苦手な君と異世界へ

波辺 枦々

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恋人達は元の世界で 【おまけの話】

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拓海の家は、バイト先から本当に近かった。
近過ぎて心の準備をする時間もなかった。

「一分待ってください」

ドアの前で待たされる。

(十分くらいかかってくれていいのに…!俺のメンタルを落ち着かせる時間が足りない…)

智也にとっては初めて出来た恋人だ。
こんなに短期間で恋人が出来るとも思っていなかったし、お家イベントが発生するとも思わなかった。
そわそわする気持ちが抑えられない。

「お待たせしました。どうぞ」
「お邪魔します…」

学生の一人暮らし、という感じのワンルームは、小ざっぱりしていて拓海の性格がよく現れていた。

(拓海君らしい部屋だな…)

キョロキョロしていると、後ろから拓海に抱きしめられた。

「ちょっ、びっくりした」
「入野君が俺の部屋にいると思うと堪んなくて…今すぐ抱きたいです」

全身が茹で上がったかと思うほど、熱くなる。

「で、でも、俺、油の匂いするから!」
「じゃあ、脱いだら良いじゃないですか」
「あっ」

靴を脱ぐよりも先に、Tシャツを脱がされた。
このままでは玄関で致すことになってしまう。

「ちょっと待って、玄関はやだ!」
「じゃあ、玄関じゃなかったら良いんですね?」

体を担がれると、靴を脱がされてベッドへ運ばれた。
そのまま押し倒されると、食べるように口に吸いつかれた。
下の服も脱がされ、いつのまにか二人とも一糸纏わぬ姿になっている。
怒涛の攻撃に、智也の体はすでに反応していた。

それは拓海も同じだったようで、拓海の硬い中心が智也の下腹部に擦れると、快感が体を駆け巡った。
深く口づけを交わしながら、拓海の手が二人の中心を重ねる。
合わせて扱くと、すぐに果ててしまいそうだった。

「あっ、いく」

寸前で拓海の手の動きは止まった。
ゴソゴソと何かを探しているようだ。
そして、すぐに懐かしい香りが漂った。

(香油だ…)

感じたことのある粘り気が、智也の後孔に塗りこめられる。

「っん」

拓海の長い指が中に入ってくる。
まだ初体験の余韻が残る後孔を馴染ませるには、さほど時間はかからなかった。
馴染んだところへ、拓海の中心がゆっくりと挿入される。

「は、っあ」

「交わりの儀」で何回もしたけれど、それでも繋がる瞬間は苦しい。
けれど、萎えかけた智也の中心を拓海が扱くと、次第に気持ち良い感覚が勝っていく。

全て入ったところで、拓海がキスをしてきた。
労わるような唇の感触が優し過ぎて、智也から舌をねだってしまう。

拓海の腰が動き始めた。
ゆっくりとした動きが、徐々に打ちつけるような速さに変わる。
拓海の剛直が、智也の快楽のポイントを擦ると、智也の腰も動いた。

「やばい…」

拓海が呟くと、智也を抱き上げて座位の体勢にした。
深く繋がり過ぎて、意識が飛びそうになる智也を、拓海が唇で口を塞いでさらに追い詰める。
下から突き上げる動きと、口の中を這い回る舌に、涙が溢れて止まらなかった。

「かわいすぎる…」

今度は智也の頬を舌が這っている。
口が寂しくなって、その舌を追いかけるように舌で捕まえると、再びベッドへ押し倒された。

「あーもう!何なんすか!」

拓海が怒るように言うと、智也の膝裏を抱えて、限界まで体を開く。
今までとは比べものにならないほどの強さと速さで智也の後孔を攻め始めた。
ずくずくという湿った音が、頭の中に響く。
その卑猥な音色が、絶頂へと押し上げる。

「っあ、や、いく」

拓海の腕に縋るように掴むが、止まってはくれない。
最後の追い込みをかけるように、奥へ奥へと突き上げられた。
声を出すことも出来なかった。

「…っ!」

智也は絶頂を迎えた。
すぐに拓海も、追いついた。
体の奥がじんわりと温かい。

拓海のものがずるりと出ていくと、体が冷たくなるようで寂しく感じたが、すぐに拓海が抱きしめて温めてくれる。

「今日は…頑張って三回くらいで抑えます」
「さ、三回ぃ!?体、どうなってんの?」
「こうなってます」

体を押しつけてきた。
拓海のそれは、何事も無かったかのように元気を取り戻していた。

「…病院、行こっか」
「このままじゃ行けないです」

駄々を捏ねる子供のように、拓海が頬を擦り付けてきた。
不覚にもかわいいと思ってしまった。

「あと一回なら良いよ…」

言った途端、拓海が耳元で言った。

「ほんとチョロいですね」
「なっ!?チョロい!?」

体をぎゅうぎゅうに強く抱きしめながら、また拓海は言った。

「…チョロすぎて、もう手離せません。一生、俺だけにチョロチョロしてて下さい」

(チョロチョロ…?)

良くわからなかったけれど、拓海は嬉しそうだった。
それを見ると、なぜか智也も嬉しくなる。

(まぁ、いっか!)

そう思った智也だったが、また気が遠くなるほど永い夜になるとは、この時はまだ知る由もなかった。


               【おしまい】




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