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あなたは俺だけの物です
⑥
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「っん…い、犬飼?」
「…やっぱりちょっと調子悪いかもしれません。俺寝ます」
突然の自覚で性行為どころではなくなった息子を引き抜く。
環さんのすぐ横に寝転んで目を瞑った。
「…」
環さんは突然の奇行におろおろしている様子だったが、しばらくして衣擦れの音とともにベッドが軋み、やがてきい、とドアが開いた。
彼女が去っていく足音を意識しないようにしながら、極力他の事を考えるよう努める。
現在深夜二時。
当たり前だが電車はない。
自宅まで歩いて帰れる距離ではないからタクシーでも掴まえて帰るんだろうか。
…結局環さんのことしか頭に浮かんでこない自分を嘲笑う。
23の人間が、自分のコントロールすらろくにできないなんて。
深いため息をつく。
俺の初恋は知らないうちに始まっていて、そして自覚した瞬間終わりを告げた。
俺は初めてを奪った上に性行為を何度も強要した強姦魔だ。
しかも彼女が神聖視している会社ですら行為に及ぶような人間だ。
そんな男を好きになることは、天地がひっくり返ってもあり得ない。
「初恋は実らない」というが、俺の場合は身体の味を知れただけよかったのかもしれない。
どうせならもっと貪っておけばよかった。
自分でも最低だと思うことばかり考えていると、再び寝室のドアが開いた。
環さんに嫌われていることなんて重々承知している。
それでも、帰宅できる状況にあるにもかかわらず、ここに留まるという選択をした彼女に一抹の期待を寄せた。
環さんの動向を聴覚で把握しながら目を瞑り続けていると、突然額に冷たいものが触れる。
「…なんですか」
「仰向けになって」
大人しく仰向けになると額に冷えたタオルを置かれた。
環さんの行動に思わず深いため息が漏れる。
たしかに俺は「調子が悪いかもしれない」と言ったが、もちろんそれは仮病だ。
この人、人を疑うということを知らないのか。
そもそも嫌いな相手を看病してどうするんだ。
「環さん、俺タクシー代出しますから帰ってください」
「…帰らない」
「俺もう大丈夫ですから。タオルありがとうございました」
タオルを目元に被せながら帰るように促す。
おそらく今俺はとても情けない顔をしているだろう。
それに、これ以上環さんがここに留まれば勘違いしてしまう。
放っといて欲しいのに。
「大丈夫じゃない。犬飼の体、熱いから」
「…もういいですから、早く帰ってくださいよ」
俺の身体が熱いのはあなたのせいだ。
あなたが俺の隣にいようとするから。
俺はベッドサイドに置いてあった財布から何枚かのお札を取り出し強引に手渡した。
もはやお札の絵柄すら気にしていなかった。
ただこの場から一刻も早く消えて欲しい、それだけだ。
「こんなに貰えない…っん!」
「…このまま犯されたくなかったら早く帰ってください」
なぜかこの場に留まろうとする環さんを唇を使って黙らせる。
しかしこの人は上目遣いをしたまま一向に動こうとしない。
次第にイライラしてきた。
何故この人はこんなに察しが悪いんだ。
「体調が悪い部下を置いて帰ることはできない」
「…環さんは本当に仕事人間ですね」
ああ、そういうことか。
あくまでも「上司として」俺を心配していただけだ。
俺は、この人が仕事人間だと分かっていたはずだ。
それなのに変に期待をしてしまった自分が悪い。
…恋というのはこんなに疲れるものなのか。
期待して、裏切られて、それでも想い続ける。
くだらない。
「…やっぱりちょっと調子悪いかもしれません。俺寝ます」
突然の自覚で性行為どころではなくなった息子を引き抜く。
環さんのすぐ横に寝転んで目を瞑った。
「…」
環さんは突然の奇行におろおろしている様子だったが、しばらくして衣擦れの音とともにベッドが軋み、やがてきい、とドアが開いた。
彼女が去っていく足音を意識しないようにしながら、極力他の事を考えるよう努める。
現在深夜二時。
当たり前だが電車はない。
自宅まで歩いて帰れる距離ではないからタクシーでも掴まえて帰るんだろうか。
…結局環さんのことしか頭に浮かんでこない自分を嘲笑う。
23の人間が、自分のコントロールすらろくにできないなんて。
深いため息をつく。
俺の初恋は知らないうちに始まっていて、そして自覚した瞬間終わりを告げた。
俺は初めてを奪った上に性行為を何度も強要した強姦魔だ。
しかも彼女が神聖視している会社ですら行為に及ぶような人間だ。
そんな男を好きになることは、天地がひっくり返ってもあり得ない。
「初恋は実らない」というが、俺の場合は身体の味を知れただけよかったのかもしれない。
どうせならもっと貪っておけばよかった。
自分でも最低だと思うことばかり考えていると、再び寝室のドアが開いた。
環さんに嫌われていることなんて重々承知している。
それでも、帰宅できる状況にあるにもかかわらず、ここに留まるという選択をした彼女に一抹の期待を寄せた。
環さんの動向を聴覚で把握しながら目を瞑り続けていると、突然額に冷たいものが触れる。
「…なんですか」
「仰向けになって」
大人しく仰向けになると額に冷えたタオルを置かれた。
環さんの行動に思わず深いため息が漏れる。
たしかに俺は「調子が悪いかもしれない」と言ったが、もちろんそれは仮病だ。
この人、人を疑うということを知らないのか。
そもそも嫌いな相手を看病してどうするんだ。
「環さん、俺タクシー代出しますから帰ってください」
「…帰らない」
「俺もう大丈夫ですから。タオルありがとうございました」
タオルを目元に被せながら帰るように促す。
おそらく今俺はとても情けない顔をしているだろう。
それに、これ以上環さんがここに留まれば勘違いしてしまう。
放っといて欲しいのに。
「大丈夫じゃない。犬飼の体、熱いから」
「…もういいですから、早く帰ってくださいよ」
俺の身体が熱いのはあなたのせいだ。
あなたが俺の隣にいようとするから。
俺はベッドサイドに置いてあった財布から何枚かのお札を取り出し強引に手渡した。
もはやお札の絵柄すら気にしていなかった。
ただこの場から一刻も早く消えて欲しい、それだけだ。
「こんなに貰えない…っん!」
「…このまま犯されたくなかったら早く帰ってください」
なぜかこの場に留まろうとする環さんを唇を使って黙らせる。
しかしこの人は上目遣いをしたまま一向に動こうとしない。
次第にイライラしてきた。
何故この人はこんなに察しが悪いんだ。
「体調が悪い部下を置いて帰ることはできない」
「…環さんは本当に仕事人間ですね」
ああ、そういうことか。
あくまでも「上司として」俺を心配していただけだ。
俺は、この人が仕事人間だと分かっていたはずだ。
それなのに変に期待をしてしまった自分が悪い。
…恋というのはこんなに疲れるものなのか。
期待して、裏切られて、それでも想い続ける。
くだらない。
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