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第7話 カイシャ①

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トーシンが村に戻ると、武具屋に直行する。

「お待たせしました。依頼の品持って来ましたよ。」

「おーう、待ってたぜ兄ちゃん。ありがとよ。」

武具屋の親父がそういうとクエスト完了の表示が出る。そして、報酬として経験値だけが手に入る。だが今回レベルアップはしなかった。

「あっ、そうだ。道具屋が兄ちゃんに頼みたい事があるみたいだぜ。よかったら、行ってやってくれねぇか?」

新しいメインクエスト、道具屋の頼み事を開始するかどうかの表示が現れたのでYESをタッチする。

「ありがとよ。道具屋の奴も喜ぶと思うぜ。」

そうして武具屋を後にする。だが、このまま道具屋には向かわず今日はログアウトすることにした。

ログアウトして時計を見ると時刻は0時38分。日付けが変わっていた。

(もっとやってたいけど流石に寝よう。)

もっとATOをやっていたい、なんなら朝までやっていたいという気持ちはあったが、流石にそれをやると仕事にも支障が出ると冷静に判断をし寝ることにしたのだ。

◆◇◆◇◆

朝になり、目を覚ますと台所に行きコップ1杯の水を飲む。こうして、藤堂真吾の1日が始まる。

「ATOやりたい。」

これが、藤堂の朝の第一声であった。彼は完全にATOにハマっていた。それも、仕事から帰ってATOをやるのが楽しみ過ぎてなかなか寝付けず、寝てもATOをやっている夢を見るくらいにハマっていた。

なんとか、ATOをやりたいという気持ちを抑えて、朝食を食べ身支度を整えてから始業時刻30分前に着くように会社に向かった。

「おっす、真吾。」

会社に着き、コーヒーを飲みながらくつろいでいると男が藤堂に挨拶をする。

「おー、修斗しゅうと。おはよ。」

男の名前は花宮はなみや修斗しゅうと。藤堂の大学時代からの友人である。

「あれ?もしかして寝不足か?」

「あぁ、実は昨日からATO始めてそれでちょっとな。」

「おお!お前もATO始めたのか!どうだった?寝不足になってるってことはハマったんだよな?」

藤堂がATOを始めたと聞いて、花宮のテンションが上がる。実は花宮は、ATO発売当初からプレイしているプレイヤーなのである。

「ATOをプレイしてる夢を見るくらいにはハマってるな。」

「だよなぁ、わかる。俺もそうだったからな。それで、武器は何使ってるんだ?」

「武器はスキルの都合上、片手剣と盾を選ばざるを得なくなった。」

「どゆこと?」

「スキルがカウンターシールドっていう盾装備してないと使えないスキルなんだよ。だから、スキルを生かすには唯一盾を装備できる片手剣と盾を選ぶしかなかったんだよ。」

「あれ?もしかしてそういう武器固定系のスキルは別武器でも最初は使えないけど戦ってるうちにその武器に合わせたスキルに進化するの知らない?」

「えっ?あっ!そういえばチュートリアルでそんなこと言ってたような。」

藤堂は、チュートリアルの時にスキルは自身のプレイスタイルによって進化することがあると言っていたことを思い出す。そして、武器固定系のスキルは別武器でも使えるように進化するという事実を知る。

「なんだよ、わすれてたのかよ。ってちょっと待て。お前あのクソ長いチュートリアルを最後までやったのか?」

「あぁ、やったよ。マジでクソ長かったけどな。」

「そりゃあ、スキップ画面が出てきた時にこのチュートリアルは10分以上かかるって表示されてたからな。しかも、スキップしてもヘルプから確認できると来て最後までやる奴が1人もいないって噂だぜ。」

「だろうな、俺がチュートリアルを最後までやった始めてのプレイヤーだってチュートリアルの最後に言われたからな。」

「あの噂マジだったんだな。」

その後も、しばらく花宮とATOの話に花を咲かせていた。

「あなた達、いつまで話してるの?もう始業時刻5分前よ。」

声のした方を向くと1人の女性が立っていた。藤堂と花宮の同期で名前を、冬川ふゆかわしずくという。

「あ、冬川さんおはよう。もうそんな時間だったんだ気づかなかったよ。教えてくれてありがとう。」

藤堂は冬川に始業時刻5分前を教えてくれたお礼を言う。

「別に気にしなくていいわ。」

そう言って冬川は立ち去り、自分のデスクへと向かう。

「びっくりしたー。俺、冬川さんのことなんか苦手なんだよなー。」

立ち去った冬川を見て、花宮が言う。

「そうなの?」

「なんというか怖いんだよな。時々、殺気みたいなの感じるんだよ。ほら、今もこっち見てる視線が怖いし。」

そう花宮が言うので藤堂は冬川のいる方を見てみた。確かにこっちの方を見ていた。そして、冬川が藤堂の方を向き視線が合う。だが、藤堂は別にその視線を怖いとは感じなかった。

「いや、別にそんなことないけど。もしかして、いつまでも話してないで仕事の準備しろって視線なんじゃないか?」

「そうか?いや、そういうことにしとくか。じゃあ、また昼休憩の時に話そうぜ。」

「おう。」

そうして、2人は昼休憩にまた話す約束をして、それぞれのデスクで仕事の準備を始める。
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