきではない!」
「彼女が望んでいるのに...」
「とにかく、この場に間中香澄を呼ぶべきです」
香澄は復活に賛成するしかないと考えて、北の生活を大人しく受け入れていた。
毎日『天界と魔界の融合』がどんなに素晴らしい事なのかを散々聞かされて少々ウンザリしているが...。
「トーテンブル様の素晴らしい考え、トーテンブル様の素晴らしい行い.....」
もうテキストなんて見なくても 一字一句 間違うこと無く話す事も出来る。
北では、トーテンブルを殆どの人が神として崇め奉っている程の蕩心ぶりに 香澄は少々引いている。しかしそれでも北から出ないのは、東に捕まったらラジルドに会えなくなる...と言われて それを信じてしまったからだった。
北で魔界は悪とされている。黒羽族を絶滅に追いやって憎むべき相手で敵だった。しかし香澄は違う。香澄は魔界の人達が 優しくて 親切で 思いやりに溢れている事を知っていた。だからいまいち 北の考えが受け入れられない。
唯一、黒羽族の生き残りであるラジルドも 魔界人を憎んでいない。それなのに 天界の人達が魔界人を敵視するのもどうなんだろう...。と 香澄は1人、冷ややかな気持ちでそれを毎日のように聞いていた。
何か違う様な気がする...。
香澄は、噴水のヘリに座って花を眺めながらそんな事を思っていた。その時、
「間中香澄さん、第1講解室に呼ばれてます」
『?』
第1講解室ってなんだ?そう思いながら
「え?あ...はい。」
そう言って立ち上がり、声を掛けてきた女の人に付いて行こうとした。
スタスタと歩いて行き、あっさり北の扉から出て行こうとする女の人に慌てて声を掛ける。
「あの...すみません。北から出るんですか?」
香澄がおずおずと聞くと
「はい。第1講解室は中央区にありますので...此処から出ないと行けないのですが...」
そうあっさり言われてしまった。
「あの...本当に?本当に 第1講解室って所に行くんですか?」
「はい。只今、四天長の話し合いが行われていて 香澄さんはそこに呼ばれています」
「........」
信じても良いのだろうか?
そう言いながら東に連れて行くのではないだろうか.....?
香澄は疑いの眼差しで その女の人を見ていた。
「何か心配事でも?」
そう言われても これ以上の言葉が見つからない...。
「いえ...解りました」
観念して 案内人に付いて行くしかない香澄だった。
案内されてたどり着いた場所は 本当に『第1講解室』だった。
仰々しい扉と言うか...。神々しい扉と言うか...。
香澄は心の中で『疑ってごめんね...』って案内人に謝りながら 開けられたその扉の中に恐る恐る入って行く。非常に落ち着かなかった。
「間中香澄さん来られました」
そう言われて、心臓が急にドッキンドッキン言い出して なんだか息が苦しくなった。
『なに?なにが起こってるの?』
落ち着きなく まわりをキョロキョロと見回すと、そこには 天使が4人座っていた。
まさに天使。頭上にちゃんと金色に光る輪っかがあった。
天使って、子供で 上半身裸とかで プニョプニョしてて プリプリしてるんじゃないんだ...って香澄は初めて知った。
「間中香澄さんですか?」
ヒゲの似合うダンディな感じの男の人に聞かれて「はい」と答えた。東のエッセだった。
「今から聞かれたことに 嘘偽りなく答えられますか?」
そう言われて「はい」とまた答えた。
正直、香澄の心の中は『怖い...怖すぎる...』と叫んでいて、足がガクガク震えている。
「単刀直入に聞きますね。貴女は、天界人になりたいですか?」
直球だった。
香澄は言葉に詰まった。
『どう答えれば良いのだろう...。』
そう思っていると、香澄の立っている場所と向かいに座っている男の天使が頷いている。北のトーテンブルだ。
「あの...天界人にならないと魔界には行けないんですよね?だったら私は 天界人になりたいです」
正直な気持ちを言うと、向かいに座っている男の人の顔が強ばった。
「貴女は東の事を何と聞かされていましたか?」
エッセが質問を続ける。
「何と...って言われても...。保守派?だって聞きました」
「何か脅されるような事を言われませんでしたか?」
「脅す?.....?」
香澄は考えた。
