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第1話 ドM現る
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「おい、何してるんだよ! それはちょっとしたイタズラをするための道具でそうやって使うもんじゃないんだよ!」
俺の名前は明智カズヤ。事故に巻き込まれ若くして死んだ男。だが死後に自らSMプレイ両方イケると言っている美しき女神に出会い転生し、魔王を倒してほしいと言われ、異世界にやってきた。そして街の人にギルドの場所を聞いて冒険者登録をするために今ギルドに到着したのだが…………。
「い、いひゃい! これは脳天にクルものがあるぞ…………」
ギルドの扉を開いた瞬間異様な光景が目に入った。一人の女が特殊なプレイをしていたのだ。
人を騙すために使うガムを取ろうとしたら指をパチンと挟まれる『ジョークガム』で自ら指をはさみ続けている女とそれを止めようと女の肩を揺らす男。
俺は指を挟みながらハアハア言っている女を見た瞬間に悟った。
あの女、ドMだ……。
見てくれは良く、整った顔立ちをしていて、透き通るような青髪、髪色と同じ色をした蒼の眼をしている。せっかく美人でスタイルもいいのにあんな性格じゃ嫁の貰い手がなくなりそうだな。そんなことを考えながらとりあえず関わらないようにそそくさとギルドの受付に向かう。受付には一人の女性がいた。ブロンドの髪と同じ目の色で整った顔立ちをしている、これぞお姉さんといった雰囲気だ。しかしどちらかと言えば俺好みの色っぽいお姉さんではなく、元気なお姉さんといった印象が強い。少し残念だ。
俺がお姉さんの前に立つと。
「はい、冒険者登録でしょうか、素材の換金ですか?」と手慣れた感じで話しかけてきた。
俺が「冒険者登録でお願いします」と、言うと茶髪のお姉さんは一枚の紙を出し俺に差し出してきた。
「こちら冒険者登録の際に皆さんに書いていただく契約書です」
「契約書…………ですか?」
「はい、冒険者の方々の仕事は危険が常に伴いますのでもし何かの拍子にポックリ逝ってもギルドは一切責任を負いませんという内容の契約書となっております」
…………まあそうだよな。冒険者なんて魔物狩りで生計を立てて戦うことがメインの職業だ。そんな職業が危険でない訳がない。危険…………危険か、仲間を増やせば危険に晒されて死ぬ確率も減るよな…………。
「あの、すいません。冒険者になったら仲間とかは何人まで増やして良いとかってあるんですかね?」
「いえ、特には無いですが仲間が多すぎれば報酬の分配額も減ります。なので皆さんは大抵の場合四人パーティーを組んでますね。僧侶の回復役、遠距離攻撃のための魔法使い、防御を得意とする聖騎士、そして近距離攻撃のソードマスターの組み合わせのパーティーが多いですね」
そりゃそうか、冒険者の収入は不安定。相当な実力がない限り日銭を稼いでいく程度の報酬しか冒険者は稼げないだろう。俺のいた世界で言うとフリーターってやつだな。だからできるだけ人数は集めず多く報酬を手に入れ、かつ確実に死なないよう安全に魔物討伐をしなければならない。………………なんて厳しい世界だろう。深くは考えずギルドまで来てしまったが…………どうしよう、冒険者になるより普通にギルドの職員とか平社員で働いたほうが賢明なのではないだろうか。俺が心のなかで冒険者になろうかどうか思案していると。
「んっ、早くしてくださいね。私まだお昼食べてないんですからねー」
と言いながら手を組みながら背筋を伸ばし上に伸びる受付のお姉さん。その時俺は驚愕した。なんと…………この受付さん二つの巨大なメロンを隠し持っていた…………!
少しダボッとした服だったからわからなかったがこんな秘宝を隠していたとは……!
俺がお姉さんが伸びたあともしばらくの間チラチラと見ているとそれに気づいたお姉さんは頬を少し赤らめながらももう一度伸びをする。まるで俺に見せつけてくるように胸を突き出す。相手が見せてくるんだから仕方ないもっと見物させてもらおうか。
顔をズイッと近づけ巨大なメロンを鑑賞する。受付のお姉さんの顔がどんどんゆでダコのように真っ赤に染まっていく。良い気分だ。俺に見られ赤らめる頬…………大好物です!
