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2章
お家の時間
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おじいちゃんの家に行けるワクワクと、お母さんやさやかに申し訳ないと思う気持ちがせめぎあっている。
それでも、おじいちゃんの家に行けるという期待はムクムクと膨れている。
久しぶりに会ったみーちゃんのお陰で、一緒にお出かけすることもそうだった。
「のぞみ?」
お母さんの言葉にハッとする。
ぼーっとしている場合じゃない。
夜ごはんの空間で急に問いかけられ、向かいに座るお母さんを見る。
「はい!」
「試験で疲れたかしら?」
「あの、そこまででは、その…」
「おねえ?」
横にいたさやかが、間に入る。
「なぁに?」
「明日の泊まり、本当に楽しみにしてるの?」
思いもよらないさやかの言葉に、違う意味で固まる。
さやかに視線を合わせていたため、視界の端にお母さんが見える。
「さやか…」
お母さんの困ったような声に、私は微かに否定する。
「ち、違うよ。楽しみに、してる…よ?」
「本当に?あの人に無理に誘われて断れないんじゃないの?」
「そんなことは!…ない、けど」
楽しみ、と言い切れない自分。
おじいちゃんの家に行くことは、私にとっては楽しみだけれど、さやかにとってはどうなんだろう。
智ちゃんとお出かけをするだけでも、さやかの機嫌は悪くなる。
『私よりもあの人達の方が良いんだ』
そう言って拗ねてしまうさやか。
だから、智ちゃんやみーちゃんと会うことは楽しみなのに、さやかには言えない私がいる。
「…さやか、のぞみは私達に気を遣っているから」
お母さんの苦笑する姿に、さやかから視線をお母さんに戻す。
「気を遣っているわけじゃ…」
「のぞみ、ごめんなさいね」
お母さんの言葉に、そんなことないと今度ははっきりと首を振る。
「何で?お母さんが謝ることなんて…」
「本当は、もっとのぞみが向こうのお家に行けるようにした方が良いんだろうけど…どうしても心配で」
お母さんの言葉に、ゆるゆると首を振る。
「違うでしょ?あの人達がおねえのことを家に引き留めることが心配なんでしょ?」
「こら、さやか…」
やっぱりお母さんの困ったような顔に、私はどう言えば良いのか分からなくなる。
「おねえもさ、本当にあの人達と一緒で楽しいの?」
さやかは心配しているだけだ。
さやかに対してそっけない2人を知っているから、私にもそうなんじゃないかと思っている。
向こうのお家で、私が寂しい思いをしていないか心配しているだけなんだ。
私がぎこちないこともあって、さやかにそれが伝わっていない。
言い方はきついけれど、私が無理をしていないかを知ろうとしてくれている。
いつもは上手に言えなくて、さやかに心配をかけていたけれど…。
乃田さんや布之さん、高杉君の顔を思い出す。
私が3人とみーちゃんを選べなくても怒らなかったことを。
それなら…。
さやかの言葉に、頷いても良いのかな。
「おねえ?」
だけど、今日喜んでくれたみーちゃんの嬉しそうな顔を思い出す。
「うん…、楽しいよ。さやかと、一緒にいると嬉しく…なるように、智ちゃんやみーちゃんと…一緒にいると、温かくて嬉しくなる…の」
考えながら言う言葉に、さやかは何とも言えない顔をした。
怒らせてしまったのかと思って、何かを言おうとするけれど『もう良い』とさやかはごはんを食べ始めた。
「おねえが困ってないなら別に良い!お母さん、おかわり!」
「あらあら、今日もたくさん動いたのね」
ほっとしたようなお母さんが、さやかのお茶碗を受け取る。
お母さんが私を見ながら、にこりと笑った。
「のぞみはたくさんお勉強したから、頭を休めないとね。向こうのお家でゆっくりすると良いわ」
「…はい。ありがとう、お母さん、さやか」