「あの...緊張してて...おっ...思い出せません....」
「そうですよね。急にこんな所に連れてこられたら誰だってびっくりしますわよね」
優しそうな雰囲気のある...西のマリタノーミだった。
「私から説明させて頂きますね。香澄さん、今ね、天界では 貴女の事で議論になってますの。貴女が天界人になって魔界に降りて行く事に反対している者と賛成している者がいる事は知ってますか?」
「はい。北の方達は『新しい時代』の為に 私が天界人になる事を応援してくれているんですよね?そして....あの...その....」
香澄は言葉を濁した...。
「そうです。東は反対してます。そして西と南も反対なのです」
「!!!」
北以外は皆反対だ...と言う言葉にショックを受ける香澄。
「貴女は新しい時代を作りたいの?」
香澄から見て右手の方に、オカッパ頭の黒髪の綺麗な人が座っていた。
オカッパ頭の女の人が尋ねる。南のコウメだった。
『日本人なんだろうか?』そう思いながら 香澄はその人を見た。
コウメは赤く塗った口元を和らげ ニッコリと笑って
「この際なんだから なんでも言っちゃった方が勝ちよ」
と香澄に向かって言った。
香澄は『え?いいの?』と思ったが、どうも北での考え方が自分の中でなかなかしっくり来ないのもあって、自分の気持ちを聞いてもらおうと口を開いた。怒らせたら怖いから 言葉を慎重に選んで話した。
「あの、私...。魔界に帰りたいんです。魔界に待っててくれる人が居るんです。どうして天界に来ちゃったのか 全然 解らないんですけど...。今 お世話になってる人達に天界人にならなきゃいけないって言われて.....。でも 天界人になっちゃったらラジルド.....あの、待ってくれてる人ってラジルドって言うんですけど、ラジルドと過ごす時間が短くなっちゃうし...。でもそれしか方法がないのなら、1日でも早く天界人になって魔界に帰りたいって...思って....ます...。すみません...。」
「謝らなくて良いのよ」
コウメがそう言った後 続けて
「それしか方法がないって言われたのね?」
「いえっ...あの...私はっ...私は、あまり良く解らなくって...魔界に帰る方法が思いつかないから それしか無いのかなって自分で思って...。このまま人間界に転生したら10歳までに天界に戻ってくる事になるんですよね?そしたらーーー」
「10歳までしかいられないって言われたのですか?」
「ちょっと!エッセ様...。香澄さんの話を最後まで聞きましょうよ」
「すっ...すまない」
コウメの迫力にエッセが慌てて謝る。
「いえ、えっと...。私は 修行が終わってるって聞いてます。修行が終わった人は10歳までに天界に来る事になるんですよね?私、転生しても10歳までに ラジルドの事を思い出す自信が無いんです。思い出す事が出来れば ラジルドが迎えに来てくれて、魔界でラジルドと結婚出来るって聞いていたので.....。でも本当に自信が無くて.....。ラジルドの事や魔界で過ごして来た事を全部忘れてしまうなんて絶対に嫌なんです。忘れてしまう位なら このまま天界人になって、魔界に降りた方が良いのかなって思って...」
コウメとマリタノーミが顔を見合せて 盛大にため息を付いた。
「はぁぁぁぁ~」
「やはり私の思った通りですわ。香澄さんはまだ経験が浅い。浅くて狭い知識の中で選択を迫っても間違う事ばかりです」
マリタノーミが尚も言い募る。
「トーテンブル様。北は彼女に選択肢を与えてなかったのですわね、そして事実も伝えていない」
「彼女は自分で考えたと言ってるじゃないか!」
「そうですわ!選択肢が無ければそうするしかないでしょう!」
西のマリタノーミが声を荒らげる。
「香澄さん、ココには東西南北の長老が集まっています。皆、貴女とラジルドさんの事については賛成してます。その事は意見が一致しているのを理解して下さいね」
「え?賛成...なんですか....?」
香澄はますます意味が解らず問いかける。でも、ラジルドとの事は賛成してくれると聞いて 嬉しくなったのは正直な気持ちだった。心が一瞬で高揚して来た。