恥ずかしがりながらも嬉しそうにしている受付さんをまじまじ見ていると俺の肩が急にガッと掴まれた。
「お、お前たちは何のプレ…………何をしているのりゃ! わたしも混ぜ……そんな破廉恥な行為はゆ、許されないぞ…………騎士として見過ごせ…………羨ましい!」
先程の指を挟んで楽しんでいた美人の騎士だった。あいも変わらずハアハアと息をきらせて興奮している。しかもどうやら俺と受付さんのプレ……やり取りが羨ましかったらしい。
俺はこのまま三人でまぐわいたいという気持ちを押し殺して。
「いや、ただ冒険者登録しようとしてただけですけど。それとも何ですか、俺がこのお姉さんとイチャイチャしてたことが許せないんですか、このドM騎士が」
「ど、ドM騎士などではない! 私はただ痛みが好きなだけだ、こう、なんだろうな体の芯に響くというか……そういったものが好きなだけな健全な騎士だ!」
「それをドMっていうんだよ」
「!」
女騎士はよろよろと近くの椅子によりかかり恍惚の表情を浮かべながら。
「な、何ということだ……私がドM? 薄々自覚してはいたがここまではっきり言ってきたやつは初めてだ……!」
こいつドMってことを『薄々』しか自覚してなかったのかよ……。しかも俺がそれをはっきり言ったからって嬉しそうな顔してやがる。もうこいつは駄目だ。無視しよう。
平凡に生きていっても良かったのだがやはり一度死んで転生したからにはリスクはあれど冒険者というものをやってみたい。
「決めました、冒険者登録をさせてください」
お姉さんは俺とドM騎士のやり取りを見ていたので平然と会話に移る俺を見て怪訝に思ったのか。
「あの、あの方は放って置いてもいいんでしょうか。お知り合いでは?」
「いえ、知らない人です。一度も見たことがない人なんで放っといても大丈夫だと思います」
受付さんは「は、はあ……」と言い、「少し待っていてください」と言いながら手で合図して奥の部屋へと入っていった。
くそ、邪魔さえ入らなければあの受付のお姉さんと何かしら発展してたかもしれないのに……。
しばらく経ったあと受付さんが一つの青みがかっている球状の水晶を手に持ち息を切らせながら帰ってきた。
「すいませんおまたせしちゃって」
俺は受付さんが持っている水晶を不思議に思って。
「なんですかこれは?」
と、質問すると受付さんはニコッと笑い。
「これは体の一部を触れさせるとその人の身体能力、魔力量、潜在能力などなどの能力値が分かる装置です。あなたが来る直前に自分の力を確かめたいと言う一人の魔法使いさんがカンストさせて破壊しちゃったので奥から持って来たんですよ。パラチパラが踏んでも壊れないって有名なんですがね……」
パラチパラが踏んでも壊れないものをカンストさせておまけに破壊した? どんな魔法使いだよ……。
………………というかパラチパラってなんだ。なんか納得しちゃったよ俺。象が踏んでも壊れない的な言い方で言わないでくれるかな。
俺は水晶に手をかざす前に契約書にサインをするように言われたので素直にサインする。明智カズヤっと。羽ペンで書くのは初めてなので少し字体が崩れてしまったが…………。
すると受付さんは不思議そうに契約書を見て口を開けていた。
なにか不手際でもあったのか。
「どうしたんですか?」
