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外された首輪【side環】

⑧※

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結局根負けして自白する流れになってしまった。
視線を逸らし、あわよくば聞き取られないことを願いながら小声で話した。

「…耳を、触られた」

「どんなふうに?」

ガッツリ聞こえていた。
しかも犬飼の声のトーンが確実に低くなっている。

「…詳しくは覚えていないが、み、耳たぶを触られたり、耳の中に指を突っ込まれたりした…っ!な、にもしない、って、んぅっ」

「消毒するだけです」

学習しない自分は馬鹿だ。
犬飼は右の耳たぶをみながら左の耳の穴に指を突っ込んできた。

「やだ、そこっ、んっ」

「たまきさんの「やだ」は「もっと」ですよ」

「んぅっ!そこで、しゃべるな…っ」

吐息が耳の中に入ってくるとゾクゾクして下半身が疼いた。
咄嗟に耳を抑えようとするが、するりと犬飼の手が絡みついてくる。

「しっかり消毒してあげますから」

「あっ!だめ、んあっ!」

耳の中に舌が入ってきた瞬間身体が跳ねた。
中でくちゅくちゅという音が響くと奇妙な感触に身悶える。
舌先が耳の奥をつつくたび、どんどん身体から力が抜けていく。

「反対もきれいにしますね」

「っ、も、いいから、ああっ」

意味の分からない理論で左側の耳も入念に舐め尽くされる。
耳の中は汚いから、と言ってやりたいが生憎あいにくそんな余裕はない。
認めたくないが、気持ちいいと感じてしまった。

「そういえば、たまきさんはなんでアイツと居酒屋にいたんですか」

「っは、はぁ、はぁ」

「あ、かお真っ赤。もっとなめてほしかったですか?」

「っ!そんなわけないだろう!」

突然顔を上げて愛撫を中断した犬飼に安堵する。
少しだけ残念に思ってしまったことには気付かないふりをした。

「お前は勘違いしてるみたいだが、本川からは人事部への異動に関する相談を受けていただけだ」

「ならわざわざ飲みにいく必要ないですよね」

「…それは、本川が無理矢理…」

「それに外でもめてましたよね、なにがあったんですか」

「…」

酔っぱらってるくせに目の付け所が鋭い。
何も言えなくなって黙秘を貫いていると突然指が口の中に侵入してきた。

「あ、あに」

「アンタ、そのうち本川にヤられちゃいますよ」

「あんで、あぅ」

「本当に相談だけしたいならわざわざ飲みにいく必要ないし、下心がなかったら普通耳舐めるなんてしません。もっと危機感持ってください。分かりましたか」

急に饒舌になって正論を言う犬飼に圧倒され思わず頷くと、再びふにゃと笑って顔中にキスを落としてくる。
もはやコイツのことは犬だと思って放置しておくことにした。

しかし、本川の件は犬飼の言う通りかもしれない。
コイツにだけは絶対に言えないが、たしかに本川は私をホテルに連れ込もうとしていた。
これからは安易に誘いに乗らないようにしよう。

「たまきさんはかわいいんですから、気をつけてください」

「…」

「はぁ、かわいい」

「…やめてくれ」

「なんですか」

「………その、か、可愛いとか、言うの」

頬が紅潮していくのを感じながら犬飼から視線を逸らす。
コイツは泥酔しているのだと頭では分かっていても気恥ずかしくて仕方がない。
お世辞でカッコいいと言われることは稀にあるが、可愛いと言われたことはない。
こうして変に褒められるくらいならまだ無理に組み敷かれる方がマシだ。

「かっ…」

「…?」

犬飼は「か」と呟きながら胸元を抑えて黙り込んでしまった。
やはり相当飲んで気分でも悪くなってしまったのか、と少しだけ心配になる。
犬飼の顔を覗き込んでみるが逆光で表情が見えない。

「大丈夫か…?」

「…それは反則ですよ」

「なに、んっ!!」

犬飼が口にした一言が聞き取れず、聞き返そうとしたところを唇で塞がれる。
なぜ今のタイミングでキスをされたのか分からないがとにかくやめるよう胸板を叩く。

「っは、なんだ、おまえ」

息を整えながら犬飼を睨みつけると、頬がほんのりと桃色に染まっていた。

「はぁ」

「抱きつくな!」

ため息をとともに抱きしめられる。
一通りの抵抗を試したがビクともしない犬飼に、諦めて四肢をだらりと投げ出した。
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