「『魔界と天界の融合』ここに対して反対しているのです。貴女が天界人になって魔界に降りて子供が出来たとしたら、その子は 魔界にも天界にも通じる事の出来る子供かもしれない....そこを私達は危惧しているんです。解りますか?しかも、あなた自身の命も短くなる可能性がある.....。そんな事は、そんな命を無駄にする様な事は 認められません!.....エッセ様もご意見があるんじゃないですか?」
東のエッセを見て香澄は身構える。1番恐れている人だったから。
「香澄さんが北で どんな話を聞かれたかは解りませんがーーー」
「北は嘘偽りなど話してはいない!!」
「解っています。ただ、話と言うのは聞き手によって受取り方が変わってくるものです。香澄さん、天界の改革なんて行えば、この世界がどうなるか考えた事はありますか?改革によって沢山の犠牲者が出れば、人間界から沢山の人を補充しなければならないんですよ」
香澄は息を飲んだ。『そうだった...。カイトからそんな話を聞いていた』
「それってバランスって事ですよね?」
「そうです。天界人を補充するには 修行途中の人間の修行を終わらせて、それでも足りなければ 魔界修行者から補充してきます。そうなると天界は 不完全な天人ばかりになってしまい機能しなくなる」
「そんな事はありえん!新しい時代の改革に沢山の人は死ぬ事はない!新しい種族が生まれれば 天界と魔界の抑止力にーーー」
「そうかも知れませんが、可能性は0ではないでしょう?」
「可能性の事ばかりを言っていたら、新しい事なんて何一つ出来ないじゃないかっ!」
「その前に!新しい事なんて必要なんですか?」
「必要じゃないかっ!天界と魔界の平和がそこにはあるんだぞっ!」
「その平和の為に、香澄さんの命を犠牲にするんですか?」
「それは彼女が望んだ事だっ!」
「私は反対だ!そんな事をしても誰も幸せにならないじゃないですか。人は修行を終えたら幸せにならなくてはいけない。これは神が決めた事だ!私達はそれを変えることは出来ないでしょう?香澄さんは魔界人になりたいと願っている。それならば魔界人になるの方が彼女の為だと思わないのですか?」
白熱した議論に香澄は唖然としている。
「それならば彼女は魔界人になれば良い.....。彼女が魔界人になる事で黒羽族が増えて行けば、それも神のご意思なんじゃないのか」
「それは出来ない...」
「出来なくはないだろう。愛し合う者が居れば 子供が出来るのは自然の摂理じゃないか」
「黒羽族が増えてはいけないんだ...。」
エッセが苦しそうに言葉を紡いだ。
「子供が出来なければ良いんですか?」
香澄が思わず言った。それを聞いてエッセが深く頷いた。
「貴方を人間界に戻す。そしてそれが条件になります」
「そんなっ!そんな条件には賛成しない!そんな事があってたまるか!彼女は北で預かる!天界人になって黒羽族の復活をーーー」
「何の為に?黒羽族が復活したとしても何をするのです?新しい時代になって、黒い羽の天使が増えたとして、それが何になるのですか?私達が黒羽族の力に圧されていなくなったとして、誰がこの世界の近郊を図っていくのですか?貴方はただ 自分の力を見せ付けたくて、この天界を牛耳りたいだけでしょう?」
香澄にこの会話は衝撃だった。ラジルドと一緒に生きて行きたいだけだったのに、こんなに大きい話になっていくだなんて思いもしなかった事だったから。
「黒羽族の復活はありえない。これはラジルド君も同じ意見です」
「ラジルドも...?」
「そうです。彼は黒羽族の悲劇の一番の被害者です。そして犠牲者で理解者でもある。彼は魔界人を恨んでいない。彼の望みは 香澄さんと共に生きたいと言う願いだけです。黒羽族の悲劇は天界の責任でもある。そこを私達は忘れてはいけないんじゃないですか?」
香澄はエッセの発言に深く頷いた。そうなのだ。一番の被害者であるラジルドが誰も恨んでない。香澄はエッセの言っていることの方が正しいのではないかと思い始めた。
「香澄さん...私は愛する人と離れ離れになる辛さを知っている。私達は長く生きていかなければならないの...ずっと辛い思いをしながら生きていく事ほど大変なことは無いわ。貴方にはそんな思いはして欲しくない。幸せになって」
コウメが寂しそうな顔をして香澄に話し掛けた。
「子供が作れないのにか?」
トーテンブルはまだ諦めない。
「子供が作れないのは悲しい事であるけれど、それだけが幸せではないわ。愛する人と一緒に居て一緒に過ごせる時間こそが一番の幸せですわよ。香澄さん幸せになってね」