「いえ、この字は私読めないんですが……」
しまった……ここは日本じゃない。転生特典とやらで意思疎通はできるんだがな。でも文字は別なのか…………? 詐欺じゃね? まあそれは置いといて。どうしよう、日本語以外書けないぞ。あっそうだ。
「これで読めますか?」
「読めますが見たことのない字です。なんで私読めるんでしょうか?」
受付さんは見たこともない字のはずなのに読めることに困惑しながら書類に手を取る。俺が書いた字は筆記体。昔カッコイイと思い練習に練習を重ね結局使ったことはなかった。正直過去の自分を褒めてあげたい。黒歴史が功を奏するとは思いもよらなかった。やっぱり人生なんでもしておくもんだな。
冒険者登録の契約書を受付さんが判を押したのでこれで正式に冒険者になることができる。
「それではこちらの水晶に手を当てて下さい。私が良いと言うまで水晶から手を離さないでくださいね。しっかり計測できませんから」
「はい」
俺は受付さんの指示に従い早速手を水晶にあてた。掌全体に伝わる水晶の清涼感ある冷たさが心地良い。十数秒ほど経っただろうか。
「はい、手を離してもらっても大丈夫ですよー」
と、受付さんが言う。
水晶から手を離した時何やら水晶の上に文字が現れた。文字が読めないのでそのまま黙っていると受付さんが読み上げてくれた。おそらくだがこの世界に読み書きができる冒険者は少ないのだろう。
「そうですね。明智さんの総合的な能力は…………」
受付さんが引きつったような顔をして口をつぐんでいる。というか口を押さえて目に涙を浮かべている。
何だよ、気になるじゃないか。まさか、俺の能力が高すぎて感動してるとかか?
俺は心でワクワクしながらも平静を装い受付さんに聞く。
「あのぉ、すいません。俺の能力値ってどうでした?」少しにやけて声が裏返ってしまったが気にしない。
「明智さんの能力値は平均です…………。しかもなんの面白みのない見本のような能力値です…………」
……………………。
「み、見本のようなってそれっていい意味ですよね! そうですよ…………ね?」
首を無言でフルフルと振る受付さん。
俺はなんとか良いところが無いか模索するために。
「平均を越してるところとかはありませんか?」
ホントお願いします。俺異世界に転生してまでクソ雑魚フリーターは嫌なんです。
「あっ、ありましたよ明智さん! 明智さんが他の人よりズバ抜けて能力が高いところ!」
「え! どこですか!?」
「オリジナル能力というもので何の能力が付くかは人それぞれなんですが……明智さんは魔力量が高いです。高すぎます!」
「えっ、マジですか! じゃあ俺凄い魔力持ってるってことですよね! じゃあとんでもない魔法使えたりとかって…………」
「できません」
「!」
「オリジナル能力でない部分にも魔力量の表記はされています。明智さんのオリジナル能力でない魔力量の方は変わらず平均です。こちらのオリジナル能力の方に書かれている魔力量は魔法に使うことのできない魔力量。明智さんは使えない魔力を持っているだけでそれを魔法使うことができないんです」
「じゃあ俺は魔法こそ使えるけどオリジナル能力の方の魔力は使えないという…………」
「そうですね」。
何だよそれ。超いらねぇじゃん。というか何? 俺って女神様に転生させてもらったんだよね?
