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朝の説得
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次の日、無事に熱は下がった。
目が覚めて、スッキリとした気分にホッとする。
まだ、明るくなる前の時刻。
和室で目を覚ました私は、そっと2階の自室に戻った。
今日の時間割を確認し、登校の準備を済ませる。
1階に降りると、少し怒っているようなさやかがいた。
「おはよう、さやか」
制服を着ている私を見て、学校に行くつもりなのだと分かったのだろう。
「何で?今日も休みじゃないの?」
「おはよう、のぞみ。もう大丈夫なの?」
「おはよう、お母さん。はい、大丈夫です」
お母さんと挨拶をしていると、さやかが「おはよう」と小さい声で挨拶してくれた。
「ねえ、おねえ?学校に行くの?」
「熱は下がったから、行けると思うの」
お母さんが何て言うか少し不安だけど、行けると信じている私がいる。
「お母さん?また、おねえが学校に行きたいって。今日は、休みだよね?」
さやかの問いかけに、お母さんは困ったように笑った。
「お母さん!?」
さやかの“まさか”という響きに、お母さんは苦笑しながら頷いた。
「のぞみが行きたいと言っているのなら、登校できるでしょうね」
「えー?何で!?」
「さやかは、のぞみのことが心配なんだろうけれど、のぞみはさやかのお姉ちゃんなのよ?」
「だから!?」
「確かに、最近は怪我が多いけれど…。昨日、病気ではないとお医者様に言われているから大丈夫よ」
「ねえ!理由になってない!」
「さやか?のぞみが学校に行くのが嫌なの?のぞみは、学校が好きなのに?行っちゃいけないの?」
お母さんのゆっくりとした言葉に、さやかがぎゅっと口を尖らせた。
「のぞみは、好きなことをしてはいけないの?」
「…そんなこと言ってない」
「そう?のぞみの登校を、嫌がっているように聞こえるわ」
「だって、昨日…熱があったし、今日も無理をしたら熱が出ちゃわないか心配なんだもん」
「そうね、のぞみが熱を出さないか、お母さんも心配しているわ。だけど、のぞみが大丈夫って言うから、お母さんは応援したいと思っているの」
お母さんの言葉で、私の味方をしてくれていることに気付く。
「だけど、のぞみが無理をしないか、お母さんもドキドキしているのよ?だから、今日は早めにお迎えに行かないとって、頑張るつもりよ」
「本当に?おねえのこと、ちゃんとお迎えに行ってくれる?」
「えぇ、勿論」
「…分かった。じゃあ、おねえのこと、私も応援する」
さやかが、渋々と言った口調でそう言った。
「ありがとう、さやか」
「ううん。でも、おねえ、本当に学校行きたいの?」
「うん!」
私の勢いに、さやかは「なら良い」と言い朝食を食べ始めた。
さやかは、私に学校に行ってほしくないんじゃなくて、怪我をしないか、熱を出さないか心配しているだけ。
それが分かっただけでも安心した。
さやかの目の前に並んでいる朝食。
大きなオムレツがどんどんと無くなって行く。
「おいしい?」
「うん」
「サラダも食べたし、カフェオレも飲んだし、パンだって全種類食べたし、おなかいっぱい。後はデザートのヨーグルトだけ」
さやかは、喋っていてもパクパクと食べている。
乃田さんみたい。
機嫌が直ったことに、ホッとする。
「今日は、早く帰って来るから」
「本当?おねえ、絶対だよ?」
「うん」
ようやく、さやかが笑顔になった。
しっかり食事をして、元気になったみたい。
毎朝の恒例になっている、湿布薬交換をすることに気持ちが向いたみたいだった。
新しく交換した湿布薬で、色々な所がスースーしている。
「じゃ、行ってきます」
さやかが満足そうに先に登校した。
「のぞみ?今日は、パンはどのくらい食べられるかしら?オムレツの中身は何が良い?」
お母さんの言葉で、“そうだった”と思い出す。
今日の朝食は、オムレツだった。
さやかが食べているのを見て、何が良いだろうと考える。
「チーズ?ウィンナー?お野菜もあるけど」
お母さんは、卵のお料理が得意だ。
特にオムレツは、綺麗にふわふわでとてもおいしくて、私とさやかのお気に入りだった。
「さやかは…」
「“全入れ”って言っていたんでしょう?」
私の言葉に、お母さんがふっと笑った。
