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22.作戦決行【side獅童】
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***
「湊ぉ、アタシミルクティーにするね」
「うちもそれにするぅ」
「あいよ」
花音と間延びした声で話す女子、乃愛が両手に絡みついてくるのを振りほどいて財布を取り出すと、その中は今までにないくらい潤っていた。
当然だ。
今までは色んな女子と代わる代わるデートをしてて、金を出すのはすべて俺だった。
いつからかめっきり女と遊ぶことも無くなった。大地と一週間以内にどっちが多くの女とデートできるか、なんて競っていた頃が懐かしい。
別に女が大好きなわけでもないしデートという行為が好きなわけでもない。女が「獅童と遊びたい」というから付き合っていただけだ。
家でゴロゴロしてるよりは暇が潰せていい。
だが、今となっては夏菜以外の女と出かけることが億劫になった。
女の反応なんて出かける前から分かり切っている。夏菜のように新鮮な反応を見せてくれることはない。
財布から千円札を二枚取り出してトレイに置きながら、ちらりとテーブルの奥の様子をうかがう。奥では大地といつも笑っている女子の綺羅が楽しそうに談笑している。
「てかさ、このメンツで遊ぶの久しぶりじゃない?」
「だよねぇ!まじでアツいんだけどぉ」
花音の甲高い声に乃愛がコクコクと頷いている。
たしかに夏菜と関わるようになってからコイツらと遊びにいくことはめっきり無くなった。
今日だって、本当にただ遊ぶだけなら断っているだろう。
「そうだな」
「湊マジ塩対応なんだけど!溜まってんじゃない?」
「あ、ウチ今日親いないよぉ」
二人のねっとりとした視線が俺に纏わりつく。
今までならホテル代浮いてラッキーとか思いながら着いていったんだろう。
だけど、今はセーラー服から見える谷間や無遠慮に晒されている太股を見ても全く性欲が湧かなくなった。それどころか早く帰りたいとさえ思ってしまっている。
不意に夏菜の姿を思い出した。
コイツらと違って夏菜のガードは固い。もちろん谷間が見えるような制服の着方はしてないし、スカートもほとんど指定の長さのままだ。
ただアイツを抱きしめたとき、一度だけブラが見えたことがあった。大して色気もない水色のそれを俺は忘れられないでいる。
…ブラの色をいつまでも忘れられないなんて俺は中学生か。
と思いながらも手渡されたタピオカを見て、ストローに一生懸命吸い付く夏菜の唇を思い出してしまう。
二人に気付かれないよう軽くため息をついた。
「タピオカ来たぞ」
邪な感情をかき消すように軽くかぶりを振って、二人にタピオカを手渡す。
「あざーすぅ!写真撮ろぉ」
「てかみんなで撮ろ。大地と綺羅も呼んでさあ」
「俺たちだけで撮ろーぜ」
「ちょ、湊っ!」
花音と乃愛の肩に腕を回し、花音のスマホに対して顎をしゃくる。すると花音は頬を染めてまんざらでもなさそうに写真を撮っていた。
無理矢理笑顔を作りながら、思考をフル回転させる。どうにかあの二人とコイツらを分担させるような策を考えるために。
「俺カラオケ行きたいんだけど」
「え!最高!いこぉ~」
「大地と綺羅も呼ぼうよ」
そう来ると思った。
俺は二人の肩に力を籠める。
「アイツ大地のこと狙ってんだろ?そっとしといてやれよ」
「は!?なんで湊が知ってんの?」
「そんなの見てりゃわかるだろ」
これは事実だった。綺羅はいつも大地のことを熱っぽい視線で見つめている。
つまり、牙城を崩すならアイツしかいない。
『クラスの奴だ』
阿佐ヶ谷から昨日送られてきたメッセージ。
主語はなかったが、おそらく夏菜を脅している犯人の話だろう。だとしたら俺の心当たりは一つしかない。
だが、この俺でさえ決定的な証拠は何一つとして見つけられなかった。だからこそ大地と作戦を練って今日わざわざここに来ている。