俺は他にも高い能力はないのかと受付さんに聞くと苦い顔をしながらコクリと頷いた。俺は肩を落としながら受付さんから冒険者の身分を証明する冒険者カードなるものを貰った。クエストでも受けようかと依頼が大量に張り付けられているボードに向かおうとすると先程まで倒れていた女騎士が。
「どうやら冒険者になったみたいだな」
「ああ、というか、まだいたのか」
「くっ何という扱い…………!」
女騎士が腕を自分の体に巻き付かせながら頬を赤らめる。
俺は受付のお姉さんみたいなドMを隠しながらもいざとなったら本性を出してくるような人が好きなんだよ。こんなあからさまなドMは好きじゃない。
「で、俺にもう一度話しかけてきたのは理由があるんだろ。俺を待っていたのかあれから興奮しすぎて倒れこんでたのかどっちなんだよ」
「両方だ」
………………。
「な、何だその目は! また興奮してしまうではないか! とりあえずば、場所を変えよう。ここじゃなんだ、何か飲みながら話そうじゃないか。奢るよ」
そう言うと女騎士は手招きしギルド内にある酒場のスペースに俺を呼んだ。
「これとこれを私とこっちの男に頼む」
「はい分かりましたー。ごゆっくりー」
女騎士が何かを注文すると手を組みテーブルの上に肘を置き。
「さあ、本題と行こうか。私は今仲間が欲しいんだ。だから君とぜひパーティーを…………」
「嫌です」
「ま、まだ詳細を……話してないじゃないか」
体を少しビクつかせながら少し顔が赤く染まっている。
お、何とか耐えてるな。それほど真剣なのか。
仕方ない話くらい聞いてやるか。
「で、もしもだ。もしも俺があんたのパーティーに入ったらどうなるんだ、俺に得でもあるのか?」
女騎士はコクリと頷き得があることを示す。
指を二本立て。
「二つだ、二つ君にメリットがある。一つ目は私とパーティーを組んで受けたクエストの報酬は六……七割君にあげよう。残りは私の取り分だ」
ほう、中々良い提案だな。本来なら山分けだが少し多く貰える分俺は得なわけか。
乗っても良いかもしれない。
「二つ目は私を自由にできる権利だ。私を君の所有物として……」
「そっちは良いや」
「な、なんと! 私を自由にできる権利だぞ! 良いのか!? 今を逃せばもうこんな機会は……」
「いらないです」
「はう! 何という仕打ち!」
やっぱりパーティー組むのやめようかな…………。なんか面倒なことになりそうだし。でも取り分が二割り増しは大きい。…………よし。
「良いぞ、パーティー組んでも」
女騎士は俺の手を両手で掴み、パアっと明るく笑う。
「ほ、本当か! 他のパーティーに断られ続けて数百件、やっと私にも仲間が…………!」
…………苦労したんだな。仕方ないこいつとやっていくとしますか。
「俺は明智カズヤだ。これからよろしくな。
女騎士は片手を硬い鎧の胸に当て、モジモジしながら。
「私はセレス。気軽にセレスと呼んでくれ。…………も、もしくは豚と呼んでもらっても……」
「それは嫌だ」
「はう! やはり私の目に狂いはなかった!」
…………これからこいつとパーティーを組むのか、不安だな。
俺の名前は明智カズヤ。事故に巻き込まれ若くして死んだ男。だが死後に自らSMプレイ両方イケると言っている美しき女神に出会い転生し、魔王を倒してほしいと言われ、異世界にやってきた。そして街の人にギルドの場所を聞いて冒険者登録をするために今ギルドに到着したのだが…………。
「い、いひゃい! これは脳天にクルものがあるぞ…………」
ギルドの扉を開いた瞬間異様な光景が目に入った。一人の女が特殊なプレイをしていたのだ。
人を騙すために使うガムを取ろうとしたら指をパチンと挟まれる『ジョークガム』で自ら指をはさみ続けている女とそれを止めようと女の肩を揺らす男。
俺は指を挟みながらハアハア言っている女を見た瞬間に悟った。
あの女、ドMだ……。
見てくれは良く、整った顔立ちをしていて、透き通るような青髪、髪色と同じ色をした蒼の眼をしている。せっかく美人でスタイルもいいのにあんな性格じゃ嫁の貰い手がなくなりそうだな。そんなことを考えながらとりあえず関わらないようにそそくさとギルドの受付に向かう。受付には一人の女性がいた。ブロンドの髪と同じ目の色で整った顔立ちをしている、これぞお姉さんといった雰囲気だ。しかしどちらかと言えば俺好みの色っぽいお姉さんではなく、元気なお姉さんといった印象が強い。少し残念だ。
俺がお姉さんの前に立つと。
「はい、冒険者登録でしょうか、素材の換金ですか?」と手慣れた感じで話しかけてきた。
