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バタン、と扉が閉まり、室内に静寂が訪れた。
強く握られた手首が痛くて、やけに熱い。
私の腕を引く体勢のまま、ノアはじっと前を見据えてこちらを振り返ろうとしない。
ど、どうしよう。折角久々に接触できたのだから、このチャンスを逃さず今謝って仲直りするべきだろうか。いやでもユーグリッドのお陰で私体調悪いと思われてるし……
「お前、またマルクス様の後をつけてただろ」
ば、バレてた~~~~! なぜっ何ゆえっ!
唐突に掛けられた言葉に思わず一人アワアワと視線を彷徨わせると、視界の端に巨大な鏡が入り込む。一見鏡にしか見えないその向こう側には私とノアの姿は無く、見目美しい男女が睦み合うワンシーンが映し出されていた。マルクス様とアシュリーヌちゃんがマジックミラーの向こうの部屋に備え付けられたベッド上でもつれ合い、ちゅっちゅちゅっちゅエッチな口付けを交わしている。
……いやそりゃバレますわな!! 現行犯逮捕も甚だしい。
けれどこれなら話は早い。
「あ、あのね! 確かにマルクス様の後は追ったけど、でも今回はノアに迷惑掛けるつもりはなかったし、一人でーー」
「だから今度はユーグリッドに頼もうとしたのか」
ぱちくり。思わずそんな擬音が付きそうなほどに瞬きを繰り返しながら、盛大に呆けた顔をしてしまう。何故にここでユーグリッド。
「…………俺が、お前を避け、てたから。マルクス様に見立てて今度はユーグリッドに、その……頼むつもりだったんだろ」
辿々しくも何やら的外れな事を話し始めたノアに、私の頭の中はみるみる疑問符でいっぱいになる。
取り敢えず避けてる自覚はあったのか。火を見るよりも明らかだったけれど、本人の口から改めて聞くとやっぱり気持ちが沈んでしまう。
けれど真偽はさて置き、ユーグリッドが絡むことについて一体何の不都合があるのだろうか。ノアの言い回しからして何か物言いたげだけれど、私と距離を置きたがっているならむしろノアがお役御免になるのは彼にとって好都合なんじゃないか。
「ええと、ノアは私のこと避けてた……んだよね? それは私も分かってたし、ノアを不快な気持ちにさせてたなら謝りたいと思ってた。……ごめん」
「! なんでお前が……!」
弾かれたように振り返ったノアと、目が合う。
久々にきちんと近くで見たノアの顔はそれだけで懐かしくて、胸がキュッとなった。鳶色の瞳は私の姿を捉えた瞬間驚いたように瞠目したかと思うと暫く視線を彷徨わせ、また明後日の方に逸らされてしまう。
「……お前が謝る理由なんて、どこにもねーよ。俺が一人で……」
「?」
次第に消え入ってしまった声はよく聞き取れず、思わず首を傾げる。
私が原因で避けていたんじゃないとしたら、ますます理由が分からないのだが。
「じゃあなんで最近素っ気なかったの? ユーグリッドと一緒にいたのだってついさっきだし、これだけが原因じゃないよね?」
「ッ……」
「……私がノアにやらしいことさせたからじゃないの? ノアが嫌がってるのにノアのだって、触っちゃったし……」
自分の行った行為を改めて思い返すと照れてしまい、次第に語気が弱くなる。握られたノアの手に片手を添えると、びくりとノアの全身が跳ねた。
ノアは優しい。優しいから、きっと私に気を遣って本当の理由を言えずにいる。ちゃんと話さなきゃ。
