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第12話 フユカワ シズク

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藤堂と同じ会社に勤める冬川雫は、とあることがきっかけで藤堂に好意を持つようになっていた。

彼女は、藤堂ともっと仲良くなりたかった。だが、彼と何を話せばいいのか分からない。

そんな時、会社内で藤堂がATOのことを話しているのを耳にした。最初は、なんのことを言っているのかわからなかった。だから、彼女はATOのことについて色々調べた。その結果、ATOとはゲームのことだと言うことがわかった。

冬川は、ATOを始めれば藤堂と話すいいきっかけになると考え、始めようかなと思っていた。

そして、昼休憩の時にたまたま藤堂と同じ定食屋で昼食をとっていた冬川は、彼がATOでパーティメンバーを探しているという話を聞き始める決心をした。

その後彼女は、仕事が終わると家電量販店に向かい本体とATOの両方を購入し帰宅する。そして、本体の接続やら、設定やらに手間取りつつも何とか終わり、ATOを始める。

少しでも早く藤堂に追いつきたかったので、PNはシズクにして、キャラメイクはおまかせ、チュートリアルはスキップした。そして、メインクエストを進めているうちにコボルトというモンスターのアイテムを取ってきて欲しいと頼まれた。

メインクエストを達成するため、シズクはアルカドラ大平原に向かう。コボルトとの戦闘は、攻撃アシストシステムのおかげで問題なく行えた。

その後クエストは順調に進んで、頼まれたアイテムが揃ったので村に戻ろうとしていた。

「はーい、そこで止まろうか君。」

そう言って、シズクの行く手を阻む様にして1人の男が出てくる。

(誰かしらこの人?)

今まであまりゲームをやった事がないシズクは、今目の前にいる相手がPKerだということを知らなかった。

「あれ?リビア姐さん、どうやらこの子俺たちがどんなプレイヤーか知らないみたいですよ!」

目の前のプレイヤーが、いつの間にかシズクの背後にいた女性プレイヤー…リビアに話しかける。

「それは、良かったじゃないかい。こっちは、初めてPKされる時のあのいい顔が見れる。その子は、私たちみたいなプレイヤーがいるという勉強になる。両方が、得する状況じゃない。」

シズクは、彼女の言っていることが理解出来なかった。

「あなた達は、なんですか?PKってなんですか?」

「今から教えてあげるよ。まず、PKってのはね…。こういうことよ!」

その声と共に、リビアの方が槍で攻撃してくる。

「きゃあ!」

シズクは、悲鳴をあげながら避ける。

「そして、私たちはそういうことをするプレイヤーよ。ほら、ラオンそっちに行ったよ。」

「了解。リビア姐さん!」

ラオンと呼ばれた男性プレイヤーが、片手斧を振り下ろし攻撃をしてくる。それを、シズクは自身が強そうだからという理由で選んだ武器、両手斧でガードする。そして、何とか押し返しその場から逃げる。

(怖い!なんで、こんな目に合うのよ!こんな思いをするくらいなら、こんなゲームやらなければ良かった。)

シズクは、この時こんなことを考えていたのだった。

◆◇◆◇◆

(つい走り出してたけど、俺1人が行って何ができる?相手は最低でもレベル50はあるはず。レベル10の俺が到底適うレベル差じゃない。せめて、襲われてる人が逃げれるくらいの時間を稼げるといいんだけど。)

トーシンは、そんな事を考えながら悲鳴のした方に走っていた。

「おい、待て!」

そんな声がして、トーシンは走りながら振り返る。そこには、ザングリウスがいた。

「ザングリウスさん!?」

「お前1人で行ってどうすんだ!相手は2人以上はいるはずだ。そんなとこに1人で行っても時間稼ぎにもならないだろ!」

「わかってます。けど、助けなきゃって思って…。」

「まぁでも、相手が2人ならお前には盾があるし、1人を抑えておいてくれればその間に俺がもう1人を倒してお前の方に加勢すれば倒せるだろ。」

「それって…。」

「そういうことだよ。お前の仲間のアントスって奴に頼まれたからな。それに、俺はもうギルドを追放されちまったから、今はあいつらの仲間って訳じゃねぇしな。」

「ありがとうございます!心強いです。」

「気にすんな。それより、見えてきたみたいだぞ。」

そう言われ、先の方を見ると女性プレイヤーが2人のPKerに襲われていた。女性プレイヤーは、必死に逃げていた。いや、逃がされていた。PKer達はわざとギリギリ追いつかないくらいの速度で追いかけ、女性プレイヤーが必死に逃げる様を見て楽しんでいるのだ。

そして、飽きたのかPKerの1人が女性プレイヤーの腕を掴み、投げ飛ばす。そして、片手斧をゆっくりと持ち上げ、振り下ろす。

だが、その片手斧が女性プレイヤーに当たることはなかった。片手斧は、盾により防がてれいたのである。

そう、トーシンがギリギリのところで間に合ったのだ。

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