マリタノーミの言葉に香澄は涙が出てきた。
「間中 香澄を魔界に戻し、然るべき手順を踏んで 人間界に戻す事に決定します」
東のエッセが高らかに宣言した。
香澄は涙が溢れて止まらなかった。
ただ、北のトーテンブルだけが苦虫を噛み締めたような顔をして香澄を見ていた。
北は『本人が切望している』と言う理由で復活を強く後押ししていた。
『魔界の影響が大きい』と言う理由のみで反対を推し進めている東ではあるが、反対する理由にしてはちょっと弱い。形勢は北に有利な方向に進んでいた。
そんな中、騒ぎを聞きつけた西のマリタノーミと南のコウメが参戦して香澄の復活問題は一気に天界全体の問題として取り上げられる事になった。
「問題は トーテンブル様が間中香澄を利用しようとしている事ではありませんの?」
「利用?...これは意な事を仰る。部下の報告では間中香澄は修行最終者との事。然るべき対策を立てて無事に天界人にバックアップする事の何が『利用』と言う言葉になるのか...」
「解りかねると?」
今、論争をしているのは南のコウメと北のトーテンブル。
「では 間中香澄が天界人になった暁には彼女の身柄は南の管轄で宜しいんですね?」
「間中香澄は、北が天界の不安定な状況から助け出して 今は心健やかに毎日を過ごしているとの報告が上がっております。彼女の身柄は北が預かるのが筋でしょう?」
「彼女の存在に気が付いて 彼女の身を案じてタグ付けしたのは ウチのシャルラですが...それを考えると東で身柄を預かるのが本当では?」
東のエッセが口を挟む。
「その東を彼女は1番怖がっているのですよ?」
「それは東の本当の姿を知らないからではないですか?ある事ない事並べられて 嘘ばかりを吹き込まれれば そりゃ誰だって怖がりますよ」
「北が彼女に嘘を言っていると仰りたいのですかな...?」
トーテンブルが威嚇するかの様に 唸る様な声を出した。
「嘘と言うより脅しじゃございませんの?彼女はまだ人生経験も浅く、判断基準が浅く狭い。もっと色々な事を見せてから判断されるべきかと思います」
西のマリタノーミも参戦。
「皆様は、間中香澄の復活に反対だと仰りたいのでしょう?彼女は天界人になるべきなんじゃないですか?何と言っても本人が切望してるのですから」
「それは本当に本人が切望してるのでしょうか?」
「今度は私が嘘を言ってると言うんですか?...話にならないな」
トーテンブルが わざとらしくため息をついた。
「話にならないのはこちらのセリフですよ。間中香澄をこの場に呼ぶべきです!」
「その前に、トーテンブル様。私 黒羽族の生き残りが居たという話を小耳に挟みました」
「私もです。本当なんですの?」
「しかも2人は恋人同士とか...トーテンブル様。北は『天界の改革』を盛んに仰ってますが...もしかして『天界と魔界の融合』を考えてらっしゃるんじゃありませんの?」
コウメがトーテンブルに詰め寄る。
「『魔界と天界の融合』なんて絶対にあってはならない。そんな事をしたら魔界と天界と人間界のバランスが崩れて大変な事になってしまう!」
「何を時代遅れな事を仰ってるんですか...。魔界と天界を自由に行き来できる種族が居て、魔界の問題にも天界の問題にも大きな力で対処する事が出来る。いわば抑止力ですよ。今の天界には力が無い。その問題を解決する為の大きな希望じゃないですか」
「それは本当に天界と魔界の為ですの?私が聞いた話だと、何やらトーテンブル様が神に成り代わる為の足掛かりだと聞きましたわ」
「私が神に?とんでもない!!私を慕って、私の考えに賛同してくれる同士が沢山集まって居るだけですよ」
「その抑止力とやらの為に 間中香澄が犠牲になると言っているのです。彼女は天界人になるべきではない!」
「彼女が望んでいるのに...」
「とにかく、この場に間中香澄を呼ぶべきです」
香澄は復活に賛成するしかないと考えて、北の生活を大人しく受け入れていた。
毎日『天界と魔界の融合』がどんなに素晴らしい事なのかを散々聞かされて少々ウンザリしているが...。
「トーテンブル様の素晴らしい考え、トーテンブル様の素晴らしい行い.....」
もうテキストなんて見なくても 一字一句 間違うこと無く話す事も出来る。
