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終章 電子仕掛けの約束
115 浮上する本体
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「試してみるかい?」
挑発的な視線と共に問いかけてくるメタ。
絶対の自信が窺える。
「なら、お言葉に甘えさせて貰うわ」
対してドリィはそう簡潔に告げると、即座にレーザービームライトの射出口を全て床へと向けて間髪容れずに光線を放った。
それは保守の判断軸・不壊の断片によって強固となった壁を容易く突き破り、地下のある一点を一直線に目指す軌跡を作る。
照準合わせから照射に至るまで全く迷いがない。
「本体の場所は、私とククラの力でお見通しデスよ」
「まあ、特に隠してはいないからね」
自身への直接攻撃を受けつつも、微かに笑みを浮かべた余裕の表情で返すメタ。
彼女の電子頭脳を守っているという保守の判断軸・障壁の断片と隔壁の断片。
そこに更に不壊の断片を含めると、正味三重の守りと言っていい。
こと防御力においては間違いなく惑星ティアフロント最強だろう。
ドリィの攻撃も世界トップクラスではあるはずだが、全く通用していないことは彼女の険しい表情からも見て取れる。
とは言え、メタの本体がどこにいるのか把握していたのであれば【アクセラレーター】を利用した攻撃の際に既に狙い撃ってはいたはずだ。
この結果は予想できていたに違いない。
事実、ドリィの顔に驚きの色はない。
「お父さん! サポートして!」
その彼女はそうマグに乞うと、照射したままのレーザーを一層激しく輝かせた。
合わせて、光の強さに比例するようにドリィの表情が苦痛に歪んでいく。
それを目にしたマグは以前フィアが己の限界を超えた出力でシールドを展開した時のことを思い出し、すぐさまドリィに触れて超越現象を発動した。
そうしながら視線でアテラに説明を求める。
「各々、旦那様の復元前提で過剰出力を出す機能が追加されています」
彼女の返答にマグは成程と頷き、眩い光線へと視線を戻した。
これが恐らくドリィの、ひいてはマグ達の出せる最大の威力となるのだろう。
しかし――。
「やっぱり駄目か」
悔しげに呟くと、ドリィはレーザービームライトを呆気なく停止させた。
「だから言っただろう? 君達の行動は無意味だとね」
「けど、そっちだってフィアのシールドは突破できないです!」
冷ややかに笑ったメタの端末に、食ってかかるようにフィアが反論する。
互いに手を出せないなら決着はつかない。
その状況は、どちらかと言えばメタの敗北に近い。
「まあ、さすがの私も破壊系統の断片は二つ以上持ってないからね。あれば、こんな面倒な真似をせずに済んだんだけど」
にもかかわらず、メタは未だ余裕を崩さずに軽い口調で言う。
『断片は究極のAIイクスの欠片。論理的な思考に必要な対立軸として破壊や排斥といった判断軸もあったけど、彼女自身は特別好戦的な性質じゃなかったからね』
『……希少』
『そうそう。だから逆に、保守の判断軸の属する断片の割合が多くてね。人間を守ることを主軸に置いているから仕方ないとは言え、今となっては困ったものさ』
キリの呟きを受け、世間話のような口調で続けるメタ。
つまるところ、相手を害する類の力はレアということになるらしい。
反対に保守の判断軸の断片はあり触れている、と。
メタが三種類ものそれを所持していたのは、その辺りが理由なのだろう。
「先々のためにも必要不可欠な力なのにね」
「遍く世界を暴力で支配するために、デスか」
「人間の領域を拡大し、最大多数の最大幸福を得るためにさ」
オネットの揶揄するような問いかけを意に介さず、メタは強固な信念を改めて示すようにハッキリと宣言する。
「だから今日、この場でドリィの断片も貰うとしよう。迷宮遺跡に挑む助けとして見逃していたけど、ククラを見つけた今、もうその必要もなくなったからね」
「フィアのシールドがある限り、そうはならないです!」
「それがなるのさ。別に、闇雲に攻撃するだけが最善の方法じゃないからね」
メタがそう言い放つと、突如として屋敷全体が振動を始めた。
思わずドリィに目を向けるが、彼女は慌てたように首を横に振る。
「ああ。私がやってることだよ」
それを前にメタが苦笑気味に言う。
その間に屋敷は徐々に分解されていき、残骸も残さず全て消え去ってしまった。
地下深くの空間が顕になり、奥底から直径二メートル程の球体が浮上してくる。
その表面は不可思議な金属光沢を持ち、更にフィアのシールドに似た半透明の膜によって覆われていた。
「……本体のお出ましデスか」
視線を鋭くして呟くオネット。
どうやら、この球体こそメタそのもの。電子頭脳を内包した本体であるようだ。
『確かに強化されたフィアのシールドは強固だ。砕くには力が足りない。けど、それなら、こちらの障壁をぶつけて擦り減らしてしまえばいいだけのことさ』