「私、ノアとちゃんと喋れないのいやだよ。ノアが隣にいないのやだ。私の顔も見たくないのかもしれないけど、でも私はノアと友達のままでいたい」
気付いたら声が震えていた。私の様子に気付いたのかノアの手がまた強張ったのを感じる。
背けられてしまい、視線の交わらないノアの顔を見上げて唇を噛みしめる。
朝、いつもならキュッと吊り上がった目を眠たげに細め、私の寝癖を揶揄うノアも、マルクス様の美談を嬉々として語る私を呆れたように、でもなんだかんだ毎回最後まで聞いてくれるノアも、同僚達に無茶振りも甚だしい雑用を任された時どこからともなくやってきて、さっさと終わらせるぞと何でもない風に言ってくれるノアも、もう見ることができないかもしれない。いつも通りのノアが、もういなくなってしまうかもしれない。それだけで私は推しカプがそれぞれ別の相手を公式から提示されてしまう地獄と同じくらい、胸が締め付けられる気持ちになるのだ。
「私に触るのも触られるのも嫌ならもうしないようにするから。だから、私の前からいなくならないでーー」
そこで私の言葉は喉の奥へと呑み込まれた。
ノアがこちらを見ていたから。紅潮したように見える頰はきっとオレンジがかった照明のせいだけじゃない。
吊り目の瞳に射抜かれ、何故だか緊張してしまう。ノアは眉を顰め、やけに怖い顔をしながら私の全身に視線を滑らせると、またぎゅっと目を瞑って空いた片手でガシガシ自分の頭を掻きむしった。
「ッ…………嫌じゃないけど、いやなんだよ」
「??」
一体どの話だろうか。私の顔を見ること? 私と友達でいること?
訳が分からずノアを見つめ続けるとまた見るからに赤くなったノアが、俯きながら口を開いた。
「お前に触ることも、触られることも、いやじゃない」
思わず聞き漏らしてしまいそうなほどにか細い声で言われたけれど、しっかりばっちり聞こえてしまった。
……そっか、そうなのか。私に触るのも、触られるのも、つまりえっちな行為をすること自体は、いやではなかったのか。
予想だにしなかった返答もそうだけど、それ以上に真っ赤になりながらそう告げてきたノアにほっとすると同時に心臓が大きく脈打ち、下の部分がほんのりと湿った。
「でもそれならなんでーー」
「我慢できなくなりそうだったんだよ」
「へっ」
いまなんと。
横目で私を見たノアと視線が交わった途端、全身が縫い付けられたように動けなくなる。やけに険しい顔をしていると思っていたけれどその目に嫌悪の色は含まれていなくて。どろりとした、仄暗い情欲の炎が揺らめいているのが見えた。
「ただでさえ我慢すんのに必死だったのに、お前が、触ってきたりなんかするから……もうお前の顔見る度にヤバくて」
「え、え」
上気した顔を苦しげに歪ませながらちらちら注がれる視線に、びくびくと身体が強張る。情報の処理が追い付かない。
がまん、我慢……とは、あの我慢、だろうか。殿方がネクタイを緩めるなり腰のベルトを外すなりしながら「もう、我慢できない……っ」と息も絶え絶えに告げてお相手をベッドに押し倒して獣のようにもつれ合うなどするあの、我慢できない、だろうか。
ええと。
もしかしなくても、私はノアに性的な対象として見られているのだろうか。単に私の性欲を処理する手助けなんかじゃなくて、欲情され、純粋に、私にえっちなことをしたいと思われている……?
