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王の野望編
第31話
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「イヴ、これ以上奴等の妄言に耳を貸すな。
奴等はこの街を苦しめている元凶だ。
やるか、やられるかしかない。」
ガイツが迷いを断ち切ったのか、剣を構える。
「雑魚が。魔力を扱えるのはその女だけなのだろう?
その剣を私に向けたこと、後悔することになるぞ?」
ロスタートは薄ら笑いを浮かべた。
「イヴ、頼む。
お前だけが頼りなんだ。
人々にとっても、俺にとっても。」
ガイツが敵を睨んだまま私に語り掛ける。
私は剣を構えた。
「なめられたものだ。
いいだろう、
ディメイアの魔力は私達に返してもらうとしよう。」
そう言って、ロスタートがこちらに手をかざすと、赤い霧が発生した。
その直後、隣に立っていたリスバートが鳥の姿に変身し、
宙へと飛びあがった。
リスバートが数度はばたくと、私達に向かって強風が吹いた。
すると、風に乗って赤い霧が私達へ猛烈な速度で向かってきた。
「イヴ、口を塞げ、毒かもしれん。」
私は息を止めた、赤い霧が私達を吹き抜けていく。
赤い霧が過ぎ去ると、私達はロスタートの姿を見失っていた。
「ロスタートはどこ?」
私はあわててロスタートの姿を探した。
その時、突然、ガイツがうめき声を上げた。
「なんだこの犬?」
見れば、ガイツの右腕に犬が噛みついている。
いや、ただの犬ではない。
目は異様に赤く輝き、
体の至る所から鎧のような骨が突き出していた。
悪魔だ。
私は、その悪魔に威嚇程度に力を放った。
すると、悪魔はガイツから少し離れた場所へ飛び退いた。
「ガイツ、大丈夫?」
私はガイツに尋ねた。
「大丈夫だ。こいつそんなに力はないぞ。
こいつも使い魔か?」
ガイツは右腕をすぐ構え直して、大したことないことを示した。
「ふふふっ、この私が使い魔?
とことんふざけた奴等だ。」
犬の姿をした悪魔が私達に話しかけてきた。
「私が毒を操ることに気付いているのだろう?
ならばもっと用心するべきだったな。」
悪魔は犬の姿から人の姿に戻った。
ロスタートだ。
私は嫌な予感がして、ガイツを見ると、
彼の右腕は剣を構えながら小刻みに震えていた。
「おかしい、右腕から力が抜けていく・・・。」
右腕の震えはどんどん大きくなり、
遂にはガイツの右手から剣がすり抜け、落ちた。
「私の噛んだ傷口から毒を流し込んだ。
お前の腕はマヒし、やがて腐り落ちることだろう。
その毒が心臓へ到達すれば、どうなるだろうな?」
ロスタートは冷笑を浮かべた。
ガイツの右腕は恐るべき速度で黒く変色し始めた。
「イヴ、俺の腕を切り落とせ。」
ガイツは右手を突き出した。
私は躊躇っていたが、ガイツは急かしてくる。
私は覚悟を決め、失敗しないよう目を見開いて、
ガイツの右腕に剣を下ろした。
ガイツの叫び声が響く。
私の足元には、ガイツの右腕が転がっていた。
「ほう、なかなか根性が座っているな。
しかし、もう一度噛みつけばいいだけの事。」
ロスタートは再び犬の姿に変身すると、ガイツに向かって突進してきた。
私はロスタートを迎え撃つため、
左手に力を込めようとした。しかし、またも強風が吹いた。
その風は、先ほどよりも強く、立っていられない程の強さだった。
リスバートがロスタートを援護しているのだ。
再びガイツのうめき声が聞こえた。
今度は彼の左足にロスタートが噛みついていた。
ガイツはうめき声を上げながらも、今度はロスタートを逃がすまいと、
ロスタートに倒れこんで絡みついた。
「イヴ、俺ごと撃つんだ。」
ロスタートはガイツを振りほどこうと、必死にもがいていた。
リスバートの羽ばたきが大きくなる。
今にも吹き飛ばされそうだ。
私は剣を手放し、リスバートに向けて軽く力を放った。
すると、それを避けるためにリスバートは体勢を崩し、一瞬風が止んだ。
私は躊躇いながらも、左手に力を込めて、ロスタートに狙いを定めた。
奴等はこの街を苦しめている元凶だ。
やるか、やられるかしかない。」
ガイツが迷いを断ち切ったのか、剣を構える。
「雑魚が。魔力を扱えるのはその女だけなのだろう?