さやかのオムレツは、とてもボリュームがあった。
パンパンに膨らんでいるのを、ちらりと眺めていた自分。
ホテルで泊まった時に、プロの人が作ってくれるオムレツと一緒。
その時に入れられる食材を全て入れて、中身がたくさんのオムレツが良いみたい。
朝食のビュッフェでも、必ず「全部入れてください」と言っているさやか。
ホテルで作ってくれるオムレツも勿論おいしいけれど、お母さんが作るものも、とてもおいしい。
時々作ってくれるオムレツは、私もさやかもウキウキしてしまう朝食だ。
私は、中身を入れていないそのままの物か、その時のお野菜を1つか2つ入れてもらうことが多かった。
ホテルでも、家でも。
中身が無くても充分おいしいから。
でも、今日は…。
今日は、しっかりとみんなとお話をしたい。
そう決めたんだ。
昨日、お母さんにごはんを食べていないことを、心配されていた。
だから、まずは心配されないようにちゃんと食べないと。
学校で頑張れるように、朝からきちんと食べよう。
「わ、私も、全入れが良い」
さやかのマネをする。
お母さんが驚いたような顔をした。
「結構、大きくなるけれど、食べられそうかしら?」
言われて、すぐにひるむ私。
「パンは、いらないかもしれない…。でも…」
私の悩む声に、お母さんは「そうね」と言った。
テーブルに置いてある、バスケットにパンが入っている。
小さめのパンは、何個か種類があった。
ミニクロワッサン、バターロール、小さいサイズの食パン。
食パンは、お母さんが作った物だ。
「でも、食パンは食べたいかも…」
私の呟きに、お母さんがふふっと笑った。
私が選ぶことを、知っていたような笑い方だった。
だって、私はお母さんの作る食パンが好きだから。
「じゃあ、小さめのオムレツにしましょう?お野菜は、ポテトと人参、ほうれん草もあるけれど」
お母さんがお皿に並んだ、お野菜を見せてくれた。
「量は少しで」
ポテトと人参は、小さくサイコロ状になっていた。
「チーズも、少し…にしてほしい」
お皿に並んでいるのを見ると、少し多く見えたから慌ててそう伝える。
お母さんはクスクス笑っていた。
「大丈夫よ?このお皿の物、全部入れるわけじゃないんだから…」
安心させるようなお母さんの言葉に、コクコクと頷く。
「じゃあ、少しずつ入れるわね」
お母さんは機嫌が良さそうに、お料理を始めた。
バターの溶ける良い香りが広がる。
ジュワッという大きな音がして、お母さんはくるくると上手に黄色いふわふわとした塊をあっという間に作ってしまった。
お皿にポンと並べられたオムレツは、本当にお店で見るようなものだった。
「…おいしそう。とっても、キレイ」
ポツリと呟いた言葉に、お母さんは「ありがとう」と少し照れていたように見えた。
「さ、食べて」
「いただきます」
手を合わせて、オムレツを見る。
ツヤツヤで、ふわふわしているオムレツはさやかの半分くらいの大きさだった。
「ケチャップはかける?」
「かけないで、大丈夫」
オムレツを割ると、鮮やかな色が広がる。
緑と、オレンジと、黄色のオムレツ。
時々ポテトの白が混ざって、おいしそう。
おいしいことを知っているけれど、それでも目の前にすると感動してしまう。
食べる前から、すでにおなかいっぱいになりそうだけど…。
少しずつ食べ始めて、きちんと食べられた。
食パンは小さく切ってもらった。
「紅茶とカフェオレ、どっちが良い?」
「紅茶が良い」
「レモンとミルクは?」
「ストレートが良い」
お母さんは、てきぱきと準備して並べてくれた。
「サラダはどうする?」
「今日は、いらない」
「ヨーグルトは?」
「もう、おなかいっぱい」
お母さんは困ったようにしていたけれど、オムレツを完食したからか「そう」と言ってそのままにしてくれた。
紅茶を飲んで、おなかがポカポカしている。
「今日は念のため、2時間目が終わったらお迎えに行くから」
「…はい」
「本当は、もう少しいたいわよね」
「ううん、我儘言ってごめんなさい」
「…そうじゃないわ。我儘じゃないの、通学はのぞみの義務なのよ?お母さんの心配で、途中にしてしまってごめんなさいね」
「そんなことない」
そうだ。
私が熱なんか出すから、いけない。
少し困っていただけで、考えただけで、熱なんか出して。
「のぞみ?」
「っ!…はい」
見えていないと思われている?