そこまで考えると、ブワッと全身の血液が沸き立ち、一気に顔面へと熱が集まる。いきなり心臓が忙しなく活動し始めたからか、胸が痛いしなんだか頭がふわふわする。えぇえ~~なにこれ、なにこれ。
たまらず添えたままだった手でノアの手を強く握り締め、見上げると真っ赤になったノアとしっかりと目が合った。
「我慢、しなくていいよ」
「は……」
気付けば口走っていた。
とんでもないことを言ってしまったし、言おうとしている自覚はある。
あるけれど、それ以上に素直に嬉しかったのだ。ノアも私と同じ気持ちだったことが。
「私もノアに触られたい。もっと触ってほしいし、ユーグリッドでも他の誰でもないノアの手で、気持ちよくなりたい」
ごくりと、ノアの喉が動くのが見えた。
ノアがユーグリッドの名前を口にした理由が漸くわかった。鞍替えなんて、するつもりもないのに。というか、ノア以外の人にされるなんて想像だにしていなかったし、そもそも私にえっちなことしたいなんて、そんな奇特な人間ノア以外存在もしないのに。
「こいつ、どういう意味で……」
ノアは耳まで真っ赤にして目をこれでもかというほどにかっ開いたまま、何やら一人でブツブツ呟いている。小っ恥ずかしいことを言った自覚はあるので、放置されるのはひどく居た堪れないのだが。思わずうろうろと視線を彷徨わせる。
たっぷりの沈黙の後、ノアは何か心に決めたように私を力強く見つめた。そのままノアの左手が恐る恐るといったようにそろりと私の頰を撫ぜてくる。探るように指を這わされ、爪先が耳元を掠めた瞬間腰に甘い痺れが走りびくんと反応してしまった。
「……ほんとに、いいのか」
「……うん」
「お前を怖がらせて嫌われたら、立ち直れる気がしねーんだけど」
「私がノアを嫌うことなんて、有り得ないよ。そもそも、先に嫌われたと思わせたのは、ノアの方じゃん……ぅひゃっ」
そのままさわさわと耳元を摩られ、擽ったさとほんの少しのいけない快感が下腹部に募り、びくびくと面白いほどに肩が跳ねる。
の、ノアめ……耳が弱いのを覚えていたな。
指先で耳殻をなぞられると、今度は指の背ですりすり耳の裏と耳たぶを擦られる。久々に触れられる硬いノアの指の感触と、絶妙な切ない快感に頰が上気していくのがわかる。擽ったがっているのを目の前で凝視されているのも居た堪れない。
ハァ、と熱い溜息を吐くと、「それもそうだな」とノアは力無くわらった。
ちらと、壁に備え付けられているマジックミラーの方を見た後、ノアは私に向き直る。
「今日はあの鏡、見るの禁止な」
それは……自信が無い。
強く握られた手首が痛くて、やけに熱い。
私の腕を引く体勢のまま、ノアはじっと前を見据えてこちらを振り返ろうとしない。
ど、どうしよう。折角久々に接触できたのだから、このチャンスを逃さず今謝って仲直りするべきだろうか。いやでもユーグリッドのお陰で私体調悪いと思われてるし……
「お前、またマルクス様の後をつけてただろ」
ば、バレてた~~~~! なぜっ何ゆえっ!
唐突に掛けられた言葉に思わず一人アワアワと視線を彷徨わせると、視界の端に巨大な鏡が入り込む。一見鏡にしか見えないその向こう側には私とノアの姿は無く、見目美しい男女が睦み合うワンシーンが映し出されていた。マルクス様とアシュリーヌちゃんがマジックミラーの向こうの部屋に備え付けられたベッド上でもつれ合い、ちゅっちゅちゅっちゅエッチな口付けを交わしている。
……いやそりゃバレますわな!! 現行犯逮捕も甚だしい。
けれどこれなら話は早い。
「あ、あのね! 確かにマルクス様の後は追ったけど、でも今回はノアに迷惑掛けるつもりはなかったし、一人でーー」
「だから今度はユーグリッドに頼もうとしたのか」
