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外された首輪【side環】
⑩
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どれくらいの時間が経ったか分からない。
ただ、自体が飲み込めず長いこと呆然としていた。
「たまきさん、好きです」
「っ、う、うそだ!!」
犬飼の声で我に返り、思わず声を荒げてしまった。
ありえない。信じられない。
私を玩具のように扱ってきたお前が、散々弄んでおいてその上「飽きた」と抜かしたお前が、私のことを好きだと?
見え見えの噓をつくのも大概にしろ。
「嘘じゃないです」
「うそ、うそに決まってるだろう!だ、だって、お前は、わ、わたしのことが」
「…今まで散々酷くしてきたから、たまきさんがおれのこと信じられないのも無理はないと思います」
犬飼が頬を撫でる。
大切なものを扱うかのような優しい手つきで。
「でも、好きになってしまったんです。分からないけど、とにかく好きなんです」
「う、うそ、だ」
「だから嘘じゃないですって。たまきさんは本当に頑固ですね」
「…うるさい」
くすくすと笑っている犬飼を咄嗟に睨みつけると、「やっとこっち向いてくれた」と目じりを下げて笑う犬飼。
コイツの顔はこんなに整っていただろうか。
「ね、さっきなんで泣いちゃったんですか」
「…目にゴミが入っただけだ」
「ふふ、おれに嫌われてると思って泣いちゃったんですよね」
「ち、ちがう!」
「顔真っ赤ですよ」
「うるさい!」
こんな理由で泣いたなんて知られたら末代までの恥だ。
しかし、どんどんと熱を帯びる顔面がそれを事実だと物語ってしまっている。
何度も違うと言っているにもかかわらず、犬飼は嬉しそうに笑っている。
「おれに好かれててよかったですね、たまきさん」
「自惚ぼれるな」
「たまきさん、好きです」
脈絡もなく告白をしてくる犬飼に調子を狂わされる。
何度「好き」と言われても、やはり信じられない。
しかし、いつも飄々としている犬飼が頬を染めながらまっすぐにこちらを見つめている姿には、少しだけ誠意が感じられた。
「なんでこんなに好きなんですかね」
「知らん、それを私に聞くな」
「そうやってツンツンしてるところも可愛いんですよね。なんでたまきさんはそんなに可愛いんですか」
「…それ以上喋るな」
駄目だ。
この男に好意を寄せられるたびに変な汗が出る。
心臓もやけにうるさい。
「…そういえば、何故あんなに深酒をしていたんだ」
咄嗟に話題を変えると、犬飼は目を丸くして驚いていた。
「分からないんですか?」
「分かるわけないだろう」
「…だから、その…」
珍しく犬飼が言葉に詰まっている。
言葉の続きを促すように見つめていると、突然犬飼の手が視界が覆ってきた。
「な、なんだ」
「いや、ちょっと…とにかく、このまま聞いてください」
咳払いをした後、深呼吸をしているような吐息が微かに聞こえてきた。
話題が話題なだけに少しの沈黙でも気まずく感じてしまう。
「…好きだと自覚してから、頭から離れなくなったんです」
「何が」
「何がって…たまきさんのことに決まってるでしょう」
「だからといって深酒をする必要はないだろう」
「…たまきさんって…筋金入りの鈍感ですよね…」
「どういう意味だ」
「………だから!アンタのことが頭から離れないせいで眠れないんですよ!だから酒飲むしかなかったんです!これでわかりましたか!!」
指と指の合間から見えた犬飼の顔は、恥ずかしさからか真っ赤になってそっぽを向いていた。
ただ、自体が飲み込めず長いこと呆然としていた。
「たまきさん、好きです」
「っ、う、うそだ!!」
犬飼の声で我に返り、思わず声を荒げてしまった。
ありえない。信じられない。
私を玩具のように扱ってきたお前が、散々弄んでおいてその上「飽きた」と抜かしたお前が、私のことを好きだと?
見え見えの噓をつくのも大概にしろ。
「嘘じゃないです」
「うそ、うそに決まってるだろう!だ、だって、お前は、わ、わたしのことが」
「…今まで散々酷くしてきたから、たまきさんがおれのこと信じられないのも無理はないと思います」
犬飼が頬を撫でる。
大切なものを扱うかのような優しい手つきで。
「でも、好きになってしまったんです。分からないけど、とにかく好きなんです」
「う、うそ、だ」
「だから嘘じゃないですって。たまきさんは本当に頑固ですね」
「…うるさい」
くすくすと笑っている犬飼を咄嗟に睨みつけると、「やっとこっち向いてくれた」と目じりを下げて笑う犬飼。
コイツの顔はこんなに整っていただろうか。
「ね、さっきなんで泣いちゃったんですか」
「…目にゴミが入っただけだ」
「ふふ、おれに嫌われてると思って泣いちゃったんですよね」
「ち、ちがう!」
「顔真っ赤ですよ」
「うるさい!」
こんな理由で泣いたなんて知られたら末代までの恥だ。
しかし、どんどんと熱を帯びる顔面がそれを事実だと物語ってしまっている。
何度も違うと言っているにもかかわらず、犬飼は嬉しそうに笑っている。
「おれに好かれててよかったですね、たまきさん」
「自惚ぼれるな」
「たまきさん、好きです」
脈絡もなく告白をしてくる犬飼に調子を狂わされる。
何度「好き」と言われても、やはり信じられない。
しかし、いつも飄々としている犬飼が頬を染めながらまっすぐにこちらを見つめている姿には、少しだけ誠意が感じられた。
「なんでこんなに好きなんですかね」
「知らん、それを私に聞くな」
「そうやってツンツンしてるところも可愛いんですよね。なんでたまきさんはそんなに可愛いんですか」
「…それ以上喋るな」
駄目だ。
この男に好意を寄せられるたびに変な汗が出る。
心臓もやけにうるさい。
「…そういえば、何故あんなに深酒をしていたんだ」
咄嗟に話題を変えると、犬飼は目を丸くして驚いていた。
「分からないんですか?」
「分かるわけないだろう」
「…だから、その…」
珍しく犬飼が言葉に詰まっている。
言葉の続きを促すように見つめていると、突然犬飼の手が視界が覆ってきた。
「な、なんだ」
「いや、ちょっと…とにかく、このまま聞いてください」
咳払いをした後、深呼吸をしているような吐息が微かに聞こえてきた。
話題が話題なだけに少しの沈黙でも気まずく感じてしまう。
「…好きだと自覚してから、頭から離れなくなったんです」
「何が」
「何がって…たまきさんのことに決まってるでしょう」
「だからといって深酒をする必要はないだろう」
「…たまきさんって…筋金入りの鈍感ですよね…」
「どういう意味だ」
「………だから!アンタのことが頭から離れないせいで眠れないんですよ!だから酒飲むしかなかったんです!これでわかりましたか!!」
指と指の合間から見えた犬飼の顔は、恥ずかしさからか真っ赤になってそっぽを向いていた。
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