俺が「冒険者登録でお願いします」と、言うと茶髪のお姉さんは一枚の紙を出し俺に差し出してきた。
「こちら冒険者登録の際に皆さんに書いていただく契約書です」
「契約書…………ですか?」
「はい、冒険者の方々の仕事は危険が常に伴いますのでもし何かの拍子にポックリ逝ってもギルドは一切責任を負いませんという内容の契約書となっております」
…………まあそうだよな。冒険者なんて魔物狩りで生計を立てて戦うことがメインの職業だ。そんな職業が危険でない訳がない。危険…………危険か、仲間を増やせば危険に晒されて死ぬ確率も減るよな…………。
「あの、すいません。冒険者になったら仲間とかは何人まで増やして良いとかってあるんですかね?」
「いえ、特には無いですが仲間が多すぎれば報酬の分配額も減ります。なので皆さんは大抵の場合四人パーティーを組んでますね。僧侶の回復役、遠距離攻撃のための魔法使い、防御を得意とする聖騎士、そして近距離攻撃のソードマスターの組み合わせのパーティーが多いですね」
そりゃそうか、冒険者の収入は不安定。相当な実力がない限り日銭を稼いでいく程度の報酬しか冒険者は稼げないだろう。俺のいた世界で言うとフリーターってやつだな。だからできるだけ人数は集めず多く報酬を手に入れ、かつ確実に死なないよう安全に魔物討伐をしなければならない。………………なんて厳しい世界だろう。深くは考えずギルドまで来てしまったが…………どうしよう、冒険者になるより普通にギルドの職員とか平社員で働いたほうが賢明なのではないだろうか。俺が心のなかで冒険者になろうかどうか思案していると。
「んっ、早くしてくださいね。私まだお昼食べてないんですからねー」
と言いながら手を組みながら背筋を伸ばし上に伸びる受付のお姉さん。その時俺は驚愕した。なんと…………この受付さん二つの巨大なメロンを隠し持っていた…………!
少しダボッとした服だったからわからなかったがこんな秘宝を隠していたとは……!
俺がお姉さんが伸びたあともしばらくの間チラチラと見ているとそれに気づいたお姉さんは頬を少し赤らめながらももう一度伸びをする。まるで俺に見せつけてくるように胸を突き出す。相手が見せてくるんだから仕方ないもっと見物させてもらおうか。
顔をズイッと近づけ巨大なメロンを鑑賞する。受付のお姉さんの顔がどんどんゆでダコのように真っ赤に染まっていく。良い気分だ。俺に見られ赤らめる頬…………大好物です!
恥ずかしがりながらも嬉しそうにしている受付さんをまじまじ見ていると俺の肩が急にガッと掴まれた。
「お、お前たちは何のプレ…………何をしているのりゃ! わたしも混ぜ……そんな破廉恥な行為はゆ、許されないぞ…………騎士として見過ごせ…………羨ましい!」
先程の指を挟んで楽しんでいた美人の騎士だった。あいも変わらずハアハアと息をきらせて興奮している。しかもどうやら俺と受付さんのプレ……やり取りが羨ましかったらしい。
俺はこのまま三人でまぐわいたいという気持ちを押し殺して。
「いや、ただ冒険者登録しようとしてただけですけど。それとも何ですか、俺がこのお姉さんとイチャイチャしてたことが許せないんですか、このドM騎士が」
「ど、ドM騎士などではない! 私はただ痛みが好きなだけだ、こう、なんだろうな体の芯に響くというか……そういったものが好きなだけな健全な騎士だ!」
「それをドMっていうんだよ」
「!」
女騎士はよろよろと近くの椅子によりかかり恍惚の表情を浮かべながら。
「な、何ということだ……私がドM? 薄々自覚してはいたがここまではっきり言ってきたやつは初めてだ……!」
こいつドMってことを『薄々』しか自覚してなかったのかよ……。しかも俺がそれをはっきり言ったからって嬉しそうな顔してやがる。もうこいつは駄目だ。無視しよう。
平凡に生きていっても良かったのだがやはり一度死んで転生したからにはリスクはあれど冒険者というものをやってみたい。
「決めました、冒険者登録をさせてください」
お姉さんは俺とドM騎士のやり取りを見ていたので平然と会話に移る俺を見て怪訝に思ったのか。
「あの、あの方は放って置いてもいいんでしょうか。お知り合いでは?」
「いえ、知らない人です。一度も見たことがない人なんで放っといても大丈夫だと思います」
受付さんは「は、はあ……」と言い、「少し待っていてください」と言いながら手で合図して奥の部屋へと入っていった。
くそ、邪魔さえ入らなければあの受付のお姉さんと何かしら発展してたかもしれないのに……。