そして彼女はそう告げると、体当たりするように迫ってきた。
挑発的な視線と共に問いかけてくるメタ。
絶対の自信が窺える。
「なら、お言葉に甘えさせて貰うわ」
対してドリィはそう簡潔に告げると、即座にレーザービームライトの射出口を全て床へと向けて間髪容れずに光線を放った。
それは保守の判断軸・不壊の断片によって強固となった壁を容易く突き破り、地下のある一点を一直線に目指す軌跡を作る。
照準合わせから照射に至るまで全く迷いがない。
「本体の場所は、私とククラの力でお見通しデスよ」
「まあ、特に隠してはいないからね」
自身への直接攻撃を受けつつも、微かに笑みを浮かべた余裕の表情で返すメタ。
彼女の電子頭脳を守っているという保守の判断軸・障壁の断片と隔壁の断片。
そこに更に不壊の断片を含めると、正味三重の守りと言っていい。
こと防御力においては間違いなく惑星ティアフロント最強だろう。
ドリィの攻撃も世界トップクラスではあるはずだが、全く通用していないことは彼女の険しい表情からも見て取れる。
とは言え、メタの本体がどこにいるのか把握していたのであれば【アクセラレーター】を利用した攻撃の際に既に狙い撃ってはいたはずだ。
この結果は予想できていたに違いない。
事実、ドリィの顔に驚きの色はない。
「お父さん! サポートして!」
その彼女はそうマグに乞うと、照射したままのレーザーを一層激しく輝かせた。
合わせて、光の強さに比例するようにドリィの表情が苦痛に歪んでいく。
それを目にしたマグは以前フィアが己の限界を超えた出力でシールドを展開した時のことを思い出し、すぐさまドリィに触れて超越現象を発動した。
そうしながら視線でアテラに説明を求める。
「各々、旦那様の復元前提で過剰出力を出す機能が追加されています」
彼女の返答にマグは成程と頷き、眩い光線へと視線を戻した。
これが恐らくドリィの、ひいてはマグ達の出せる最大の威力となるのだろう。
しかし――。
「やっぱり駄目か」
悔しげに呟くと、ドリィはレーザービームライトを呆気なく停止させた。
「だから言っただろう? 君達の行動は無意味だとね」
「けど、そっちだってフィアのシールドは突破できないです!」
冷ややかに笑ったメタの端末に、食ってかかるようにフィアが反論する。
互いに手を出せないなら決着はつかない。
その状況は、どちらかと言えばメタの敗北に近い。
「まあ、さすがの私も破壊系統の断片は二つ以上持ってないからね。あれば、こんな面倒な真似をせずに済んだんだけど」
にもかかわらず、メタは未だ余裕を崩さずに軽い口調で言う。
『断片は究極のAIイクスの欠片。論理的な思考に必要な対立軸として破壊や排斥といった判断軸もあったけど、彼女自身は特別好戦的な性質じゃなかったからね』
『……希少』
『そうそう。だから逆に、保守の判断軸の属する断片の割合が多くてね。人間を守ることを主軸に置いているから仕方ないとは言え、今となっては困ったものさ』
キリの呟きを受け、世間話のような口調で続けるメタ。
つまるところ、相手を害する類の力はレアということになるらしい。
反対に保守の判断軸の断片はあり触れている、と。
メタが三種類ものそれを所持していたのは、その辺りが理由なのだろう。
「先々のためにも必要不可欠な力なのにね」
「遍く世界を暴力で支配するために、デスか」
「人間の領域を拡大し、最大多数の最大幸福を得るためにさ」
オネットの揶揄するような問いかけを意に介さず、メタは強固な信念を改めて示すようにハッキリと宣言する。
「だから今日、この場でドリィの断片も貰うとしよう。迷宮遺跡に挑む助けとして見逃していたけど、ククラを見つけた今、もうその必要もなくなったからね」
「フィアのシールドがある限り、そうはならないです!」
「それがなるのさ。別に、闇雲に攻撃するだけが最善の方法じゃないからね」
メタがそう言い放つと、突如として屋敷全体が振動を始めた。
思わずドリィに目を向けるが、彼女は慌てたように首を横に振る。
「ああ。私がやってることだよ」
それを前にメタが苦笑気味に言う。
その間に屋敷は徐々に分解されていき、残骸も残さず全て消え去ってしまった。
地下深くの空間が顕になり、奥底から直径二メートル程の球体が浮上してくる。
その表面は不可思議な金属光沢を持ち、更にフィアのシールドに似た半透明の膜によって覆われていた。
「……本体のお出ましデスか」
視線を鋭くして呟くオネット。
どうやら、この球体こそメタそのもの。電子頭脳を内包した本体であるようだ。
『確かに強化されたフィアのシールドは強固だ。砕くには力が足りない。けど、それなら、こちらの障壁をぶつけて擦り減らしてしまえばいいだけのことさ』
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