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39.二人でお買い物 その2
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「あとは駄菓子屋な」
「だ、駄菓子屋?」
「そこに売ってるお面が欲しいだけだ。…おい、なんで笑ってんだ」
「っふふ、だ、だって、湊くんが、お菓子食べたいのかと、思って…!」
「シメられたいらしいな」
「ひぃ!」
目を細めている湊くんから全速力で逃げつつ、駄菓子屋へと向かった。
「そういえば、なんでお面を…?」
「あー、裏方はまだ知らねえのか。当日、バンドメンバーはお面被って登場することになってんだよ」
「へ?なんでですか」
「…かっこいいから」
「ふふ」
「俺が決めたわけじゃねえ!笑うな!」
「ご、ごめんなさい、ふふっ」
たしかにお面を被っていたらかっこいいけど、あの大人っぽい湊くんがお面をかっこいいものだと認識してるのはちょっと面白い。
さっきから湊くんが面白くて笑ってばっかりだ。
…顔は合わせづらいけど。
話に夢中になっていたらあっという間に駄菓子屋に到着してしまった。
滝のように流れる汗を拭って店内に入ると、棚にはさまざまな種類のお菓子が、壁一面には動物やキャラクターのお面がずらりと並んでいる。
湊くんが迷いなく進んでいくので、大人しく着いていった。
「これだ」
「か、かわいい…!」
湊くんが手に取ったのは狐のお面。
目元は覆われておらず、顔の下半分だけが狐になる仕様だ。
これならお面で視界が邪魔されることなく、楽器も充分に演奏できる。
「…!」
「あ?なにそれ」
湊くんのお目当てのお面の真隣にあったものに目を引かれ、思わず手に取った。
これも狐のお面だけど顔の上半分だけがお面で覆われており、口元は隠れていない。
顔面に自信がない自分はこっちの方が好きだ。
「欲しいのか?」
「え、あ、いや、そういうわけでは、ああっ!」
私が握り占めていたそのお面をさっと取り上げ、湊くんはレジに行ってしまった。
急いで財布を出そうとすると凄まじい迫力で睨まれ、涙目で先にお店を出た。
「ほい」
少し遅れてお店から出てきた湊くんが、あのお面を私の頭に被せてくれる。
「み、湊くん、お金を」
「だから、俺は女から金は取らねえ主義なの。俺に恩返ししたいなら、次は平均点くらいとって見せるんだな」
「うっ…はい…」
いきなりテストの話題が出てきてげんなりする。
一学期の期末テストの結果はひと悶着もあったせいで中々湊くんに伝える機会が無かったけど、この前勇気を出して伝えてみた。
…ギリギリ赤点を回避しました、と。
冗談抜きで本当にギリギリだった。
数Bに関してはあと一問でも多く失点していたら、今ごろ先生と顔を突き合わせて大量の課題とにらめっこする羽目になっていた。
それから湊くんは思い出すたびに私のテスト結果を弄ってくるようになった。
…2学期こそは馬鹿にされないように頑張ろう。
「み、湊くん」
「んー」
「お面、大事にする、から」
「…おう」
改めてお礼を伝えると、湊くんは足早に歩いていってしまった。
「…」
「夏菜?」
「あ、ご、ごめんなさい」
湊くんの後ろ姿をじっと見つめていると、着いてこないのを不審に思ったのか湊くんが声をかけてくれた。
湊くんを追いかけながら、少しだけ距離のあるその大きな背中をじっと見つめていた。
「だ、駄菓子屋?」
「そこに売ってるお面が欲しいだけだ。…おい、なんで笑ってんだ」
「っふふ、だ、だって、湊くんが、お菓子食べたいのかと、思って…!」
「シメられたいらしいな」
「ひぃ!」
目を細めている湊くんから全速力で逃げつつ、駄菓子屋へと向かった。
「そういえば、なんでお面を…?」
「あー、裏方はまだ知らねえのか。当日、バンドメンバーはお面被って登場することになってんだよ」
「へ?なんでですか」
「…かっこいいから」
「ふふ」
「俺が決めたわけじゃねえ!笑うな!」
「ご、ごめんなさい、ふふっ」
たしかにお面を被っていたらかっこいいけど、あの大人っぽい湊くんがお面をかっこいいものだと認識してるのはちょっと面白い。
さっきから湊くんが面白くて笑ってばっかりだ。
…顔は合わせづらいけど。
話に夢中になっていたらあっという間に駄菓子屋に到着してしまった。
滝のように流れる汗を拭って店内に入ると、棚にはさまざまな種類のお菓子が、壁一面には動物やキャラクターのお面がずらりと並んでいる。
湊くんが迷いなく進んでいくので、大人しく着いていった。
「これだ」
「か、かわいい…!」
湊くんが手に取ったのは狐のお面。
目元は覆われておらず、顔の下半分だけが狐になる仕様だ。
これならお面で視界が邪魔されることなく、楽器も充分に演奏できる。
「…!」
「あ?なにそれ」
湊くんのお目当てのお面の真隣にあったものに目を引かれ、思わず手に取った。
これも狐のお面だけど顔の上半分だけがお面で覆われており、口元は隠れていない。
顔面に自信がない自分はこっちの方が好きだ。
「欲しいのか?」
「え、あ、いや、そういうわけでは、ああっ!」
私が握り占めていたそのお面をさっと取り上げ、湊くんはレジに行ってしまった。
急いで財布を出そうとすると凄まじい迫力で睨まれ、涙目で先にお店を出た。
「ほい」
少し遅れてお店から出てきた湊くんが、あのお面を私の頭に被せてくれる。
「み、湊くん、お金を」
「だから、俺は女から金は取らねえ主義なの。俺に恩返ししたいなら、次は平均点くらいとって見せるんだな」
「うっ…はい…」
いきなりテストの話題が出てきてげんなりする。
一学期の期末テストの結果はひと悶着もあったせいで中々湊くんに伝える機会が無かったけど、この前勇気を出して伝えてみた。
…ギリギリ赤点を回避しました、と。
冗談抜きで本当にギリギリだった。
数Bに関してはあと一問でも多く失点していたら、今ごろ先生と顔を突き合わせて大量の課題とにらめっこする羽目になっていた。
それから湊くんは思い出すたびに私のテスト結果を弄ってくるようになった。
…2学期こそは馬鹿にされないように頑張ろう。
「み、湊くん」
「んー」
「お面、大事にする、から」
「…おう」
改めてお礼を伝えると、湊くんは足早に歩いていってしまった。
「…」
「夏菜?」
「あ、ご、ごめんなさい」
湊くんの後ろ姿をじっと見つめていると、着いてこないのを不審に思ったのか湊くんが声をかけてくれた。
湊くんを追いかけながら、少しだけ距離のあるその大きな背中をじっと見つめていた。
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