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終章 電子仕掛けの約束
120 震源特定
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向学の街・学園都市メイアが誇る超巨大校舎。
その中央区画上層の学長室まで、前回同様に自動操縦のパーソナルモビリティで連れてこられたマグ達は、まず街の管理者たるローフェにことの顛末を語った。
「コスモスからの通信は本当であったか」
対して、彼は古の老魔法使いの如き外見に相応しいしわがれた声で応じる。
一応、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアからも連絡は来ていたらしい。
ただ、それが信用できる情報かどうか今の今まで疑っていたのだろう。
マグ達の証言と若干後ろに控えたキリの姿を目にして、ようやく信じた様子だ。
とは言え、現状それについて話題を広げている場合ではない。
「それで、その……以前よりも激しい空間の振動があったデスが、時空間転移システムのコアユニットの位置は特定できたデス?」
早速、オネットが本題を切り出す。
「うむ。ある程度の範囲までは絞ることができたのである。とは言え、別の新たな震源からの揺れが僅かに観測されて解析に結果にノイズが入ってしまっているが」
「別の新たな震源?」
難しい顔で問いに答えたローフェに対し、ククラが問い気味に繰り返す。
「ハッキリとした強度を持って観測できたのは、この惑星ティアフロントにある各転移地点から発生したものである。しかし、それ以外については――」
「……別のコアユニットに属する転移地点」
「あるいは、時空間転移システム本体からの影響デスか」
結論を先回りするように続けるククラとオネット。
かつて星間、銀河間を移動するのに時空間転移は当たり前に行われていた。
当然、人間が活動していた星にはコアユニットが存在する。
全てのコアユニットを管理するシステムの本体もまた、宇宙のどこかに。
あるいは、マグ達が感じた空間の振動は、そこで生じている異変の余波に過ぎないのかもしれない。あくまでも、空間転移を介して漏れ出ているだけの。
「もしかして、本体の場所も特定できるようになる?」
「多分、それは無理」
「振動が微弱過ぎ、かつ、距離が遠過ぎて精度が乏しいのである」
「もしもこの星にいながら位置を特定できるような強度の振動が発生してたら、多分とっくに宇宙の崩壊が始まってる」
補足するようにサラッと告げたククラに、マグは思わずギョッとした。
極めて微弱なものであれ、別の震源からの振動が感知された事実は思った以上に事態が切迫していることを示しているようだ。
「それに、場所が分かっても現状再現できる航行システムでは辿り着くのに何年かかるか分からないデス。コアユニットを介して転移するのが一番現実的デスよ」
「……いずれにしても、まずはそれを見つけ出すのが先決か」
もう余所見をしている暇はないと考えた方がいいのだろう。
「それで、コアユニットの場所はどこデス? すぐ行ける場所デスか?」
「いや、ここから遥か東の未踏破領域の奥地である。恐らくは、その地下深く。迷宮遺跡の最深部にあると推定されるのである」
まあ、それは当然と言えば当然の話だ。
時空間転移システムの暴走は、最優先で解決しなければならない問題。
短くない惑星ティアフロントの歴史において、各街の管理者達の依頼の下、数多くの探索者や冒険者がその所在を探し求めてきた。
にもかかわらず、このような状況に至るまで発見できなかった以上、最も可能性が高いのは未踏破領域だ。
そして、過去の超技術が眠っているのは迷宮遺跡と相場が決まっている。
とは言え――。
「未踏破領域、か」
一口にそう言っても狭い範囲ではない。
目印がなければ探索は非現実的だ。
それこそ何年かかるか分かったものではない。
しかし今。大まかではあれ、目標地点が示された。
そうであるならば、未発見の迷宮遺跡も見つけ出すことができるだろう。
ただし、その未踏破領域が対処可能な環境であれば、の話だが。
「では、その地点をお教え下さい。これから向かいますので」
「もっと範囲を絞れたら、その情報を端末に送って」
マグの懸念とは裏腹に、アテラとククラがローフェに淡々と要求する。
実際のところ。分析が進むのを待ってから赴くよりは、先んじて現地に向かった方が効率的であるのは間違いない。
時間に猶予がなさそうとなれば尚更だ。
それに地形データを収集すれば、更に範囲を限定できるかもしれない。
全て未踏破領域の危険性を度外視した話ではあるけれども。
「承知したのである」
ローフェもまた特にその辺りを憂慮している様子もなく、一つ頷いてから奥まった目の更に奥で光を明滅させた。
データを送信しているようだ。
「……確認しました」
「東の未踏破領域、ね。ま、今のアタシ達なら問題ないでしょ。どんな環境でも」
「フィアとおかー様で防御は万全です!」
マグを見ながら自信満々のドリィと元気よく言うフィア。
心配を察し、それが軽減されるように振る舞っているのだろう。
「あのメタを攻略した私達デス。大丈夫デスよ」
憂いなく笑顔でオネットが続く。
