EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

文字の大きさ
上 下
124 / 128
終章 電子仕掛けの約束

124 最奥の間

しおりを挟む
 現地で得られた地形データを基に範囲が絞られた目的地の方向を目指し、機獣スライムを蹴散らしながら迷宮遺跡を進んでいくことしばらく。

「あそこの端末から、一先ず迷宮遺跡の機能を支配してしまうデス」

 襲撃が落ち着いたタイミングでオネットが告げた。
 装甲車でも移動可能な広い廊下から、別の通路へと移る扉の前。
 ロックを解除するためと思われる端末が見て取れる。
 そこから迷宮遺跡の中枢へとアクセスしようと言うのだろう。
 こちらはこちらで迷宮遺跡の天敵のような存在だ。
 統率の断片フラグメントの力によって、迷宮遺跡の機能を掌握することができるのだから。

「あっ!」

 しかし、何ごとにも例外というものは存在するらしい。
 オネットが端末に触れた瞬間、彼女は突然驚いたような声を上げた。
 それから何ともバツが悪そうな表情を浮かべて口を開く。

「ちゅ、中枢がネットワークから切り離されてしまったデス」
「【アクセラレーター】は使ってたんだよな?」
「勿論デス。……デスが、少しだけアクセスに手間取ってしまった一瞬の間に、セキュリティが働いてしまったようデス」

 肩を落としながら答えるオネット。
 メタがそうだったように、処理速度を上げれば【アクセラレーター】によって超加速された時間を認識することは可能ではある。
 しかし、その状態を認識するだけに留まらず更に対処することまで彼女ができたのは、こちらの手の内を知っていて備えていたからに他ならない。
 たとえ不正なアクセスに即応するプログラムがあったとしても、【アクセラレーター】を併用した不意打ち染みたクラッキングへの対応は困難なはずだ。
 だが、結果は失敗。そうなってしまった理由は――。

「何故だか、接続の仕方が普通じゃなかったデス」

 オネット曰く、そういうことらしい。
 グロテスクな何かに触れたかのような、酷く気持ちが悪そうな顔をしている。
 一体どんな感覚だったのか……。

「多分、あの機獣スライムの体と神経みたいな接続部が介在してる」

 そこへ、補足を入れるようにククラが言った。
 機械そのものではないゲル状の体。
 導電性はあるだろうが、操作の感覚が全く異なるのは想像に容易い。
 そんなものが間に介在しているとなれば、オネットが戸惑うのも無理もない。
 一瞬手間取ったことで、セキュリティが作動する隙が生じてしまったのだろう。
 彼女の能力は機械装置を操るものであるだけに、こればかりは仕方がない。

「けど、おかげで迷宮遺跡の内部構造とコアユニットの正確な位置は分かった」

 と、更にフォローをするようにククラが続ける。
 であれば、オネットは十分役目を果たしたと言っていいだろう。
 後はそこに向かい、直接操作すれば中枢を掌握することはできる。
 末端から一足飛びでチェックメイトまで至ることはできずとも、ひたすら正しい道を選んで進んでいけば済む話だ。

「ここからは徒歩」

 そうしてマグ達は全員装甲車から降り、迷宮遺跡の最奥を目指して歩き出した。
 機獣スライムは変わらず襲いかかってくるが、ドリィがいれば容易く倒せる。
 不意打ちは【エコーロケイト】で防ぐことができるし、単なる機獣にはアテラとフィアの二人による二重シールドを突破することは不可能だ。
 順調に奥へ奥へと突き進み、やがてマグ達は最後の扉の前に到達した。

「この奥にコアユニットがある」

 淡々と告げるククラとは対照的に、マグは意識して表情を引き締めた。
 時空間転移システムの暴走をとめるために不可欠なもの。
 この惑星ティアフロントの誰もが探し求めていたものがそこにあるのだ。

「……行こう」

 互いに頷き合い、オネットの操作で開いた扉をくぐって最深部の部屋に入る。
 完全に掌握し切れていない迷宮遺跡の最奥。
 そこには当然のように機獣スライムが待ち構えていた。
 よくよく見ると他のスライム達とは異なり、何やらいくつものパーツがゲル状の体内に散らばるように浮かんでいる。
 最後の敵だけあって特別な個体のようだ。

「宝を守る番人ってとこね」

 その巨体を前にして、即座にドリィがスライムの体を維持する核となっている機械装置を撃ち抜こうとレーザービームライトの射出口を向ける。
 一撃の下に滅ぼし尽くすために。
 しかし――。

「リィ、駄目!」

 光の軌跡が描かれる前に、ククラが酷く慌てた様子でオネットをとめた。
 珍しいぐらいに声を大きく張り上げて。

「ど、どうしたの? ククラ」

 対してドリィが目を丸くしながら尋ねる。
 彼女も驚いたようだ。

「あれがコアユニット。破壊しちゃ駄目」
「え……え?」

 ククラが理解の断片フラグメントの力によって理屈を超えて理解した事実。
 それだけに、ドリィは一瞬理解することができなかったようだ。
 彼女の動揺を示すように射出口の照準が揺れる。

「コアユニットがバラバラのまま、スライムの体を介して稼働してる」
「しかも、ネットワークから独立したスタンドアロン状態デス。あれでは遠隔で制御するのも、直接操作するのも無理デスよ……」

 ククラに続き、困り果てたようにオネットが告げる。
 どうやら宇宙崩壊の危機を回避する最後の関門は、思った以上に厄介な状態にあるようだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...