ぱちくり。思わずそんな擬音が付きそうなほどに瞬きを繰り返しながら、盛大に呆けた顔をしてしまう。何故にここでユーグリッド。
「…………俺が、お前を避け、てたから。マルクス様に見立てて今度はユーグリッドに、その……頼むつもりだったんだろ」
辿々しくも何やら的外れな事を話し始めたノアに、私の頭の中はみるみる疑問符でいっぱいになる。
取り敢えず避けてる自覚はあったのか。火を見るよりも明らかだったけれど、本人の口から改めて聞くとやっぱり気持ちが沈んでしまう。
けれど真偽はさて置き、ユーグリッドが絡むことについて一体何の不都合があるのだろうか。ノアの言い回しからして何か物言いたげだけれど、私と距離を置きたがっているならむしろノアがお役御免になるのは彼にとって好都合なんじゃないか。
「ええと、ノアは私のこと避けてた……んだよね? それは私も分かってたし、ノアを不快な気持ちにさせてたなら謝りたいと思ってた。……ごめん」
「! なんでお前が……!」
弾かれたように振り返ったノアと、目が合う。
久々にきちんと近くで見たノアの顔はそれだけで懐かしくて、胸がキュッとなった。鳶色の瞳は私の姿を捉えた瞬間驚いたように瞠目したかと思うと暫く視線を彷徨わせ、また明後日の方に逸らされてしまう。
「……お前が謝る理由なんて、どこにもねーよ。俺が一人で……」
「?」
次第に消え入ってしまった声はよく聞き取れず、思わず首を傾げる。
私が原因で避けていたんじゃないとしたら、ますます理由が分からないのだが。
「じゃあなんで最近素っ気なかったの? ユーグリッドと一緒にいたのだってついさっきだし、これだけが原因じゃないよね?」
「ッ……」
「……私がノアにやらしいことさせたからじゃないの? ノアが嫌がってるのにノアのだって、触っちゃったし……」
自分の行った行為を改めて思い返すと照れてしまい、次第に語気が弱くなる。握られたノアの手に片手を添えると、びくりとノアの全身が跳ねた。
ノアは優しい。優しいから、きっと私に気を遣って本当の理由を言えずにいる。ちゃんと話さなきゃ。
「私、ノアとちゃんと喋れないのいやだよ。ノアが隣にいないのやだ。私の顔も見たくないのかもしれないけど、でも私はノアと友達のままでいたい」
気付いたら声が震えていた。私の様子に気付いたのかノアの手がまた強張ったのを感じる。
背けられてしまい、視線の交わらないノアの顔を見上げて唇を噛みしめる。
朝、いつもならキュッと吊り上がった目を眠たげに細め、私の寝癖を揶揄うノアも、マルクス様の美談を嬉々として語る私を呆れたように、でもなんだかんだ毎回最後まで聞いてくれるノアも、同僚達に無茶振りも甚だしい雑用を任された時どこからともなくやってきて、さっさと終わらせるぞと何でもない風に言ってくれるノアも、もう見ることができないかもしれない。いつも通りのノアが、もういなくなってしまうかもしれない。それだけで私は推しカプがそれぞれ別の相手を公式から提示されてしまう地獄と同じくらい、胸が締め付けられる気持ちになるのだ。
「私に触るのも触られるのも嫌ならもうしないようにするから。だから、私の前からいなくならないでーー」
そこで私の言葉は喉の奥へと呑み込まれた。
ノアがこちらを見ていたから。紅潮したように見える頰はきっとオレンジがかった照明のせいだけじゃない。
吊り目の瞳に射抜かれ、何故だか緊張してしまう。ノアは眉を顰め、やけに怖い顔をしながら私の全身に視線を滑らせると、またぎゅっと目を瞑って空いた片手でガシガシ自分の頭を掻きむしった。
「ッ…………嫌じゃないけど、いやなんだよ」
「??」
一体どの話だろうか。私の顔を見ること? 私と友達でいること?