慌ててお母さんに視線を合わせる。
「どこか痛い?」
お母さんが、おでこに手を当てる。
「大丈夫。…あ」
また、癖で大丈夫と言ってしまった。
思わず口を抑えて、しまったという顔をしてしまう。
「言っちゃいけないわけじゃないのよ」
苦笑しながら、お母さんがそう言った。
「のぞみが無理をしていないなら、別に良いのよ」
「はい」
私の返事に、お母さんは少し寂しそうに見えた。
気のせいかもしれないけれど…。
「さて、じゃあそろそろ行きましょうか?」
「はい」
食べ終えたお皿を持って、流し台に行く。
お母さんは車の準備に行ったのだろう。
慌てないように、お皿とマグカップ、フォークを洗う。
シンクに置いてある、カゴにお皿を立てかける。
「ありがとう」
「歯を磨いて来るね」
「ゆっくりで良いわよ」
「はい」
洗面台で歯を磨いて、鏡に映る自分を見る。
「しっかりと、3人と話をする」
自分に言い聞かせて、頷く。
少し、頼りない表情。
不安だからだろう。
でも、しっかりしないと。
3人と、ちゃんとお友達を続けるためにも、必要なんだ。
目が覚めて、スッキリとした気分にホッとする。
まだ、明るくなる前の時刻。
和室で目を覚ました私は、そっと2階の自室に戻った。
今日の時間割を確認し、登校の準備を済ませる。
1階に降りると、少し怒っているようなさやかがいた。
「おはよう、さやか」
制服を着ている私を見て、学校に行くつもりなのだと分かったのだろう。
「何で?今日も休みじゃないの?」
「おはよう、のぞみ。もう大丈夫なの?」
「おはよう、お母さん。はい、大丈夫です」
お母さんと挨拶をしていると、さやかが「おはよう」と小さい声で挨拶してくれた。
「ねえ、おねえ?学校に行くの?」
「熱は下がったから、行けると思うの」
お母さんが何て言うか少し不安だけど、行けると信じている私がいる。
「お母さん?また、おねえが学校に行きたいって。今日は、休みだよね?」
さやかの問いかけに、お母さんは困ったように笑った。
「お母さん!?」
さやかの“まさか”という響きに、お母さんは苦笑しながら頷いた。
「のぞみが行きたいと言っているのなら、登校できるでしょうね」
「えー?何で!?」
「さやかは、のぞみのことが心配なんだろうけれど、のぞみはさやかのお姉ちゃんなのよ?」
「だから!?」
「確かに、最近は怪我が多いけれど…。昨日、病気ではないとお医者様に言われているから大丈夫よ」
「ねえ!理由になってない!」
「さやか?のぞみが学校に行くのが嫌なの?のぞみは、学校が好きなのに?行っちゃいけないの?」
お母さんのゆっくりとした言葉に、さやかがぎゅっと口を尖らせた。
「のぞみは、好きなことをしてはいけないの?」
「…そんなこと言ってない」
「そう?のぞみの登校を、嫌がっているように聞こえるわ」
「だって、昨日…熱があったし、今日も無理をしたら熱が出ちゃわないか心配なんだもん」
「そうね、のぞみが熱を出さないか、お母さんも心配しているわ。だけど、のぞみが大丈夫って言うから、お母さんは応援したいと思っているの」
お母さんの言葉で、私の味方をしてくれていることに気付く。
「だけど、のぞみが無理をしないか、お母さんもドキドキしているのよ?だから、今日は早めにお迎えに行かないとって、頑張るつもりよ」
「本当に?おねえのこと、ちゃんとお迎えに行ってくれる?」
「えぇ、勿論」
「…分かった。じゃあ、おねえのこと、私も応援する」
さやかが、渋々と言った口調でそう言った。
「ありがとう、さやか」
「ううん。でも、おねえ、本当に学校行きたいの?」