しばらく経ったあと受付さんが一つの青みがかっている球状の水晶を手に持ち息を切らせながら帰ってきた。
「すいませんおまたせしちゃって」
俺は受付さんが持っている水晶を不思議に思って。
「なんですかこれは?」
と、質問すると受付さんはニコッと笑い。
「これは体の一部を触れさせるとその人の身体能力、魔力量、潜在能力などなどの能力値が分かる装置です。あなたが来る直前に自分の力を確かめたいと言う一人の魔法使いさんがカンストさせて破壊しちゃったので奥から持って来たんですよ。パラチパラが踏んでも壊れないって有名なんですがね……」
パラチパラが踏んでも壊れないものをカンストさせておまけに破壊した? どんな魔法使いだよ……。
………………というかパラチパラってなんだ。なんか納得しちゃったよ俺。象が踏んでも壊れない的な言い方で言わないでくれるかな。
俺は水晶に手をかざす前に契約書にサインをするように言われたので素直にサインする。明智カズヤっと。羽ペンで書くのは初めてなので少し字体が崩れてしまったが…………。
すると受付さんは不思議そうに契約書を見て口を開けていた。
なにか不手際でもあったのか。
「どうしたんですか?」
「いえ、この字は私読めないんですが……」
しまった……ここは日本じゃない。転生特典とやらで意思疎通はできるんだがな。でも文字は別なのか…………? 詐欺じゃね? まあそれは置いといて。どうしよう、日本語以外書けないぞ。あっそうだ。
「これで読めますか?」
「読めますが見たことのない字です。なんで私読めるんでしょうか?」
受付さんは見たこともない字のはずなのに読めることに困惑しながら書類に手を取る。俺が書いた字は筆記体。昔カッコイイと思い練習に練習を重ね結局使ったことはなかった。正直過去の自分を褒めてあげたい。黒歴史が功を奏するとは思いもよらなかった。やっぱり人生なんでもしておくもんだな。
冒険者登録の契約書を受付さんが判を押したのでこれで正式に冒険者になることができる。
「それではこちらの水晶に手を当てて下さい。私が良いと言うまで水晶から手を離さないでくださいね。しっかり計測できませんから」
「はい」
俺は受付さんの指示に従い早速手を水晶にあてた。掌全体に伝わる水晶の清涼感ある冷たさが心地良い。十数秒ほど経っただろうか。
「はい、手を離してもらっても大丈夫ですよー」
と、受付さんが言う。
水晶から手を離した時何やら水晶の上に文字が現れた。文字が読めないのでそのまま黙っていると受付さんが読み上げてくれた。おそらくだがこの世界に読み書きができる冒険者は少ないのだろう。
「そうですね。明智さんの総合的な能力は…………」
受付さんが引きつったような顔をして口をつぐんでいる。というか口を押さえて目に涙を浮かべている。
何だよ、気になるじゃないか。まさか、俺の能力が高すぎて感動してるとかか?
俺は心でワクワクしながらも平静を装い受付さんに聞く。
「あのぉ、すいません。俺の能力値ってどうでした?」少しにやけて声が裏返ってしまったが気にしない。
「明智さんの能力値は平均です…………。しかもなんの面白みのない見本のような能力値です…………」
……………………。
「み、見本のようなってそれっていい意味ですよね! そうですよ…………ね?」
首を無言でフルフルと振る受付さん。
俺はなんとか良いところが無いか模索するために。
「平均を越してるところとかはありませんか?」
ホントお願いします。俺異世界に転生してまでクソ雑魚フリーターは嫌なんです。
「あっ、ありましたよ明智さん! 明智さんが他の人よりズバ抜けて能力が高いところ!」
「え! どこですか!?」
「オリジナル能力というもので何の能力が付くかは人それぞれなんですが……明智さんは魔力量が高いです。高すぎます!」
「えっ、マジですか! じゃあ俺凄い魔力持ってるってことですよね! じゃあとんでもない魔法使えたりとかって…………」
「できません」
「!」
「オリジナル能力でない部分にも魔力量の表記はされています。明智さんのオリジナル能力でない魔力量の方は変わらず平均です。こちらのオリジナル能力の方に書かれている魔力量は魔法に使うことのできない魔力量。明智さんは使えない魔力を持っているだけでそれを魔法使うことができないんです」
「じゃあ俺は魔法こそ使えるけどオリジナル能力の方の魔力は使えないという…………」
「そうですね」。
何だよそれ。超いらねぇじゃん。というか何? 俺って女神様に転生させてもらったんだよね?