訳が分からずノアを見つめ続けるとまた見るからに赤くなったノアが、俯きながら口を開いた。
「お前に触ることも、触られることも、いやじゃない」
思わず聞き漏らしてしまいそうなほどにか細い声で言われたけれど、しっかりばっちり聞こえてしまった。
……そっか、そうなのか。私に触るのも、触られるのも、つまりえっちな行為をすること自体は、いやではなかったのか。
予想だにしなかった返答もそうだけど、それ以上に真っ赤になりながらそう告げてきたノアにほっとすると同時に心臓が大きく脈打ち、下の部分がほんのりと湿った。
「でもそれならなんでーー」
「我慢できなくなりそうだったんだよ」
「へっ」
いまなんと。
横目で私を見たノアと視線が交わった途端、全身が縫い付けられたように動けなくなる。やけに険しい顔をしていると思っていたけれどその目に嫌悪の色は含まれていなくて。どろりとした、仄暗い情欲の炎が揺らめいているのが見えた。
「ただでさえ我慢すんのに必死だったのに、お前が、触ってきたりなんかするから……もうお前の顔見る度にヤバくて」
「え、え」
上気した顔を苦しげに歪ませながらちらちら注がれる視線に、びくびくと身体が強張る。情報の処理が追い付かない。
がまん、我慢……とは、あの我慢、だろうか。殿方がネクタイを緩めるなり腰のベルトを外すなりしながら「もう、我慢できない……っ」と息も絶え絶えに告げてお相手をベッドに押し倒して獣のようにもつれ合うなどするあの、我慢できない、だろうか。
ええと。
もしかしなくても、私はノアに性的な対象として見られているのだろうか。単に私の性欲を処理する手助けなんかじゃなくて、欲情され、純粋に、私にえっちなことをしたいと思われている……?
そこまで考えると、ブワッと全身の血液が沸き立ち、一気に顔面へと熱が集まる。いきなり心臓が忙しなく活動し始めたからか、胸が痛いしなんだか頭がふわふわする。えぇえ~~なにこれ、なにこれ。
たまらず添えたままだった手でノアの手を強く握り締め、見上げると真っ赤になったノアとしっかりと目が合った。
「我慢、しなくていいよ」
「は……」
気付けば口走っていた。
とんでもないことを言ってしまったし、言おうとしている自覚はある。
あるけれど、それ以上に素直に嬉しかったのだ。ノアも私と同じ気持ちだったことが。
「私もノアに触られたい。もっと触ってほしいし、ユーグリッドでも他の誰でもないノアの手で、気持ちよくなりたい」
ごくりと、ノアの喉が動くのが見えた。
ノアがユーグリッドの名前を口にした理由が漸くわかった。鞍替えなんて、するつもりもないのに。というか、ノア以外の人にされるなんて想像だにしていなかったし、そもそも私にえっちなことしたいなんて、そんな奇特な人間ノア以外存在もしないのに。
「こいつ、どういう意味で……」
ノアは耳まで真っ赤にして目をこれでもかというほどにかっ開いたまま、何やら一人でブツブツ呟いている。小っ恥ずかしいことを言った自覚はあるので、放置されるのはひどく居た堪れないのだが。思わずうろうろと視線を彷徨わせる。
たっぷりの沈黙の後、ノアは何か心に決めたように私を力強く見つめた。そのままノアの左手が恐る恐るといったようにそろりと私の頰を撫ぜてくる。探るように指を這わされ、爪先が耳元を掠めた瞬間腰に甘い痺れが走りびくんと反応してしまった。
「……ほんとに、いいのか」
「……うん」
「お前を怖がらせて嫌われたら、立ち直れる気がしねーんだけど」
「私がノアを嫌うことなんて、有り得ないよ。そもそも、先に嫌われたと思わせたのは、ノアの方じゃん……ぅひゃっ」
そのままさわさわと耳元を摩られ、擽ったさとほんの少しのいけない快感が下腹部に募り、びくびくと面白いほどに肩が跳ねる。
の、ノアめ……耳が弱いのを覚えていたな。
指先で耳殻をなぞられると、今度は指の背ですりすり耳の裏と耳たぶを擦られる。久々に触れられる硬いノアの指の感触と、絶妙な切ない快感に頰が上気していくのがわかる。擽ったがっているのを目の前で凝視されているのも居た堪れない。
ハァ、と熱い溜息を吐くと、「それもそうだな」とノアは力無くわらった。
ちらと、壁に備え付けられているマジックミラーの方を見た後、ノアは私に向き直る。
「今日はあの鏡、見るの禁止な」
それは……自信が無い。
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