その剣を私に向けたこと、後悔することになるぞ?」
ロスタートは薄ら笑いを浮かべた。
「イヴ、頼む。
お前だけが頼りなんだ。
人々にとっても、俺にとっても。」
ガイツが敵を睨んだまま私に語り掛ける。
私は剣を構えた。
「なめられたものだ。
いいだろう、
ディメイアの魔力は私達に返してもらうとしよう。」
そう言って、ロスタートがこちらに手をかざすと、赤い霧が発生した。
その直後、隣に立っていたリスバートが鳥の姿に変身し、
宙へと飛びあがった。
リスバートが数度はばたくと、私達に向かって強風が吹いた。
すると、風に乗って赤い霧が私達へ猛烈な速度で向かってきた。
「イヴ、口を塞げ、毒かもしれん。」
私は息を止めた、赤い霧が私達を吹き抜けていく。
赤い霧が過ぎ去ると、私達はロスタートの姿を見失っていた。
「ロスタートはどこ?」
私はあわててロスタートの姿を探した。
その時、突然、ガイツがうめき声を上げた。
「なんだこの犬?」
見れば、ガイツの右腕に犬が噛みついている。
いや、ただの犬ではない。
目は異様に赤く輝き、
体の至る所から鎧のような骨が突き出していた。
悪魔だ。
私は、その悪魔に威嚇程度に力を放った。
すると、悪魔はガイツから少し離れた場所へ飛び退いた。
「ガイツ、大丈夫?」
私はガイツに尋ねた。
「大丈夫だ。こいつそんなに力はないぞ。
こいつも使い魔か?」
ガイツは右腕をすぐ構え直して、大したことないことを示した。
「ふふふっ、この私が使い魔?
とことんふざけた奴等だ。」
犬の姿をした悪魔が私達に話しかけてきた。
「私が毒を操ることに気付いているのだろう?
ならばもっと用心するべきだったな。」
悪魔は犬の姿から人の姿に戻った。
ロスタートだ。
私は嫌な予感がして、ガイツを見ると、
彼の右腕は剣を構えながら小刻みに震えていた。
「おかしい、右腕から力が抜けていく・・・。」
右腕の震えはどんどん大きくなり、
遂にはガイツの右手から剣がすり抜け、落ちた。
「私の噛んだ傷口から毒を流し込んだ。
お前の腕はマヒし、やがて腐り落ちることだろう。
その毒が心臓へ到達すれば、どうなるだろうな?」
ロスタートは冷笑を浮かべた。
ガイツの右腕は恐るべき速度で黒く変色し始めた。
「イヴ、俺の腕を切り落とせ。」
ガイツは右手を突き出した。
私は躊躇っていたが、ガイツは急かしてくる。
私は覚悟を決め、失敗しないよう目を見開いて、
ガイツの右腕に剣を下ろした。
ガイツの叫び声が響く。
私の足元には、ガイツの右腕が転がっていた。
「ほう、なかなか根性が座っているな。
しかし、もう一度噛みつけばいいだけの事。」
ロスタートは再び犬の姿に変身すると、ガイツに向かって突進してきた。
私はロスタートを迎え撃つため、
左手に力を込めようとした。しかし、またも強風が吹いた。
その風は、先ほどよりも強く、立っていられない程の強さだった。
リスバートがロスタートを援護しているのだ。
再びガイツのうめき声が聞こえた。
今度は彼の左足にロスタートが噛みついていた。
ガイツはうめき声を上げながらも、今度はロスタートを逃がすまいと、
ロスタートに倒れこんで絡みついた。
「イヴ、俺ごと撃つんだ。」
ロスタートはガイツを振りほどこうと、必死にもがいていた。
リスバートの羽ばたきが大きくなる。
今にも吹き飛ばされそうだ。
私は剣を手放し、リスバートに向けて軽く力を放った。
すると、それを避けるためにリスバートは体勢を崩し、一瞬風が止んだ。
私は躊躇いながらも、左手に力を込めて、ロスタートに狙いを定めた。
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