28 / 33
デレるくらいなら死ぬ
28★
しおりを挟む
真琴達と打ち解けるのに、そう時間はかからなかった。
真琴は実に話上手で、佐野が自ら話すことはなさそうな貴重な思い出話をたくさん教えてくれた。
このことを知ったら佐野は怒るだろうが、洲崎としては得した気分だ。
さらに佐野に愛着が湧いたような気がする。
今は情報提供のお礼として、洲崎が作ったプリンを三人で食べている。
「真瑠ちゃん、おいしい?」
「うん」
夢中で食べる姿は、やはり佐野に似ている。
思わず口元の筋肉がだらしなくなってしまうほどかわいい。
「洲崎君、料理も上手ね。しかもこのプリンの作り方、美味しいのにめちゃくちゃ簡単。私も家で作ってみよっと」
「昔、妹達に毎日作ってたんです。早く作らないと泣き始めるから、時間との勝負で」
「分かる。結局、時短レシピが最強よね」
お客さんに出すには少々荒っぽいレシピだったが、気に入ってもらえたようだった。
現役の主婦に褒めてもらえたことは、内心飛び上がるほどうれしい。
仕事よりも達成感を感じているかもしれない。
「もし死ぬほど暇な時あったらうちで家事のバイトしない?洲崎君さえ良ければだけど。だって、私には分かる。君の家事スキルは手練れよ。プロの域。もちろんバイト代はしっかりお支払いするし」
「えっ?ありがとうございます。でも、うちの会社副業ダメなので。すみません」
突然のスカウトに苦笑する。
しかし、自分の特技に対価を支払いたいと言ってもらえたのは初めてだった。
今までただの趣味でやってきたことが、実績として身になっているようでうれしい。
「お金はいただけませんけど、お手伝いだったら大丈夫です。いつでも連絡ください」
「ダメよ!そんなただ働きみたいなことはさせられない。働いた分、お金はしっかりもらわなきゃ」
真琴の夫は運送会社を営んでいて、真琴自身もそこで働いているらしい。
そのためか、お金に対する考え方はシビアだ。
「もしかして、真澄からもただ働き同然で扱き使われたりされてない?」
「いや…それは、俺が好きでやってるんで」
これに関しては、本当の本当に本当だ。
むしろ、好き勝手している。
しかし、佐野の姉は社交辞令だと受け取ったらしい。
「もぉ!姉として本当に情けない。ごめんね、真澄には私からしっかり言っとく。っていうか合い鍵持ってる仲だったら知ってると思うけど、ここにあるお金持ってっていいから」
私が許す、と真琴は勝手にテレビ台の下から元は煎餅が入っていたであろう四角い缶を取り出した。
確かに洲崎も知っていた。
佐野はATMに行くのが面倒らしく、年に一度大量に現金を引き出してそれを缶にしまい、必要な時に取り出して使っていた。
さすがに不用心だ、と咎めたことはあったが、もし無くなるようなことがあったら犯人は洲崎しかいないから逆に分かりやすい、という謎の理論で説き伏せられた。
「残念なくらいお金に無頓着だから、ごっそり無くなっても気づかないと思うのよね…」
蓋を開けると、封筒がいくつか入っていた。
初めて掃除をした時に見つけて以来開けたことはなかったが、その時とは様子が違っている。
以前は現金がそのままの状態で入っていたはずだ。
真琴が封筒を一つ取り出す。
「なんだ、ちゃんと用意してるじゃない」
封筒には小さく「洲崎へ」と書かれていた。
少し幼さが残る字。
間違いなく佐野の字だ。
中には数枚の一万円札が入っている。
(用意してくれてたのか…)
いつものつっけんどんな態度の裏では気遣ってくれていたようだ。
「用意してるのに、渡さなかったら意味ないじゃない。本当に不器用だしバカよねぇ」
そう言いながらも真琴は、洲崎の名前が書いてある封筒を一枚一枚うれしそうに見ていた。
洲崎も胸のあたりがじわじわと温かく感じた。
その時、玄関の扉を開ける音がした。
佐野が帰ってきた。
真琴は実に話上手で、佐野が自ら話すことはなさそうな貴重な思い出話をたくさん教えてくれた。
このことを知ったら佐野は怒るだろうが、洲崎としては得した気分だ。
さらに佐野に愛着が湧いたような気がする。
今は情報提供のお礼として、洲崎が作ったプリンを三人で食べている。
「真瑠ちゃん、おいしい?」
「うん」