北では、トーテンブルを殆どの人が神として崇め奉っている程の蕩心ぶりに 香澄は少々引いている。しかしそれでも北から出ないのは、東に捕まったらラジルドに会えなくなる...と言われて それを信じてしまったからだった。
北で魔界は悪とされている。黒羽族を絶滅に追いやって憎むべき相手で敵だった。しかし香澄は違う。香澄は魔界の人達が 優しくて 親切で 思いやりに溢れている事を知っていた。だからいまいち 北の考えが受け入れられない。
唯一、黒羽族の生き残りであるラジルドも 魔界人を憎んでいない。それなのに 天界の人達が魔界人を敵視するのもどうなんだろう...。と 香澄は1人、冷ややかな気持ちでそれを毎日のように聞いていた。
何か違う様な気がする...。
香澄は、噴水のヘリに座って花を眺めながらそんな事を思っていた。その時、
「間中香澄さん、第1講解室に呼ばれてます」
『?』
第1講解室ってなんだ?そう思いながら
「え?あ...はい。」
そう言って立ち上がり、声を掛けてきた女の人に付いて行こうとした。
スタスタと歩いて行き、あっさり北の扉から出て行こうとする女の人に慌てて声を掛ける。
「あの...すみません。北から出るんですか?」
香澄がおずおずと聞くと
「はい。第1講解室は中央区にありますので...此処から出ないと行けないのですが...」
そうあっさり言われてしまった。
「あの...本当に?本当に 第1講解室って所に行くんですか?」
「はい。只今、四天長の話し合いが行われていて 香澄さんはそこに呼ばれています」
「........」
信じても良いのだろうか?
そう言いながら東に連れて行くのではないだろうか.....?
香澄は疑いの眼差しで その女の人を見ていた。
「何か心配事でも?」
そう言われても これ以上の言葉が見つからない...。
「いえ...解りました」
観念して 案内人に付いて行くしかない香澄だった。
案内されてたどり着いた場所は 本当に『第1講解室』だった。
仰々しい扉と言うか...。神々しい扉と言うか...。
香澄は心の中で『疑ってごめんね...』って案内人に謝りながら 開けられたその扉の中に恐る恐る入って行く。非常に落ち着かなかった。
「間中香澄さん来られました」
そう言われて、心臓が急にドッキンドッキン言い出して なんだか息が苦しくなった。
『なに?なにが起こってるの?』
落ち着きなく まわりをキョロキョロと見回すと、そこには 天使が4人座っていた。
まさに天使。頭上にちゃんと金色に光る輪っかがあった。
天使って、子供で 上半身裸とかで プニョプニョしてて プリプリしてるんじゃないんだ...って香澄は初めて知った。
「間中香澄さんですか?」
ヒゲの似合うダンディな感じの男の人に聞かれて「はい」と答えた。東のエッセだった。
「今から聞かれたことに 嘘偽りなく答えられますか?」
そう言われて「はい」とまた答えた。
正直、香澄の心の中は『怖い...怖すぎる...』と叫んでいて、足がガクガク震えている。
「単刀直入に聞きますね。貴女は、天界人になりたいですか?」
直球だった。
香澄は言葉に詰まった。
『どう答えれば良いのだろう...。』
そう思っていると、香澄の立っている場所と向かいに座っている男の天使が頷いている。北のトーテンブルだ。
「あの...天界人にならないと魔界には行けないんですよね?だったら私は 天界人になりたいです」
正直な気持ちを言うと、向かいに座っている男の人の顔が強ばった。
「貴女は東の事を何と聞かされていましたか?」
エッセが質問を続ける。
「何と...って言われても...。保守派?だって聞きました」
「何か脅されるような事を言われませんでしたか?」
「脅す?.....?」
香澄は考えた。
「あの...緊張してて...おっ...思い出せません....」
「そうですよね。急にこんな所に連れてこられたら誰だってびっくりしますわよね」
優しそうな雰囲気のある...西のマリタノーミだった。
「私から説明させて頂きますね。香澄さん、今ね、天界では 貴女の事で議論になってますの。貴女が天界人になって魔界に降りて行く事に反対している者と賛成している者がいる事は知ってますか?」
「はい。北の方達は『新しい時代』の為に 私が天界人になる事を応援してくれているんですよね?そして....あの...その....」
