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好きや

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 それから毎日わいは忙しいで、次の日に大阪城を訪ねてきたのは伊達政宗や。

「よお三成、久しぶりじゃねえか!!」

 相変わらず生意気なガキやな。

「何度言えばわかんねん。わいを誰だと思っとるんや? まあええけどなんや? 用は」

 ちなみに手下の小十郎も一緒や。奴は政宗よりガッチリしとる体型で背もでかいわ。

 政宗は目を片方眼帯しとる。これがまた男前やなと思うわ。

「ご忠告があります、三成殿」

 ほんまに小十郎は怖いわ顔が。とりあえずええかそれは。

「なんや? 小十郎」

 と、わいはきくが。

「家康に逆らわないほうがよろしいかと」

 と、わけわからん日本語を小十郎はわいに言った。

「は? 何言うとんねん」

 聞き捨てならへんな。ほんま、豊臣家に逆らっとんのは向こうやろ。腸煮えくり返る前に頭に血が上るわ。あの狸、そうとう口がうまいんやろけどなと思うと。

「家康が俺らんとこきて言ったぜ? 俺はまだ若いから、俺が日本を収めるのに調度いいってな。逆らうやつは殺すって言ってたぜ? 俺らにつけよ、三成」

 政宗が言いよるわ。まあ騙されとるのわかっとるやろほんまは。そっちついたほうが安泰やろうということやろ? 本音は。

「ああ、要件はそれだけか。なら断るわ」

 アホらしい。ところで気になるわなひとつ。

「お前らはもしかして」

 言いかけてやめたわ。政宗が左近とわいを交互に見るわ。お察しやな。

「小十郎、政宗と昨晩は楽しんだか?」

 わいがやめておいたのに、左近が言いおったわ。

「何を馬鹿なことを言う。行きますぞ政宗様」

「おう、小十郎」

 政宗と小十郎は馬に乗って去っていきおったわ。

 せやけど相変わらず男前や、政宗は。

 あの女忍者が惚れたらどないすんねん。

 次の日はわいは毛利輝元に会いに行くことにしたわ。

「ほう。来たか? 三成。座れ」

 偉そうやなほんま。まあええわ。

「単刀直入に言うわ。でかい戦あったら、あんたとこの軍隊わけてくれへん?」

 輝元はおそらくこれくらい下手に出えへんとあかんやろ。偉そうやし。

「ほう。我の軍隊を、とな。それはなぜだ?」

 輝元は見下した目でわいを見る。

「あんただけが頼りやしな」

 と言うしかないやろ? 内心わいのが上やけど格は。

「ほう、それをして我が国に見返りはあるのか?」

 やはり輝元は疑って眉寄せとるわ。

「それは将来的にあんたの子孫が征夷大将軍になるやろ」

 これならどうや?

「ならいいだろう、三成」

 まあ、これは嘘ついたってわけでもないやろ。孫やひ孫が征夷大将軍になれるとは言ってへんし。せやけどここの子孫の誰か言いそうな気がするんやし。

 まてよ? 輝元は強い軍隊あるわ金持ちや。わいのが格はあると思うで? 秀吉様の右腕やし。

 あの女忍者にとって金持ちなことが包容力やったら、わいと輝元どっち選ぶんか不安やわ。

 また次の日は、昔からわいと仲ええ上杉景勝や。

「よう、久しぶりだな兄弟まあ座れ」

「その顔見るとまた鷹狩にでも一緒に行きたなるわ。兄弟」

 景勝もわいを、わいも景勝を兄弟と呼ぶわ。

「いいだろう兄弟。どれ手下に弓矢を用意させるぜ」

 と、景勝が笑うわ。

「の前に家康をどう思っとるか? 兄弟」

 わいが言うと、景勝は

「俺はあいつをいけすかねえと思ってるぜ? 兄弟」

 と答える。そんで「わいもや」と握手かわす。

「ならどうするかやな。兄弟」

 と、わいが訊ねれば、

「それは家康の首をとるにきまってんじゃねえか? 兄弟」

 と、景勝は不敵な悪い笑みを浮かべる。

「せやな」

 ほんまに景勝こいつとは気い合うわ。

 まてよ? 兄弟は俺の好きなもんに手出すかどうかは考えたことあらへんよな。

 あの女忍者が寄ってきたときにわいの女やったら、女忍者とわい、どっち選ぶんやろな兄弟は。

 せやねどわいはどうや? あの女忍者好きになったんはわいが先やさかい。

 わいは恋を選ぶやろそりゃ。

 その帰り道に物陰感じたわ、左近連れておらんし、わいは馬から飛び降りて刀構えるわ。そして睨むわ。

「誰や」

 出てきたのは女忍者やった。即座に刀構えとるわ向こうも。わいは泣きたくなったわ。

 やはり、女忍者はわいの命狙っとったんや。

 ここで殺すわけにいかへんやろ? 好きやと叫ぶのが男らしいやろ? けどそれやったとこで空気読めへんやつみたいになるやろ。

「家康の手下なんか?」

 女忍者は答えんわ。

「家康に惚れとるんか?」

 女忍者は顔を赤くしたわ。そして来たわ。

 あかん、こいつを斬れるわけあらへんやろ?

 せやな、あんときは左近もわいもおった。

 こいつは女忍者やけどあんなかでおそらく一番凄腕や。一人相手なら殺せると見たわけや。

「覚悟!!」

 走ってきた女忍者の刀をわいは己の刀で払った。

「家康と寝たんか?」

「お前に関係ないだろう」

 飛び退いた女忍者は手裏剣を構えとるわ。わいはもう無理や。

「あいつのどこがええんや! わいのほうが男前やろ? あいつより若いし、頭もええわおそらく! 剣の腕前も喧嘩でもあのじじいより強いわ!」

 思わず刀捨てたわ。 

「あのお方に近づけるわけがないだろう! 私は忍者として利用されてるだけよ!」

 そう叫ぶと、女忍者は走り去ったわ。
 
 速いわ逃げ足は。忍者やし。
 
「好きや!!」

 と、言ってもうたが、聴こえてへんやろおそらく。

 家康、わいはぜったいに許さへんで? お前を。
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