「うん!」
私の勢いに、さやかは「なら良い」と言い朝食を食べ始めた。
さやかは、私に学校に行ってほしくないんじゃなくて、怪我をしないか、熱を出さないか心配しているだけ。
それが分かっただけでも安心した。
さやかの目の前に並んでいる朝食。
大きなオムレツがどんどんと無くなって行く。
「おいしい?」
「うん」
「サラダも食べたし、カフェオレも飲んだし、パンだって全種類食べたし、おなかいっぱい。後はデザートのヨーグルトだけ」
さやかは、喋っていてもパクパクと食べている。
乃田さんみたい。
機嫌が直ったことに、ホッとする。
「今日は、早く帰って来るから」
「本当?おねえ、絶対だよ?」
「うん」
ようやく、さやかが笑顔になった。
しっかり食事をして、元気になったみたい。
毎朝の恒例になっている、湿布薬交換をすることに気持ちが向いたみたいだった。
新しく交換した湿布薬で、色々な所がスースーしている。
「じゃ、行ってきます」
さやかが満足そうに先に登校した。
「のぞみ?今日は、パンはどのくらい食べられるかしら?オムレツの中身は何が良い?」
お母さんの言葉で、“そうだった”と思い出す。
今日の朝食は、オムレツだった。
さやかが食べているのを見て、何が良いだろうと考える。
「チーズ?ウィンナー?お野菜もあるけど」
お母さんは、卵のお料理が得意だ。
特にオムレツは、綺麗にふわふわでとてもおいしくて、私とさやかのお気に入りだった。
「さやかは…」
「“全入れ”って言っていたんでしょう?」
私の言葉に、お母さんがふっと笑った。
さやかのオムレツは、とてもボリュームがあった。
パンパンに膨らんでいるのを、ちらりと眺めていた自分。
ホテルで泊まった時に、プロの人が作ってくれるオムレツと一緒。
その時に入れられる食材を全て入れて、中身がたくさんのオムレツが良いみたい。
朝食のビュッフェでも、必ず「全部入れてください」と言っているさやか。
ホテルで作ってくれるオムレツも勿論おいしいけれど、お母さんが作るものも、とてもおいしい。
時々作ってくれるオムレツは、私もさやかもウキウキしてしまう朝食だ。
私は、中身を入れていないそのままの物か、その時のお野菜を1つか2つ入れてもらうことが多かった。
ホテルでも、家でも。
中身が無くても充分おいしいから。
でも、今日は…。
今日は、しっかりとみんなとお話をしたい。
そう決めたんだ。
昨日、お母さんにごはんを食べていないことを、心配されていた。
だから、まずは心配されないようにちゃんと食べないと。
学校で頑張れるように、朝からきちんと食べよう。
「わ、私も、全入れが良い」
さやかのマネをする。
お母さんが驚いたような顔をした。
「結構、大きくなるけれど、食べられそうかしら?」
言われて、すぐにひるむ私。
「パンは、いらないかもしれない…。でも…」
私の悩む声に、お母さんは「そうね」と言った。
テーブルに置いてある、バスケットにパンが入っている。
小さめのパンは、何個か種類があった。
ミニクロワッサン、バターロール、小さいサイズの食パン。
食パンは、お母さんが作った物だ。
「でも、食パンは食べたいかも…」
私の呟きに、お母さんがふふっと笑った。
私が選ぶことを、知っていたような笑い方だった。
だって、私はお母さんの作る食パンが好きだから。
「じゃあ、小さめのオムレツにしましょう?お野菜は、ポテトと人参、ほうれん草もあるけれど」
お母さんがお皿に並んだ、お野菜を見せてくれた。
「量は少しで」
ポテトと人参は、小さくサイコロ状になっていた。