大地頼むぞ、と心の中で念じてカラオケに向かった。
「湊ぉ、アタシミルクティーにするね」
「うちもそれにするぅ」
「あいよ」
花音と間延びした声で話す女子、乃愛が両手に絡みついてくるのを振りほどいて財布を取り出すと、その中は今までにないくらい潤っていた。
当然だ。
今までは色んな女子と代わる代わるデートをしてて、金を出すのはすべて俺だった。
いつからかめっきり女と遊ぶことも無くなった。大地と一週間以内にどっちが多くの女とデートできるか、なんて競っていた頃が懐かしい。
別に女が大好きなわけでもないしデートという行為が好きなわけでもない。女が「獅童と遊びたい」というから付き合っていただけだ。
家でゴロゴロしてるよりは暇が潰せていい。
だが、今となっては夏菜以外の女と出かけることが億劫になった。
女の反応なんて出かける前から分かり切っている。夏菜のように新鮮な反応を見せてくれることはない。
財布から千円札を二枚取り出してトレイに置きながら、ちらりとテーブルの奥の様子をうかがう。奥では大地といつも笑っている女子の綺羅が楽しそうに談笑している。
「てかさ、このメンツで遊ぶの久しぶりじゃない?」
「だよねぇ!まじでアツいんだけどぉ」
花音の甲高い声に乃愛がコクコクと頷いている。
たしかに夏菜と関わるようになってからコイツらと遊びにいくことはめっきり無くなった。
今日だって、本当にただ遊ぶだけなら断っているだろう。
「そうだな」
「湊マジ塩対応なんだけど!溜まってんじゃない?」
「あ、ウチ今日親いないよぉ」
二人のねっとりとした視線が俺に纏わりつく。
今までならホテル代浮いてラッキーとか思いながら着いていったんだろう。
だけど、今はセーラー服から見える谷間や無遠慮に晒されている太股を見ても全く性欲が湧かなくなった。それどころか早く帰りたいとさえ思ってしまっている。
不意に夏菜の姿を思い出した。
コイツらと違って夏菜のガードは固い。もちろん谷間が見えるような制服の着方はしてないし、スカートもほとんど指定の長さのままだ。
ただアイツを抱きしめたとき、一度だけブラが見えたことがあった。大して色気もない水色のそれを俺は忘れられないでいる。
…ブラの色をいつまでも忘れられないなんて俺は中学生か。
と思いながらも手渡されたタピオカを見て、ストローに一生懸命吸い付く夏菜の唇を思い出してしまう。
二人に気付かれないよう軽くため息をついた。
「タピオカ来たぞ」
邪な感情をかき消すように軽くかぶりを振って、二人にタピオカを手渡す。
「あざーすぅ!写真撮ろぉ」
「てかみんなで撮ろ。大地と綺羅も呼んでさあ」
「俺たちだけで撮ろーぜ」
「ちょ、湊っ!」
花音と乃愛の肩に腕を回し、花音のスマホに対して顎をしゃくる。すると花音は頬を染めてまんざらでもなさそうに写真を撮っていた。
無理矢理笑顔を作りながら、思考をフル回転させる。どうにかあの二人とコイツらを分担させるような策を考えるために。
「俺カラオケ行きたいんだけど」
「え!最高!いこぉ~」
「大地と綺羅も呼ぼうよ」
そう来ると思った。
俺は二人の肩に力を籠める。
「アイツ大地のこと狙ってんだろ?そっとしといてやれよ」
「は!?なんで湊が知ってんの?」
「そんなの見てりゃわかるだろ」
これは事実だった。綺羅はいつも大地のことを熱っぽい視線で見つめている。
つまり、牙城を崩すならアイツしかいない。
『クラスの奴だ』
阿佐ヶ谷から昨日送られてきたメッセージ。
主語はなかったが、おそらく夏菜を脅している犯人の話だろう。だとしたら俺の心当たりは一つしかない。
だが、この俺でさえ決定的な証拠は何一つとして見つけられなかった。だからこそ大地と作戦を練って今日わざわざここに来ている。
大地頼むぞ、と心の中で念じてカラオケに向かった。
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