香澄は言葉を濁した...。
「そうです。東は反対してます。そして西と南も反対なのです」
「!!!」
北以外は皆反対だ...と言う言葉にショックを受ける香澄。
「貴女は新しい時代を作りたいの?」
香澄から見て右手の方に、オカッパ頭の黒髪の綺麗な人が座っていた。
オカッパ頭の女の人が尋ねる。南のコウメだった。
『日本人なんだろうか?』そう思いながら 香澄はその人を見た。
コウメは赤く塗った口元を和らげ ニッコリと笑って
「この際なんだから なんでも言っちゃった方が勝ちよ」
と香澄に向かって言った。
香澄は『え?いいの?』と思ったが、どうも北での考え方が自分の中でなかなかしっくり来ないのもあって、自分の気持ちを聞いてもらおうと口を開いた。怒らせたら怖いから 言葉を慎重に選んで話した。
「あの、私...。魔界に帰りたいんです。魔界に待っててくれる人が居るんです。どうして天界に来ちゃったのか 全然 解らないんですけど...。今 お世話になってる人達に天界人にならなきゃいけないって言われて.....。でも 天界人になっちゃったらラジルド.....あの、待ってくれてる人ってラジルドって言うんですけど、ラジルドと過ごす時間が短くなっちゃうし...。でもそれしか方法がないのなら、1日でも早く天界人になって魔界に帰りたいって...思って....ます...。すみません...。」
「謝らなくて良いのよ」
コウメがそう言った後 続けて
「それしか方法がないって言われたのね?」
「いえっ...あの...私はっ...私は、あまり良く解らなくって...魔界に帰る方法が思いつかないから それしか無いのかなって自分で思って...。このまま人間界に転生したら10歳までに天界に戻ってくる事になるんですよね?そしたらーーー」
「10歳までしかいられないって言われたのですか?」
「ちょっと!エッセ様...。香澄さんの話を最後まで聞きましょうよ」
「すっ...すまない」
コウメの迫力にエッセが慌てて謝る。
「いえ、えっと...。私は 修行が終わってるって聞いてます。修行が終わった人は10歳までに天界に来る事になるんですよね?私、転生しても10歳までに ラジルドの事を思い出す自信が無いんです。思い出す事が出来れば ラジルドが迎えに来てくれて、魔界でラジルドと結婚出来るって聞いていたので.....。でも本当に自信が無くて.....。ラジルドの事や魔界で過ごして来た事を全部忘れてしまうなんて絶対に嫌なんです。忘れてしまう位なら このまま天界人になって、魔界に降りた方が良いのかなって思って...」
コウメとマリタノーミが顔を見合せて 盛大にため息を付いた。
「はぁぁぁぁ~」
「やはり私の思った通りですわ。香澄さんはまだ経験が浅い。浅くて狭い知識の中で選択を迫っても間違う事ばかりです」
マリタノーミが尚も言い募る。
「トーテンブル様。北は彼女に選択肢を与えてなかったのですわね、そして事実も伝えていない」
「彼女は自分で考えたと言ってるじゃないか!」
「そうですわ!選択肢が無ければそうするしかないでしょう!」
西のマリタノーミが声を荒らげる。
「香澄さん、ココには東西南北の長老が集まっています。皆、貴女とラジルドさんの事については賛成してます。その事は意見が一致しているのを理解して下さいね」
「え?賛成...なんですか....?」
香澄はますます意味が解らず問いかける。でも、ラジルドとの事は賛成してくれると聞いて 嬉しくなったのは正直な気持ちだった。心が一瞬で高揚して来た。
「『魔界と天界の融合』ここに対して反対しているのです。貴女が天界人になって魔界に降りて子供が出来たとしたら、その子は 魔界にも天界にも通じる事の出来る子供かもしれない....そこを私達は危惧しているんです。解りますか?しかも、あなた自身の命も短くなる可能性がある.....。そんな事は、そんな命を無駄にする様な事は 認められません!.....エッセ様もご意見があるんじゃないですか?」
東のエッセを見て香澄は身構える。1番恐れている人だったから。
「香澄さんが北で どんな話を聞かれたかは解りませんがーーー」
「北は嘘偽りなど話してはいない!!」
