13 / 13
恋人達は元の世界で 【おまけの話】
しおりを挟む拓海の家は、バイト先から本当に近かった。
近過ぎて心の準備をする時間もなかった。
「一分待ってください」
ドアの前で待たされる。
(十分くらいかかってくれていいのに…!俺のメンタルを落ち着かせる時間が足りない…)
智也にとっては初めて出来た恋人だ。
こんなに短期間で恋人が出来るとも思っていなかったし、お家イベントが発生するとも思わなかった。
そわそわする気持ちが抑えられない。
「お待たせしました。どうぞ」
「お邪魔します…」
学生の一人暮らし、という感じのワンルームは、小ざっぱりしていて拓海の性格がよく現れていた。
(拓海君らしい部屋だな…)
キョロキョロしていると、後ろから拓海に抱きしめられた。
「ちょっ、びっくりした」
「入野君が俺の部屋にいると思うと堪んなくて…今すぐ抱きたいです」
全身が茹で上がったかと思うほど、熱くなる。
「で、でも、俺、油の匂いするから!」
「じゃあ、脱いだら良いじゃないですか」
「あっ」
靴を脱ぐよりも先に、Tシャツを脱がされた。
このままでは玄関で致すことになってしまう。
「ちょっと待って、玄関はやだ!」
「じゃあ、玄関じゃなかったら良いんですね?」
体を担がれると、靴を脱がされてベッドへ運ばれた。
そのまま押し倒されると、食べるように口に吸いつかれた。
下の服も脱がされ、いつのまにか二人とも一糸纏わぬ姿になっている。
怒涛の攻撃に、智也の体はすでに反応していた。
それは拓海も同じだったようで、拓海の硬い中心が智也の下腹部に擦れると、快感が体を駆け巡った。
深く口づけを交わしながら、拓海の手が二人の中心を重ねる。
合わせて扱くと、すぐに果ててしまいそうだった。
「あっ、いく」
寸前で拓海の手の動きは止まった。
ゴソゴソと何かを探しているようだ。
そして、すぐに懐かしい香りが漂った。
(香油だ…)
感じたことのある粘り気が、智也の後孔に塗りこめられる。
「っん」
拓海の長い指が中に入ってくる。
まだ初体験の余韻が残る後孔を馴染ませるには、さほど時間はかからなかった。
馴染んだところへ、拓海の中心がゆっくりと挿入される。
「は、っあ」
「交わりの儀」で何回もしたけれど、それでも繋がる瞬間は苦しい。
けれど、萎えかけた智也の中心を拓海が扱くと、次第に気持ち良い感覚が勝っていく。
全て入ったところで、拓海がキスをしてきた。
労わるような唇の感触が優し過ぎて、智也から舌をねだってしまう。
拓海の腰が動き始めた。
ゆっくりとした動きが、徐々に打ちつけるような速さに変わる。
拓海の剛直が、智也の快楽のポイントを擦ると、智也の腰も動いた。
「やばい…」
拓海が呟くと、智也を抱き上げて座位の体勢にした。
深く繋がり過ぎて、意識が飛びそうになる智也を、拓海が唇で口を塞いでさらに追い詰める。
下から突き上げる動きと、口の中を這い回る舌に、涙が溢れて止まらなかった。
「かわいすぎる…」
今度は智也の頬を舌が這っている。
口が寂しくなって、その舌を追いかけるように舌で捕まえると、再びベッドへ押し倒された。
「あーもう!何なんすか!」
拓海が怒るように言うと、智也の膝裏を抱えて、限界まで体を開く。
今までとは比べものにならないほどの強さと速さで智也の後孔を攻め始めた。
ずくずくという湿った音が、頭の中に響く。
その卑猥な音色が、絶頂へと押し上げる。
「っあ、や、いく」
拓海の腕に縋るように掴むが、止まってはくれない。
最後の追い込みをかけるように、奥へ奥へと突き上げられた。
声を出すことも出来なかった。
「…っ!」
智也は絶頂を迎えた。
すぐに拓海も、追いついた。
体の奥がじんわりと温かい。
拓海のものがずるりと出ていくと、体が冷たくなるようで寂しく感じたが、すぐに拓海が抱きしめて温めてくれる。
「今日は…頑張って三回くらいで抑えます」
「さ、三回ぃ!?体、どうなってんの?」
「こうなってます」
体を押しつけてきた。
拓海のそれは、何事も無かったかのように元気を取り戻していた。
「…病院、行こっか」
「このままじゃ行けないです」
駄々を捏ねる子供のように、拓海が頬を擦り付けてきた。
不覚にもかわいいと思ってしまった。
「あと一回なら良いよ…」
言った途端、拓海が耳元で言った。
「ほんとチョロいですね」
「なっ!?チョロい!?」
体をぎゅうぎゅうに強く抱きしめながら、また拓海は言った。
「…チョロすぎて、もう手離せません。一生、俺だけにチョロチョロしてて下さい」
(チョロチョロ…?)
良くわからなかったけれど、拓海は嬉しそうだった。
それを見ると、なぜか智也も嬉しくなる。
(まぁ、いっか!)
そう思った智也だったが、また気が遠くなるほど永い夜になるとは、この時はまだ知る由もなかった。
【おしまい】
1
お気に入りに追加
34
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる