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過去と重なる
真藤の語る闇
しおりを挟む鹿戸の警備は他の捜査官に任せ、前田たちは本部で真藤の話を聞くことにした。
真藤は自分が知らずに盗難品を販売させられていたり、京に暴力を振るわれていた為、檻の中ではなく特別に部屋を与えられた。
しかし、信じていた母親が犯罪者だと分かり、突然捜査本部に連れて行かれた真藤。
梅乃はとても心配していた。
「真藤さん、入りますね」
「はい…」
「お食事です。
私も一緒に食べていいですか?」
「どうぞ」
真藤は12歳、梅乃は14歳で年齢が近いこともあり、精神的な苦痛を少しでも抑えようと、梅乃と一緒に食事をとることになった。
部屋の前に警備の者を一人置き、部屋の中で二人は静かに食事をする。
梅乃は何を話せば楽になるのか、京や紫の情報も聞き取りたいが、まずは警戒心を解く方法を模索していた。
「私は早河 梅乃といいます。
突然驚かせて…ごめんなさい」
「いえ。私も、おかしいなと薄々思っていたのです」
「おかしい?」
「お母様のことです。
夜中、よく恐い男の人たちと何やら話していて、
私にも出歩かないように監視をつけたり…」
「そうでしたか…」
真藤は俯きながら、淡々と話した。
あの屋敷に居たら、恐い思いもたくさんしただろう。
尊敬する母親から暴力を受け、心も傷ついただろう。
京に拾われたのは真藤が4歳の時。
拾われてすぐ、左瞼に華狩の印を入れられた。
そんな彼女の源華は桜だった。
右の足首あたりに今も綺麗に咲いている。
桜は、華罪捜査官の象徴だ。
それを見た京は、嫌いな桜を隠すかのように更に龍の印を入れた。
ちょうどその頃、京は華狩と龍華会を繋ごうとしていたのだ。
自分の後継者は真藤だと、いつも周りに話していた。
「今まで生きてこれたのはお母様のおかげなのです。
でも、犯罪者だったなんて…」
「辛いですよね。
きっと罪を犯すのには理由があるはずです」
梅乃が顔を上げると、目の前の真藤の大きな瞳からは、涙が溢れていた。
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