「解っています。ただ、話と言うのは聞き手によって受取り方が変わってくるものです。香澄さん、天界の改革なんて行えば、この世界がどうなるか考えた事はありますか?改革によって沢山の犠牲者が出れば、人間界から沢山の人を補充しなければならないんですよ」
香澄は息を飲んだ。『そうだった...。カイトからそんな話を聞いていた』
「それってバランスって事ですよね?」
「そうです。天界人を補充するには 修行途中の人間の修行を終わらせて、それでも足りなければ 魔界修行者から補充してきます。そうなると天界は 不完全な天人ばかりになってしまい機能しなくなる」
「そんな事はありえん!新しい時代の改革に沢山の人は死ぬ事はない!新しい種族が生まれれば 天界と魔界の抑止力にーーー」
「そうかも知れませんが、可能性は0ではないでしょう?」
「可能性の事ばかりを言っていたら、新しい事なんて何一つ出来ないじゃないかっ!」
「その前に!新しい事なんて必要なんですか?」
「必要じゃないかっ!天界と魔界の平和がそこにはあるんだぞっ!」
「その平和の為に、香澄さんの命を犠牲にするんですか?」
「それは彼女が望んだ事だっ!」
「私は反対だ!そんな事をしても誰も幸せにならないじゃないですか。人は修行を終えたら幸せにならなくてはいけない。これは神が決めた事だ!私達はそれを変えることは出来ないでしょう?香澄さんは魔界人になりたいと願っている。それならば魔界人になるの方が彼女の為だと思わないのですか?」
白熱した議論に香澄は唖然としている。
「それならば彼女は魔界人になれば良い.....。彼女が魔界人になる事で黒羽族が増えて行けば、それも神のご意思なんじゃないのか」
「それは出来ない...」
「出来なくはないだろう。愛し合う者が居れば 子供が出来るのは自然の摂理じゃないか」
「黒羽族が増えてはいけないんだ...。」
エッセが苦しそうに言葉を紡いだ。
「子供が出来なければ良いんですか?」
香澄が思わず言った。それを聞いてエッセが深く頷いた。
「貴方を人間界に戻す。そしてそれが条件になります」
「そんなっ!そんな条件には賛成しない!そんな事があってたまるか!彼女は北で預かる!天界人になって黒羽族の復活をーーー」
「何の為に?黒羽族が復活したとしても何をするのです?新しい時代になって、黒い羽の天使が増えたとして、それが何になるのですか?私達が黒羽族の力に圧されていなくなったとして、誰がこの世界の近郊を図っていくのですか?貴方はただ 自分の力を見せ付けたくて、この天界を牛耳りたいだけでしょう?」
香澄にこの会話は衝撃だった。ラジルドと一緒に生きて行きたいだけだったのに、こんなに大きい話になっていくだなんて思いもしなかった事だったから。
「黒羽族の復活はありえない。これはラジルド君も同じ意見です」
「ラジルドも...?」
「そうです。彼は黒羽族の悲劇の一番の被害者です。そして犠牲者で理解者でもある。彼は魔界人を恨んでいない。彼の望みは 香澄さんと共に生きたいと言う願いだけです。黒羽族の悲劇は天界の責任でもある。そこを私達は忘れてはいけないんじゃないですか?」
香澄はエッセの発言に深く頷いた。そうなのだ。一番の被害者であるラジルドが誰も恨んでない。香澄はエッセの言っていることの方が正しいのではないかと思い始めた。
「香澄さん...私は愛する人と離れ離れになる辛さを知っている。私達は長く生きていかなければならないの...ずっと辛い思いをしながら生きていく事ほど大変なことは無いわ。貴方にはそんな思いはして欲しくない。幸せになって」
コウメが寂しそうな顔をして香澄に話し掛けた。
「子供が作れないのにか?」
トーテンブルはまだ諦めない。
「子供が作れないのは悲しい事であるけれど、それだけが幸せではないわ。愛する人と一緒に居て一緒に過ごせる時間こそが一番の幸せですわよ。香澄さん幸せになってね」
マリタノーミの言葉に香澄は涙が出てきた。
「間中 香澄を魔界に戻し、然るべき手順を踏んで 人間界に戻す事に決定します」
東のエッセが高らかに宣言した。
香澄は涙が溢れて止まらなかった。
ただ、北のトーテンブルだけが苦虫を噛み締めたような顔をして香澄を見ていた。
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