上 下
3 / 49
副部長と初接触です

しおりを挟む
***

「おい、あれ」

「まじかよ、そんなことって…」

当たり前だが、社員食堂でも先程と同じことが起こった。
みんなが目を丸くしてこちらを凝視している。

そんな中、副部長は全く動じることなくサバの味噌煮をもぐもぐしている。
こうしてみるとハムスターみたいで可愛いかもしれない。

「サバの味噌煮好きなんですか?」

「ハンバーグよりは」

最低限の回答をした後、再びサバを咀嚼する作業に戻る副部長。
今日の社食のメニューがハンバーグかサバの味噌煮かの二択だったので、やむなくサバを選んだということだろう。
俺と話すのが嫌なのか、それとも話すこと自体が嫌いなのか…できれば後者であってほしい。
俺は副部長のあまり好きではないハンバーグを一口咀嚼した。

「小笠原副部長はなんで今日昼食ご一緒してくれたんですか?俺って副部長とほとんど接点ないのに」

これは一番の疑問だった。
おそらく部署内のみんなも同じ疑問を抱いていると思う。

副部長は口の中にあるサバを一定時間噛んだあと口を開いた。

「断る理由がなかったから」

相変わらず無表情のままそう答える。
こうして再び会話が途絶えた。

しかし俺の会話スキルを舐めてはいけない。

「新人が取っておくべき資格とかありますか?俺あんまりわからなくて」

こういうときは相手が好みそうな話題を選ぶべきだ。
副部長のことだから資格なんて知り尽くしているだろう。

「社会保険労務士。後々取得する必要があるから、早いうちに」

「あ、それ大学生のときに取りました」

「人事部を志望してたの?」

「いや、そういうわけじゃないんですけど、働くなら労働に関する法律は知っておいた方がいいかなと思って。実は俺、はじめは営業部に入る予定だったんですけど、資格を持ってるならって急遽人事部に配属になったんです。人事部は数年勤めないと異動できないと聞いていたので、1年目で人事部に来れたのはラッキーでした」

「…」

珍しく副部長から質問してくれたから調子に乗っていらないことまで話してしまった。
そしたら副部長の眉間に一瞬皺が寄った。
すぐに仏頂面に戻ったけど。
もしかして俺は副部長を怒らせてしまったかもしれない。

「ごちそうさま。犬飼くんはゆっくりしていて」

「あっ、はい」

俺が悶々としているうちに副部長は食べ終わってしまったみたいで、颯爽と食堂を去っていく。
いや、俺の方がよく喋っていたかもしれないけど、
それにしても男の俺よりはるかに食べ終わるスピードが速い。

昼飯を一緒に食べれば少しくらい副部長のことが分かるかなと思ったが、結局何の成果も得られなかったうえに好感度も下がった。



俺の口角が上がる。

面白い。
これくらい攻略難易度が高くなければつまらない。

昂った感情を何とか押さえつけながら、俺も食堂を後にした。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...