いずれにしても、時空間転移システムの暴走を抑えなければ未来はない。
そして、それができるのはククラだけ。
彼女達だけで行かせる訳には行かない以上、皆を信じて進む以外ないのだ。
その中央区画上層の学長室まで、前回同様に自動操縦のパーソナルモビリティで連れてこられたマグ達は、まず街の管理者たるローフェにことの顛末を語った。
「コスモスからの通信は本当であったか」
対して、彼は古の老魔法使いの如き外見に相応しいしわがれた声で応じる。
一応、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアからも連絡は来ていたらしい。
ただ、それが信用できる情報かどうか今の今まで疑っていたのだろう。
マグ達の証言と若干後ろに控えたキリの姿を目にして、ようやく信じた様子だ。
とは言え、現状それについて話題を広げている場合ではない。
「それで、その……以前よりも激しい空間の振動があったデスが、時空間転移システムのコアユニットの位置は特定できたデス?」
早速、オネットが本題を切り出す。
「うむ。ある程度の範囲までは絞ることができたのである。とは言え、別の新たな震源からの揺れが僅かに観測されて解析に結果にノイズが入ってしまっているが」
「別の新たな震源?」
難しい顔で問いに答えたローフェに対し、ククラが問い気味に繰り返す。
「ハッキリとした強度を持って観測できたのは、この惑星ティアフロントにある各転移地点から発生したものである。しかし、それ以外については――」
「……別のコアユニットに属する転移地点」
「あるいは、時空間転移システム本体からの影響デスか」
結論を先回りするように続けるククラとオネット。
かつて星間、銀河間を移動するのに時空間転移は当たり前に行われていた。
当然、人間が活動していた星にはコアユニットが存在する。
全てのコアユニットを管理するシステムの本体もまた、宇宙のどこかに。
あるいは、マグ達が感じた空間の振動は、そこで生じている異変の余波に過ぎないのかもしれない。あくまでも、空間転移を介して漏れ出ているだけの。
「もしかして、本体の場所も特定できるようになる?」
「多分、それは無理」
「振動が微弱過ぎ、かつ、距離が遠過ぎて精度が乏しいのである」
「もしもこの星にいながら位置を特定できるような強度の振動が発生してたら、多分とっくに宇宙の崩壊が始まってる」
補足するようにサラッと告げたククラに、マグは思わずギョッとした。
極めて微弱なものであれ、別の震源からの振動が感知された事実は思った以上に事態が切迫していることを示しているようだ。
「それに、場所が分かっても現状再現できる航行システムでは辿り着くのに何年かかるか分からないデス。コアユニットを介して転移するのが一番現実的デスよ」
「……いずれにしても、まずはそれを見つけ出すのが先決か」
もう余所見をしている暇はないと考えた方がいいのだろう。
「それで、コアユニットの場所はどこデス? すぐ行ける場所デスか?」
「いや、ここから遥か東の未踏破領域の奥地である。恐らくは、その地下深く。迷宮遺跡の最深部にあると推定されるのである」
まあ、それは当然と言えば当然の話だ。
時空間転移システムの暴走は、最優先で解決しなければならない問題。
短くない惑星ティアフロントの歴史において、各街の管理者達の依頼の下、数多くの探索者や冒険者がその所在を探し求めてきた。
にもかかわらず、このような状況に至るまで発見できなかった以上、最も可能性が高いのは未踏破領域だ。
そして、過去の超技術が眠っているのは迷宮遺跡と相場が決まっている。
とは言え――。
「未踏破領域、か」
一口にそう言っても狭い範囲ではない。
目印がなければ探索は非現実的だ。
それこそ何年かかるか分かったものではない。
しかし今。大まかではあれ、目標地点が示された。
そうであるならば、未発見の迷宮遺跡も見つけ出すことができるだろう。
ただし、その未踏破領域が対処可能な環境であれば、の話だが。
「では、その地点をお教え下さい。これから向かいますので」
「もっと範囲を絞れたら、その情報を端末に送って」
マグの懸念とは裏腹に、アテラとククラがローフェに淡々と要求する。
実際のところ。分析が進むのを待ってから赴くよりは、先んじて現地に向かった方が効率的であるのは間違いない。
時間に猶予がなさそうとなれば尚更だ。
それに地形データを収集すれば、更に範囲を限定できるかもしれない。
全て未踏破領域の危険性を度外視した話ではあるけれども。
「承知したのである」
ローフェもまた特にその辺りを憂慮している様子もなく、一つ頷いてから奥まった目の更に奥で光を明滅させた。
データを送信しているようだ。
「……確認しました」
「東の未踏破領域、ね。ま、今のアタシ達なら問題ないでしょ。どんな環境でも」
「フィアとおかー様で防御は万全です!」
マグを見ながら自信満々のドリィと元気よく言うフィア。
心配を察し、それが軽減されるように振る舞っているのだろう。
「あのメタを攻略した私達デス。大丈夫デスよ」
憂いなく笑顔でオネットが続く。
いずれにしても、時空間転移システムの暴走を抑えなければ未来はない。
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