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第20話 ケッチャク
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トーシンは、キングコボルトの振り下ろした剣を防ぎきる。
「シズクさん、すみません。ここからは、コイツと1対1でやらせてもらえませんか?」
「えっ!?私はいいですけど、大丈夫なんですか?」
トーシンの唐突なお願いにシズクは驚く。
「はい。コイツには借りがあるんでそれを返しておきたいんです。」
「わかりました。えーと…じゃあ、頑張ってください!」
「はい!」
そう返事をすると共にトーシンは、キングコボルトに再度向かっていく。
(キングコボルトと1対1にできたのはいいけど、実は割と状況はやばいんだよな。)
現在、トーシンのHPは半分以下。回復アイテムは、ここに来るまでに全部使用して0。当然の事ながら、蘇生アイテムも一切持っていない。
盾を使えばある程度はダメージを軽減できる。だが、あくまで軽減するだけで0にはならない。0になるのは、カウンターシールドが発動した時だけである。
そのカウンターシールドも、HPの残り的にギリギリ2回目が発動できるかどうかという状態である。しかも、仮に2回目が発動できたとして、今までにカウンターシールドで与えたダメージのことを考えると、キングコボルトのHPを削りきることは出来ない。
つまり、トーシンは2回目のカウンターシールドを発動できたとして、残りのキングコボルトのHPを1度も盾で防ぐことも出来ないようなHPで削りきらなければならない。
そんな状態にも関わらず、何故シズクと一緒に戦おうとせずに1人で立ち向かうのか。それは、単に借りを返すために意地になってるという訳ではない。トーシンには、勝算があるのだ。
(コイツの攻撃パターンは大体わかった。現実じゃあ無理だけど、ATOなら避けられるはずだ。)
そう、トーシンの勝算とは攻撃を全て避けること。
これまでの戦闘でキングコボルトの攻撃パターンはほとんど把握し、今なら避けられるとそう判断したのだ。
(いける。この身体ならいける。)
トーシンは、そう自分に言い聞かせるように心の中で強く思いながら、キングコボルトを斬りつける。
◆◇◆◇◆
トーシンとキングコボルトの1対1が始まってからかなりの時間が経過した。
(すごい。あれから、結構時間が経つのに1度も攻撃を受けてない。)
キングコボルトの攻撃を全て避けながら、攻撃を加えていき残り1割近くまで敵のHPを削ったトーシンを見てシズクは驚く。
シズクはゲームのことはそこまで詳しくないのだが、目の前で行われていることがすごいことだというのがわかった。
◆◇◆◇◆
キングコボルトは勝利を渇望していた。自分をここまで追い詰めたこの盾持ちのプレイヤーに勝ちたくて勝ちたくて仕方なかった。
今まで、自分は数多のプレイヤーに倒されてきた。だが、そのいずれのプレイヤーにもここまで勝ちたいと思ったことは1度もなかった。何故なら、自分はプレイヤーに倒されるのが仕事なのだから、とそう思っていたからだ。
だが今、絶対に負けたくないと思う相手が現れた。
どうしても勝ちたいと願う相手が現れた。
なのに何故自分は、決まったパターンの攻撃しか出来ないのだろう。
何故自由に攻撃できないのだろう。
様々な疑問がキングコボルトの思考を埋め尽くす。
そして、その疑問は次第に邪魔をするな、巫山戯るなという思いと怒りに変わっていった。
「ガルァアアアアアア!!」
キングコボルトは、怒りを吐き出すように咆哮をあげる。
そして、剣を捨てた。
これは、あらかじめプログラムされていた動きではない。
紛れもなく、キングコボルト自身の意思でした動きである。
◆◇◆◇◆
(武器を捨てた!?)
突如として咆哮をあげ、剣を捨てたキングコボルトを見てトーシンは驚愕する。
そして、驚きのあまりキングコボルトの拳が迫って来ていることに気づかない。
(しまった!)