夜も静かなさやかは、私にくっついて過ごした。
週末に私がいないことで、寂しいと思ってくれていると感じて安心する私がいた。
それでも、おじいちゃんの家に行けるという期待はムクムクと膨れている。
久しぶりに会ったみーちゃんのお陰で、一緒にお出かけすることもそうだった。
「のぞみ?」
お母さんの言葉にハッとする。
ぼーっとしている場合じゃない。
夜ごはんの空間で急に問いかけられ、向かいに座るお母さんを見る。
「はい!」
「試験で疲れたかしら?」
「あの、そこまででは、その…」
「おねえ?」
横にいたさやかが、間に入る。
「なぁに?」
「明日の泊まり、本当に楽しみにしてるの?」
思いもよらないさやかの言葉に、違う意味で固まる。
さやかに視線を合わせていたため、視界の端にお母さんが見える。
「さやか…」
お母さんの困ったような声に、私は微かに否定する。
「ち、違うよ。楽しみに、してる…よ?」
「本当に?あの人に無理に誘われて断れないんじゃないの?」
「そんなことは!…ない、けど」
楽しみ、と言い切れない自分。
おじいちゃんの家に行くことは、私にとっては楽しみだけれど、さやかにとってはどうなんだろう。
智ちゃんとお出かけをするだけでも、さやかの機嫌は悪くなる。
『私よりもあの人達の方が良いんだ』
そう言って拗ねてしまうさやか。
だから、智ちゃんやみーちゃんと会うことは楽しみなのに、さやかには言えない私がいる。
「…さやか、のぞみは私達に気を遣っているから」
お母さんの苦笑する姿に、さやかから視線をお母さんに戻す。
「気を遣っているわけじゃ…」
「のぞみ、ごめんなさいね」
お母さんの言葉に、そんなことないと今度ははっきりと首を振る。
「何で?お母さんが謝ることなんて…」
「本当は、もっとのぞみが向こうのお家に行けるようにした方が良いんだろうけど…どうしても心配で」
お母さんの言葉に、ゆるゆると首を振る。
「違うでしょ?あの人達がおねえのことを家に引き留めることが心配なんでしょ?」
「こら、さやか…」
やっぱりお母さんの困ったような顔に、私はどう言えば良いのか分からなくなる。
「おねえもさ、本当にあの人達と一緒で楽しいの?」
さやかは心配しているだけだ。
さやかに対してそっけない2人を知っているから、私にもそうなんじゃないかと思っている。
向こうのお家で、私が寂しい思いをしていないか心配しているだけなんだ。
私がぎこちないこともあって、さやかにそれが伝わっていない。
言い方はきついけれど、私が無理をしていないかを知ろうとしてくれている。
いつもは上手に言えなくて、さやかに心配をかけていたけれど…。
乃田さんや布之さん、高杉君の顔を思い出す。
私が3人とみーちゃんを選べなくても怒らなかったことを。
それなら…。
さやかの言葉に、頷いても良いのかな。
「おねえ?」
だけど、今日喜んでくれたみーちゃんの嬉しそうな顔を思い出す。
「うん…、楽しいよ。さやかと、一緒にいると嬉しく…なるように、智ちゃんやみーちゃんと…一緒にいると、温かくて嬉しくなる…の」
考えながら言う言葉に、さやかは何とも言えない顔をした。
怒らせてしまったのかと思って、何かを言おうとするけれど『もう良い』とさやかはごはんを食べ始めた。
「おねえが困ってないなら別に良い!お母さん、おかわり!」
「あらあら、今日もたくさん動いたのね」
ほっとしたようなお母さんが、さやかのお茶碗を受け取る。
お母さんが私を見ながら、にこりと笑った。
「のぞみはたくさんお勉強したから、頭を休めないとね。向こうのお家でゆっくりすると良いわ」
「…はい。ありがとう、お母さん、さやか」
夜も静かなさやかは、私にくっついて過ごした。
週末に私がいないことで、寂しいと思ってくれていると感じて安心する私がいた。
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