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過去と重なる
意外な叫び
しおりを挟む三人は急いで桜木に向かった。
桜木に着くと、目撃者の男性が駆け寄ってきた。
「駆けつけてくださってありがとうございます。
先程から、若い女が暴れ回っていて…!」
「落ち着いて下さい。女はどこへ?」
「こちらです!」
何事かと野次馬が集まってきた。
ただの盗難とは少し違った様子だ。
若い女が暴れている、というのも異様な光景だ。
男性はその女の居る方へ案内してくれた。
そこには、見知った顔の女が居た。
「寿々…?」
「お前、知り合いか?」
「同じ桜塾で学んでいた仲間です…」
あの明るくて笑顔が素敵だったはずの寿々が、何故かまた桜木に来て、何かを叫びながら刃物を振り回していた。
その眼には、暗く深い闇と憎しみが込められているようだった。
何が寿々をそうさせたのかは全く分からない。
「お前らなんか皆殺しにしてやる!!」
「きゃー!」
寿々は酷い言葉を叫びながら、近くにいる住民に向かって刃物を振りかざし、傷つけようとした。
集まっていた野次馬も、寿々から逃げていく。
「寿々!何をしている!?
どうしたんだ!!」
「あ、お前…佐佐木 銀壱だな…」
「そうだ、僕だよ。
寿々、どうした?何があったんだ」
暴れる寿々をなだめようと、銀壱は必死で呼び掛けた。
しかし、寿々の表情はみるみる豹変した。
「うるさい…
必死で勉強しても、私は全然評価されない。
お前は良いよなぁ、優等生扱いで…!」
「おいっ!やめろ!」
寿々は銀壱に向かって刃物を持って走って来る。
その眼は殺意に満ち溢れていた。
寿々はこんなことをする女の子ではない。
それは銀壱も梅乃もよく知っている。
どうしてこのような事になっているのか、本当に不思議でならないが、今はこの状況を収めなければならない。
銀壱は戸惑いを隠せず、迫ってくる寿々を避けようとするも足がもつれた。
「危ないっ!!」
「うっ!」
銀壱を刃物から守ろうと、咄嗟に梅乃が飛び出した。
銀壱は上手く避けるように地面に倒れ込む。
一方、梅乃は腕に刃物がかすり、傷口には血が滲んでいた。
血を見た寿々は刃物をその場に捨て、逃げ出した。
昔から運動神経の良かった寿々は、追いつけそうにないくらいの速度で走り出す。
「銀壱は梅乃の手当てをしろ。
俺はあいつを追いかける」
「はい、よろしくお願いします…!」
前田は銀壱や梅乃よりもかなり年をとっているが、それを感じさせない程の足の速さだ。
銀壱は自分のせいで梅乃に怪我を負わせてしまった、という罪悪感に苛まれていた。
「銀壱さん。このくらい、平気です」
「申し訳ない…僕のせいで」
「それより、寿々さんは――」
「前田さんが追いかけてくれています」
梅乃は傷口を気にしながらも、寿々を追いかけようとした。
前田より、自分たちのほうが寿々のことを知っているから説得もしやすいと考えたのだ。
しかし、動こうとするとかなり痛みがあり、銀壱がそれを制止した。
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