ギリギリ盾でのガードは間に合った。だが、戦いの流れはキングコボルトに移った。
殴打。殴打。殴打。殴打。殴打。
ひたすらに、キングコボルトの殴打によるラッシュ。
(やばい!HPがゴリゴリ削られる!なんとかしないと。どうする?どうする!)
凄まじいラッシュによりトーシンのHPがどんどん削られていく。
(くそっ!なんでこんな時に発動しないんだよカウンターシールド!)
頼みのカウンターシールドは何故か発動しない。いや、例え発動したとしてもカウンターシールドではこのラッシュは止められない。それでも、カウンターシールドに頼らざるを状況なのだ。
トーシンのHP、残り2割。
キングコボルトのラッシュは止まらない。
トーシンのHP、残り1割。
(もうダメなのか?)
そう思った時、トーシンの頭の中に声が響く。
『スキルが進化が完了しました。』
(スキルの進化!?)
キングコボルトの拳が盾に当たった瞬間、カウンターシールドがようやく発動した。しかし、いつものカウンターシールドとは違い、キングコボルトに軽いノックバックが発生する。
(これが、進化したカウンターシールドの力!いや、それより今はラッシュが止まった、このチャンスを逃す訳にはいかない!)
このチャンスを逃さないため、トーシンはすぐにキングコボルトに向かっていく。
キングコボルトのHPは、さっきのカウンターシールドのおかげであと1回攻撃を当てれば削りきれそうな程減っていた。
ただ、それはトーシンも同じである。キングコボルトのラッシュによりHPは風前の灯火だった。
その残りのHPを削る為、キングコボルトは体制を立て直し、トーシンに向かっていた。
「ウォオオオオオオ」
「ガルァアアアアア」
1人と1体の声が、ボス部屋の中に響き渡る。
そして、1人と1体が交差する。
「お前の…、勝ちだ…。」
キングコボルトが、その場に倒れ、ドロップアイテムを残し消滅する。
勝ったのは、トーシンだった。
「シズクさん、すみません。ここからは、コイツと1対1でやらせてもらえませんか?」
「えっ!?私はいいですけど、大丈夫なんですか?」
トーシンの唐突なお願いにシズクは驚く。
「はい。コイツには借りがあるんでそれを返しておきたいんです。」
「わかりました。えーと…じゃあ、頑張ってください!」
「はい!」
そう返事をすると共にトーシンは、キングコボルトに再度向かっていく。
(キングコボルトと1対1にできたのはいいけど、実は割と状況はやばいんだよな。)
現在、トーシンのHPは半分以下。回復アイテムは、ここに来るまでに全部使用して0。当然の事ながら、蘇生アイテムも一切持っていない。
盾を使えばある程度はダメージを軽減できる。だが、あくまで軽減するだけで0にはならない。0になるのは、カウンターシールドが発動した時だけである。
そのカウンターシールドも、HPの残り的にギリギリ2回目が発動できるかどうかという状態である。しかも、仮に2回目が発動できたとして、今までにカウンターシールドで与えたダメージのことを考えると、キングコボルトのHPを削りきることは出来ない。
つまり、トーシンは2回目のカウンターシールドを発動できたとして、残りのキングコボルトのHPを1度も盾で防ぐことも出来ないようなHPで削りきらなければならない。
そんな状態にも関わらず、何故シズクと一緒に戦おうとせずに1人で立ち向かうのか。それは、単に借りを返すために意地になってるという訳ではない。トーシンには、勝算があるのだ。
(コイツの攻撃パターンは大体わかった。現実じゃあ無理だけど、ATOなら避けられるはずだ。)
そう、トーシンの勝算とは攻撃を全て避けること。
これまでの戦闘でキングコボルトの攻撃パターンはほとんど把握し、今なら避けられるとそう判断したのだ。
(いける。この身体ならいける。)