俺は他にも高い能力はないのかと受付さんに聞くと苦い顔をしながらコクリと頷いた。俺は肩を落としながら受付さんから冒険者の身分を証明する冒険者カードなるものを貰った。クエストでも受けようかと依頼が大量に張り付けられているボードに向かおうとすると先程まで倒れていた女騎士が。
「どうやら冒険者になったみたいだな」
「ああ、というか、まだいたのか」
「くっ何という扱い…………!」
女騎士が腕を自分の体に巻き付かせながら頬を赤らめる。
俺は受付のお姉さんみたいなドMを隠しながらもいざとなったら本性を出してくるような人が好きなんだよ。こんなあからさまなドMは好きじゃない。
「で、俺にもう一度話しかけてきたのは理由があるんだろ。俺を待っていたのかあれから興奮しすぎて倒れこんでたのかどっちなんだよ」
「両方だ」
………………。
「な、何だその目は! また興奮してしまうではないか! とりあえずば、場所を変えよう。ここじゃなんだ、何か飲みながら話そうじゃないか。奢るよ」
そう言うと女騎士は手招きしギルド内にある酒場のスペースに俺を呼んだ。
「これとこれを私とこっちの男に頼む」
「はい分かりましたー。ごゆっくりー」
女騎士が何かを注文すると手を組みテーブルの上に肘を置き。
「さあ、本題と行こうか。私は今仲間が欲しいんだ。だから君とぜひパーティーを…………」
「嫌です」
「ま、まだ詳細を……話してないじゃないか」
体を少しビクつかせながら少し顔が赤く染まっている。
お、何とか耐えてるな。それほど真剣なのか。
仕方ない話くらい聞いてやるか。
「で、もしもだ。もしも俺があんたのパーティーに入ったらどうなるんだ、俺に得でもあるのか?」
女騎士はコクリと頷き得があることを示す。
指を二本立て。
「二つだ、二つ君にメリットがある。一つ目は私とパーティーを組んで受けたクエストの報酬は六……七割君にあげよう。残りは私の取り分だ」
ほう、中々良い提案だな。本来なら山分けだが少し多く貰える分俺は得なわけか。
乗っても良いかもしれない。
「二つ目は私を自由にできる権利だ。私を君の所有物として……」
「そっちは良いや」
「な、なんと! 私を自由にできる権利だぞ! 良いのか!? 今を逃せばもうこんな機会は……」
「いらないです」
「はう! 何という仕打ち!」
やっぱりパーティー組むのやめようかな…………。なんか面倒なことになりそうだし。でも取り分が二割り増しは大きい。…………よし。
「良いぞ、パーティー組んでも」
女騎士は俺の手を両手で掴み、パアっと明るく笑う。
「ほ、本当か! 他のパーティーに断られ続けて数百件、やっと私にも仲間が…………!」
…………苦労したんだな。仕方ないこいつとやっていくとしますか。
「俺は明智カズヤだ。これからよろしくな。
女騎士は片手を硬い鎧の胸に当て、モジモジしながら。
「私はセレス。気軽にセレスと呼んでくれ。…………も、もしくは豚と呼んでもらっても……」
「それは嫌だ」
「はう! やはり私の目に狂いはなかった!」
…………これからこいつとパーティーを組むのか、不安だな。
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