「チーズも、少し…にしてほしい」
お皿に並んでいるのを見ると、少し多く見えたから慌ててそう伝える。
お母さんはクスクス笑っていた。
「大丈夫よ?このお皿の物、全部入れるわけじゃないんだから…」
安心させるようなお母さんの言葉に、コクコクと頷く。
「じゃあ、少しずつ入れるわね」
お母さんは機嫌が良さそうに、お料理を始めた。
バターの溶ける良い香りが広がる。
ジュワッという大きな音がして、お母さんはくるくると上手に黄色いふわふわとした塊をあっという間に作ってしまった。
お皿にポンと並べられたオムレツは、本当にお店で見るようなものだった。
「…おいしそう。とっても、キレイ」
ポツリと呟いた言葉に、お母さんは「ありがとう」と少し照れていたように見えた。
「さ、食べて」
「いただきます」
手を合わせて、オムレツを見る。
ツヤツヤで、ふわふわしているオムレツはさやかの半分くらいの大きさだった。
「ケチャップはかける?」
「かけないで、大丈夫」
オムレツを割ると、鮮やかな色が広がる。
緑と、オレンジと、黄色のオムレツ。
時々ポテトの白が混ざって、おいしそう。
おいしいことを知っているけれど、それでも目の前にすると感動してしまう。
食べる前から、すでにおなかいっぱいになりそうだけど…。
少しずつ食べ始めて、きちんと食べられた。
食パンは小さく切ってもらった。
「紅茶とカフェオレ、どっちが良い?」
「紅茶が良い」
「レモンとミルクは?」
「ストレートが良い」
お母さんは、てきぱきと準備して並べてくれた。
「サラダはどうする?」
「今日は、いらない」
「ヨーグルトは?」
「もう、おなかいっぱい」
お母さんは困ったようにしていたけれど、オムレツを完食したからか「そう」と言ってそのままにしてくれた。
紅茶を飲んで、おなかがポカポカしている。
「今日は念のため、2時間目が終わったらお迎えに行くから」
「…はい」
「本当は、もう少しいたいわよね」
「ううん、我儘言ってごめんなさい」
「…そうじゃないわ。我儘じゃないの、通学はのぞみの義務なのよ?お母さんの心配で、途中にしてしまってごめんなさいね」
「そんなことない」
そうだ。
私が熱なんか出すから、いけない。
少し困っていただけで、考えただけで、熱なんか出して。
「のぞみ?」
「っ!…はい」
見えていないと思われている?
慌ててお母さんに視線を合わせる。
「どこか痛い?」
お母さんが、おでこに手を当てる。
「大丈夫。…あ」
また、癖で大丈夫と言ってしまった。
思わず口を抑えて、しまったという顔をしてしまう。
「言っちゃいけないわけじゃないのよ」
苦笑しながら、お母さんがそう言った。
「のぞみが無理をしていないなら、別に良いのよ」
「はい」
私の返事に、お母さんは少し寂しそうに見えた。
気のせいかもしれないけれど…。
「さて、じゃあそろそろ行きましょうか?」
「はい」
食べ終えたお皿を持って、流し台に行く。
お母さんは車の準備に行ったのだろう。
慌てないように、お皿とマグカップ、フォークを洗う。
シンクに置いてある、カゴにお皿を立てかける。
「ありがとう」
「歯を磨いて来るね」
「ゆっくりで良いわよ」
「はい」
洗面台で歯を磨いて、鏡に映る自分を見る。
「しっかりと、3人と話をする」
自分に言い聞かせて、頷く。
少し、頼りない表情。
不安だからだろう。
でも、しっかりしないと。
3人と、ちゃんとお友達を続けるためにも、必要なんだ。
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