トーシンは、そう自分に言い聞かせるように心の中で強く思いながら、キングコボルトを斬りつける。
◆◇◆◇◆
トーシンとキングコボルトの1対1が始まってからかなりの時間が経過した。
(すごい。あれから、結構時間が経つのに1度も攻撃を受けてない。)
キングコボルトの攻撃を全て避けながら、攻撃を加えていき残り1割近くまで敵のHPを削ったトーシンを見てシズクは驚く。
シズクはゲームのことはそこまで詳しくないのだが、目の前で行われていることがすごいことだというのがわかった。
◆◇◆◇◆
キングコボルトは勝利を渇望していた。自分をここまで追い詰めたこの盾持ちのプレイヤーに勝ちたくて勝ちたくて仕方なかった。
今まで、自分は数多のプレイヤーに倒されてきた。だが、そのいずれのプレイヤーにもここまで勝ちたいと思ったことは1度もなかった。何故なら、自分はプレイヤーに倒されるのが仕事なのだから、とそう思っていたからだ。
だが今、絶対に負けたくないと思う相手が現れた。
どうしても勝ちたいと願う相手が現れた。
なのに何故自分は、決まったパターンの攻撃しか出来ないのだろう。
何故自由に攻撃できないのだろう。
様々な疑問がキングコボルトの思考を埋め尽くす。
そして、その疑問は次第に邪魔をするな、巫山戯るなという思いと怒りに変わっていった。
「ガルァアアアアアア!!」
キングコボルトは、怒りを吐き出すように咆哮をあげる。
そして、剣を捨てた。
これは、あらかじめプログラムされていた動きではない。
紛れもなく、キングコボルト自身の意思でした動きである。
◆◇◆◇◆
(武器を捨てた!?)
突如として咆哮をあげ、剣を捨てたキングコボルトを見てトーシンは驚愕する。
そして、驚きのあまりキングコボルトの拳が迫って来ていることに気づかない。
(しまった!)
ギリギリ盾でのガードは間に合った。だが、戦いの流れはキングコボルトに移った。
殴打。殴打。殴打。殴打。殴打。
ひたすらに、キングコボルトの殴打によるラッシュ。
(やばい!HPがゴリゴリ削られる!なんとかしないと。どうする?どうする!)
凄まじいラッシュによりトーシンのHPがどんどん削られていく。
(くそっ!なんでこんな時に発動しないんだよカウンターシールド!)
頼みのカウンターシールドは何故か発動しない。いや、例え発動したとしてもカウンターシールドではこのラッシュは止められない。それでも、カウンターシールドに頼らざるを状況なのだ。
トーシンのHP、残り2割。
キングコボルトのラッシュは止まらない。
トーシンのHP、残り1割。
(もうダメなのか?)
そう思った時、トーシンの頭の中に声が響く。
『スキルが進化が完了しました。』
(スキルの進化!?)
キングコボルトの拳が盾に当たった瞬間、カウンターシールドがようやく発動した。しかし、いつものカウンターシールドとは違い、キングコボルトに軽いノックバックが発生する。
(これが、進化したカウンターシールドの力!いや、それより今はラッシュが止まった、このチャンスを逃す訳にはいかない!)
このチャンスを逃さないため、トーシンはすぐにキングコボルトに向かっていく。
キングコボルトのHPは、さっきのカウンターシールドのおかげであと1回攻撃を当てれば削りきれそうな程減っていた。
ただ、それはトーシンも同じである。キングコボルトのラッシュによりHPは風前の灯火だった。
その残りのHPを削る為、キングコボルトは体制を立て直し、トーシンに向かっていた。
「ウォオオオオオオ」
「ガルァアアアアア」
1人と1体の声が、ボス部屋の中に響き渡る。
そして、1人と1体が交差する。
「お前の…、勝ちだ…。」
キングコボルトが、その場に倒れ、ドロップアイテムを残し消滅する。
勝ったのは、トーシンだった。
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