夢中で食べる姿は、やはり佐野に似ている。
思わず口元の筋肉がだらしなくなってしまうほどかわいい。
「洲崎君、料理も上手ね。しかもこのプリンの作り方、美味しいのにめちゃくちゃ簡単。私も家で作ってみよっと」
「昔、妹達に毎日作ってたんです。早く作らないと泣き始めるから、時間との勝負で」
「分かる。結局、時短レシピが最強よね」
お客さんに出すには少々荒っぽいレシピだったが、気に入ってもらえたようだった。
現役の主婦に褒めてもらえたことは、内心飛び上がるほどうれしい。
仕事よりも達成感を感じているかもしれない。
「もし死ぬほど暇な時あったらうちで家事のバイトしない?洲崎君さえ良ければだけど。だって、私には分かる。君の家事スキルは手練れよ。プロの域。もちろんバイト代はしっかりお支払いするし」
「えっ?ありがとうございます。でも、うちの会社副業ダメなので。すみません」
突然のスカウトに苦笑する。
しかし、自分の特技に対価を支払いたいと言ってもらえたのは初めてだった。
今までただの趣味でやってきたことが、実績として身になっているようでうれしい。
「お金はいただけませんけど、お手伝いだったら大丈夫です。いつでも連絡ください」
「ダメよ!そんなただ働きみたいなことはさせられない。働いた分、お金はしっかりもらわなきゃ」
真琴の夫は運送会社を営んでいて、真琴自身もそこで働いているらしい。
そのためか、お金に対する考え方はシビアだ。
「もしかして、真澄からもただ働き同然で扱き使われたりされてない?」
「いや…それは、俺が好きでやってるんで」
これに関しては、本当の本当に本当だ。
むしろ、好き勝手している。
しかし、佐野の姉は社交辞令だと受け取ったらしい。
「もぉ!姉として本当に情けない。ごめんね、真澄には私からしっかり言っとく。っていうか合い鍵持ってる仲だったら知ってると思うけど、ここにあるお金持ってっていいから」
私が許す、と真琴は勝手にテレビ台の下から元は煎餅が入っていたであろう四角い缶を取り出した。
確かに洲崎も知っていた。
佐野はATMに行くのが面倒らしく、年に一度大量に現金を引き出してそれを缶にしまい、必要な時に取り出して使っていた。
さすがに不用心だ、と咎めたことはあったが、もし無くなるようなことがあったら犯人は洲崎しかいないから逆に分かりやすい、という謎の理論で説き伏せられた。
「残念なくらいお金に無頓着だから、ごっそり無くなっても気づかないと思うのよね…」
蓋を開けると、封筒がいくつか入っていた。
初めて掃除をした時に見つけて以来開けたことはなかったが、その時とは様子が違っている。
以前は現金がそのままの状態で入っていたはずだ。
真琴が封筒を一つ取り出す。
「なんだ、ちゃんと用意してるじゃない」
封筒には小さく「洲崎へ」と書かれていた。
少し幼さが残る字。
間違いなく佐野の字だ。
中には数枚の一万円札が入っている。
(用意してくれてたのか…)
いつものつっけんどんな態度の裏では気遣ってくれていたようだ。
「用意してるのに、渡さなかったら意味ないじゃない。本当に不器用だしバカよねぇ」
そう言いながらも真琴は、洲崎の名前が書いてある封筒を一枚一枚うれしそうに見ていた。
洲崎も胸のあたりがじわじわと温かく感じた。
その時、玄関の扉を開ける音がした。
佐野が帰ってきた。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
転生者は隠しボス
アロカルネ
BL
魔法と科学が同時に発展した世界があった。
発展し続ける対極のものに、二つの勢力が生まれたのは必定だったのかもしれない。
やがて、発展した魔法こそが覇権を握るべきと謳う者たちの中から魔王が産まれ
科学こそが覇権を握るべきだという人間たちの間で勇者が産まれ
二つの強大な存在は覇権を握り合うために争いを繰り広げていく。
そして、それはこんな世界とはある意味で全く無関係に
のほほんと生きてきた引き籠もり全開の隠しボスであり、メタい思考な無口な少年の話
注意NLもあるよ。基本はBLだけど
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる